一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

九州新幹線のCM「祝!九州」が再び注目を集めている。

2016年04月23日 | その他
ブログ「一日の王」は、
「初めてお越し下さった方へ」にも書いている通り、
“至福の時間の記録”である。
〈熊本地震で騒然としているときに、何を呑気に“至福の時間”だ!〉
と憤慨される方もおられるかもしれない。
最初は、私も、地震関連の記事を連載しようかなと思った。
でも、そんな記事は、巷にあふれている。
同じような文章を書き連ねても仕方がないと思った。
自分なりの熊本地震への救援活動をしながら、
このブログでは、そのことには触れずに、
今まで通り、“至福の時間”を発信していければ……と考えた。
こんなときだからこそ、
“至福の時間”の記録が必要なのではないか……と。

地震による脱線事故等の影響で、
運転を見合わせていた九州新幹線が、
博多~熊本駅間で、
今日(4月23日)の12:00頃に運転を再開する見込み……とのニュースが流れた。

2011年の6月、私は、
九州新幹線を題材にした是枝裕和監督作品『奇跡』のレビューを書いている。


九州新幹線が全線開業したのは、2011年の3月12日。
だが前日の3月11日に、東日本大震災が起こった。
あの大震災によって、
日本のすべての人々が、
いや、世界中の人々が、
人とのつながり、家族の大切さを、あらためて実感させられたのではないかと思う。
この映画のレビューのタイトルは、
《……家族が一緒に暮らせること、そのことこそが奇跡……》


九州新幹線が全線開業の朝、
博多から南下する“つばめ”と、
鹿児島から北上する“さくら”、
二つの新幹線の一番列車がすれ違う瞬間に奇跡が起きて願いが叶う……
そんな噂を耳にした小学6年生の大迫航一(前田航基)は、
離れて暮らす4年生の弟・木南龍之介(前田旺志郎)と共に奇跡を起こし、
家族4人の絆を取り戻したいと願う。


二人の両親は離婚し、
航一は母・のぞみ(大塚寧々)と祖父・周吉(橋爪功)、祖母・秀子(樹木希林)と鹿児島で、


龍之介は父・健次(オダギリジョー)と福岡で暮らしているのだ。


兄弟は、友達や両親、周りの大人たちを巻き込んで、壮大で無謀な計画を立て始める。
そしてその計画は、様々な人々に奇跡を起こしていくのだった……



博多から南下する“つばめ”と、
鹿児島から北上する“さくら”、
二つの新幹線の一番列車がすれ違う場所が、熊本だった。
その熊本で、今月、地震が起こり、
新幹線が脱線し、不通となった。
それが、やっと、部分的にではあるが、開通の見通しが立った。
復興へ向けての僅かな光が、ほの見えてきた。

熊本地震で人々が不安な日々を過ごす中、
5年前に作られた九州新幹線のCM「祝!九州」が再び注目を集めているという。
全線開業の前日に東日本大震災が起き、
すぐに放送が中止されたものの、
沿線住民1万人が“出演”したCMは、
その完成度の高さとメッセージ性から、
東日本大震災の被災者も元気にしたと言われている。
九州7県を表す7色ラッピングのN700系「さくら」が疾走し、
線路に向かって大きく手を振り、跳び上がる住民たち。
「あの日、手を振ってくれて、ありがとう」
「笑ってくれて、ありがとう」
「ひとつになってくれて、ありがとう」
とのナレーションに、心が震える。胸が熱くなる。


今こそ九州がひとつになる時。
「熊本がんばれ!」「九州がんばれ!」

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