私が利用している図書館では、
1回につき10冊借りられるようになっている。
毎回10冊借りるようにしているのだが、
あと1冊……となったときの「あと1冊」がなかなか決まらない。
早く帰りたいときは、近くにあった1冊を掴んで、カウンターへ行く。
今回、その最後の1冊だったのが、
本書『精神科医だから知っている「老後うつ」とは無縁の暮らし方』だったのだ。
正式なタイトルはもっと長くて、
『60歳からは悩まない・迷わない・へこまない 精神科医だから知っている「老後うつ」とは無縁の暮らし方』(主婦と生活社)
と、1行では収まらない長さ。(笑)
著者は、保坂隆。
【保坂隆】
1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える 心が軽くなる「老後の整理術」』『精神科医が教える お金をかけない「老後の楽しみ方」』(以上、PHP研究所)、『人間、60歳からが一番おもしろい!』『精神科医が教える ちょこっとズボラな老後のすすめ』『精神科医が教える 繊細な人の仕事・人間関係がうまくいく方法』(以上、三笠書房)、『精神科医が教える 60歳からの人生を楽しむ孤独力』『50歳からのお金がなくても平気な老後術』『精神科医が教える すりへらない心のつくり方』(以上、大和書房)、『頭がいい人、悪い人の老後習慣』(朝日新聞出版)、『精神科医がたどりついた「孤独力」からのすすめ』(さくら舎)など多数、共著に『あと20年! おだやかに元気に80歳に向かう方法』(明日香出版社)。
私自身は、あまり悩まず、迷わず、へこまない性格なので、
「老後うつ」とは無縁の暮らしをしているのだが、
なんとなく読み始めてみると、
いきなりこんな文言が目に飛び込んできた。
認知症より怖い⁉
幸福感のない「老後うつ」が急増中
最近、シニアの間で「老後うつ」が急増しています。
ちなみに、60歳以上でうつ病の治療を受けている人は40万人以上に達するというデータもあります。また、厚生労働省によると、65歳以上の高齢者のうち31.7%が気分障害(うつ病、双極性障害など)だといいます。(1頁)
えっ、65歳以上の3人に1人は気分障害ってこと?
実際に「認知症よりうつが怖い」という高齢の方の話をよく耳にします。記憶も意識もしっかりしていて体もまだ動くにもかかわらず、生きるのがつらくて幸福感が得られないなど、著しく生活の質(GOL)を損なってしまうことがあるからです。(1頁)
えっ、認知症よりもうつの方が怖いの?
それだけでなく、「うつ状態」を放置すると、
「引きこもりがち」→「外界との交流がなくなる」→「足腰が弱まりロコモティブシンドローム」→「認知症&寝たきり」
の悪循環にはまってしまいます。
そうならないためにも、まだ動けるうちにメンタルを健康に保つ習慣を身につけておくことが重要になっていきます。(2頁)
えっ、「うつ状態」を放置すると寝たきりになるの?
と、驚くことばかり。
目次の項目を読むと、
興味を引く文章がたくさん並んでいた。
これは読む価値ありかな……と思い、付箋を貼りながら読み始めたのだった。
年齢を重ねて何かができなくなるのは、考え方を変えれば、「する必要がなくなった」からです。(28頁)
若い頃にできたことが、やがてできなくなる。
「できなくなった」という事実だけに目を向けて、自分を嫌いになったり、自身のことを情けなく思ったりしがちだ。
「する必要がなくなった」と考えれば、ずっと気持ちが楽なる。
そう考えることで、見えてくる景色もある。
気づくことができる幸福もある。
手に入れるのは本当に必要なものだけ、本当に欲しいものだけにする。こう心がけるだけで、日ごろの行動はかなり違ってくるはずです。(49頁)
欲求、欲望があるから、人は頑張れるし、前進できる。
文明もそのようにして進歩し、発展してきた。
だが、シニア世代の我々は、もうそれらとは無縁の世界で生きてもいいのではないか。
我々は、人生で必要なものは、すでに大体手に入れている筈だ。
際限ない「欲しがり」はやめて、
すでに手にあるものを慈しんで使う方向に切り替えてもいいのではないか。
その方がずっと心穏やかに過ごせるように思う。
不思議なもので、「年寄りに思われたくない」「若々しくありたい」と頑張る人ほど、周囲の目には年寄りに映ります。(62頁)
TV番組で、街角インタビューしているときなどで、
「何歳ですか?」
と訊かれて、
「何歳に見えます?」
と、逆に問うてくる人がいる。
日頃から若く見えることを自慢している人に多いのだが、
本人が思うほど若くは見えないのがほとんどで、
インタビュアーの方が気をつかって低い年齢で答えてあげているのをよく見かける。
若作りをしている人ほど、「自分は若くはないのだ」とアピールしているようなものだし、
周囲から浮いて見えるのだ。
「老い」を受け入れ、肩の力を抜いて、ゆるゆると頑張らない生き方をしている人の方に、
若さを感じることが多いものだ。
心身の衰えは正常な老化現象なのですから、無理をしたり自己嫌悪に陥ったりする必要はまったくないのです。(70頁)
私も、「順調に老いていっているな……」と思う日々です。
65歳を起点にすると、元気で過ごせるのは男性8年弱、女性約10年です。(75頁)
健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳。
政府や保険会社やマスコミは、「人生100年時代」「長い長い老後」とはやし立てるが、
「元気で健康な老後」はそれほど長くはない。
オーストラリアの介護人ブロニー・ウェアさんの著書『死ぬ瞬間の5つの後悔』によると、
人が死に瀕して最も後悔するのは、
「他人が自分に期待するような生き方ではなく、私自身に素直に生きられなかったこと」
だそうだ。
こんな後悔をしたくなかったら、
誰に何と言われようと、やりたいことをやっておく方が好い。
考えるより体を動かして行動すること。(126頁)
動かずに考え込んでばかりいても、いい結論は出ない。
スッキリしないときは、深呼吸でも四股踏みでも、散歩でも掃除でも、何でもいいので、
体を動かして頭の中のモヤモヤを追い払う。
シニアになったら睡眠時間を心配しすぎることはないとも思っています。具体的には、60代なら6時間少々、70歳を超えたら6時間以下でも十分です。(154頁)
高齢者世代においては、むしろ長時間睡眠による健康リスク(死亡リスク)のほうがより強く表れることが多くなるそうで、7時間未満の短時間睡眠による将来の死亡リスクは1.07倍なのに対し、8時間以上の長時間睡眠による死亡リスクは1.33倍と著しく増加するとのこと。
極端にいうと、長時間の睡眠は死に直結するということです。多くのシニアが気にしている睡眠不足は、不要な心配ということがわかります。(154頁)
家の中が片づいているかどうかは、心がすっきり整理され、安定しているかどうかを示す目安になります。(162頁)
不要なモノが溜め込まれていたり、足の踏み場もないくらい散らかっていたりする人は、
頭や心の中も散らかっていると見て、ほぼ間違いない。
当然、ストレスも溜まっている筈。
そのまま放置しておくと、老後うつを発症させてしまうこともあり得る。
孤独死をした人や、ひきこもりの人の部屋は、たいていモノで埋め尽くされている。
快適に暮らしていこう、気持ちよく生きていこうという気持ちが薄れているからだ。
どこかで「もう、どうでもいい」と人生を投げてしまっているからだ。
そうならないためにも、身の回りのチェックを怠らないことが必要だ。
定年退職後にお金はそれほど必要がない。(216頁)
収入や預金が少ないなら、与えられた枠の中でどう暮らしていくか、
そのやりくりをしてみせるのが、長年の人生経験の発揮のしどころだ。
シェイクスピアも言っている。
「貧乏でも満足している人間は金持ち、それも非常に金持ちです。しかし、大金を持っている人でも、いつ貧乏になるかと恐れている人間は冬枯れのようなものです」
老子も言っている。
「足るを知るものは富む」
と。
「退職後には〇千万円必要」
という言葉に惑わされ、投資でお金を増やそうと、
相場の上げ下げに一喜一憂する生活は、心身に大きなストレスを与える。
結果、寿命が短くなったら、たとえ資産が増えても意味がない。
人生の残り時間をそんなくだらないことに使うのは勿体ない。
それに、投資にのめり込んでいる私の知人達を見ても、
皆「さもしい」顔をしている。
あんな顔にはなりたくない。(コラコラ)
70代になれば、
住宅ローンは終わっているし、子育ても終わっているし、教育費もかからない。
極端な話、毎日食べる分のお金と、死んだときの葬式代さえ残っていればいい。
(私の場合は、私の娘たちと孫たちだけの小さな家族葬にするように言ってあるので、葬式代もそれほどかからない)
老後にお金はそれほど必要ないのだ。
老後の「不安感」のほとんどは、
物事の考え方や心の持ち方をちょっと変えてみるだけで解消できるものだ。
原因が自分の中にあるのと同様に、解決法も自分の中にあるからだ。
本書は、そうした心の中の不安を探し当て、
それらを一掃する「心の内視鏡」の役割を果たしている。
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