昨日、鹿之沢小屋に到着したときには、
この小屋での泊まりは私ひとりだけだろうと思っていた。
この鹿之沢小屋は、花山歩道と永田歩道の分岐に建っているのだが、
どちらもマイナールートなので、利用者はそうはいないと思ったからだ。
しかし、私が小屋に着いて1時間ほど後に、
40歳くらいの男女ペアが到着した。
男性は山岳ガイド(エコツアーガイド)で、女性は彼の顧客であった。
このペアも明日は花山歩道を歩くとのこと。
女性は神戸から来た人で、
どうしても花山歩道を歩きたくて、
でもひとりで歩くのは不安があるので、
ガイドを雇ったとのこと。
ガイドの男性も、出身は大阪で、
屋久島が気に入って住むようになり、
職業としてガイドを始められたそうだ。
現在、屋久島には150から200人ほどのガイドがいるらしいのだが、
地元出身の人は少なく、多くは島外出身者とのこと。
深夜、小屋の外に出てみた。
空を見上げる。
満天の星。
ひとつひとつの星が、明るく、大きく見える。
夜空一面に広がる星のシャンデリアを、
私はいつまでも見ていた。
4月18日(水)。屋久島単独完全縦走最終日。
午前5時半、外が明るくなると同時に、
山岳ガイドと顧客の男女ペアは、出発した。
私はふたりが小屋を出た後に起き出し、朝食。
6:16
鹿之沢小屋を出発した。
小屋を出てしばらくは急登が続く。
まずは尾根に出なければならないからだ。
尾根に乗ってからは、ゆるやかな傾斜の下りとなった。
いろんな形の木々があり、まったく飽きない。
7:14
大石展望台に到着。
ここまで樹林帯だったので、パッと解放された感じ。
ここからは、烏帽子岳(1614m)や七五岳(1488m)が見えた。
この花山歩道、道標はほとんどなく、
鹿之沢→
←栗生
と書かれたプレートがたまにあるくらいで、
ピンクテープを頼りに歩かなければならない。
歩く人も少ないので、山慣れない人は、ひとりで歩かない方がイイだろう。
展望のない樹林帯の道なので、時折遠くが見える場所があるとホッとする。
7:44
ハリギリの大木に到着。
すごい存在感の大木。
山岳ガイドと顧客の男女ペアは、この木を見ながら朝食を摂っていた。
縄文杉よりこちらが好きという人も多いと聞く。
縄文杉と違って、こちらは木に触れることもできる。
ふたりに別れを告げ、出発。
ここから先、他の山では絶対にお目にかかれないような風景が続く。
なんと豊饒な森なんだろう。
8:14
花山広場に到着。
花山歩道で私が一番楽しみにしていた場所。
木々だけを撮っただけでは、その大きさが判らないので、
人(私)を入れて撮ってみる。
なんだか童話の世界にさまよい込んだみたいだ。
こんな森、初めて見た。
メルヘンの世界だ。
現実にこんな森があるなんて……信じられない。
ずっとここに居たいと思った。
この花山広場の先が、ちょっと迷いやすい。
右のピンクテープが2本ぶら下がっている方向は水場を示している。
下山路はここから左へ向かわなければならない。
だが、「水場」と書かれた文字が目立たないために、
こちらに進むひとが多いようなのだ。
水場の先は道がないので、道迷いしてしまったと勘違いするらしい。
ただ、この水場は、花山広場の「美しい場所」として、知る人ぞ知る存在。
私も水を補給がてら、訪れてみた。
ウワサ通りの場所であった。
美しい苔と、美しい水。
なんて素敵な場所なんだろう。
またいつの日か訪れたいと思った。
地図右上の部分が、水場に寄った軌跡。
先程の分岐に戻り、下山にかかる。
ここから先も巨樹が多く、そのダイナミックな生きざまを仰ぎ見ながら歩く。
この倒木は、私の背丈ほどもあった。
森の生命力がビンビンと感じられる道だ。
整備されていない道だし、歩く人も少ない道なので、
荒れている箇所も多々ある。
この大木は最近倒れたもののようだ。
道を人の背丈ほどもある大木が塞いでいる。いやはや。(笑)
これを乗り越えていくのは大変だったよ。
そう、ここは「世界自然遺産登録地域」なのである。
人がたやすく入り込めない森だからこそ、豊かな自然が残っているのだ。
突出した大きな岩に木々の影が映り、不思議な空間を創り上げていた。
急坂を下っていく。
10:32
カスミ谷展望台を通過。
栗生港が見えた。
花山歩道入口が見えてきた。
10:56
花山歩道入口に到着。
ここまでけっこう険しい道だったし、
ひとりで花山歩道を無事に歩けたことにホッとする。
と同時に、喜びがこみ上げてきた。
花山歩道、素晴らしいルートだった。
単独トレッキングには、万全の装備と、ある程度の登山経験が求められるけれど、
歩いてみる価値のあるルートである。
皆さんもいつの日か、ぜひ……
突き当たりの大川林道を左へ。
最初は少し登るが、やがて下りに。
11:58
大川林道入口に到着。
花山歩道入口から大川林道入口までのコースタイムは2時間となっているが、
約1時間で下ってきた。
突き当たりの県道78号線を右へ向かう。
やがて美しい海が見えてきた。
この屋久島縦走のゴールを、あの美しい海岸にすることを決める。
その前に、「大川(おおこ)の滝」へ。
12:08
大川の滝に到着。
日本滝百選にも選出されている、落差88mの大迫力の滝。
私は少し前に立っているが、
後ろの方にいる人と滝を比較してみてほしい。
滝の大きさが把握してもらえると思う。
大川の滝の駐車場から海岸へ下りる道があった。
海が見えてきた。
ゴールに相応しい美しい海。
12:16
海に到着。
これで、「ゼロ to ゼロ」屋久島単独完全縦走が完了した。
GPSの電源はここで切ったが、
ここからさらに栗生の集落まで1時間ほど歩かなければならない。
これがきつかった。(笑)
13:18
栗生橋バス停に到着。
13:39
栗生バス停をバス発車。
15:05
宮之浦港に到着。
16:20
高速船トッピーで宮之浦港発。
途中、開聞岳が見えた。
開聞岳には登ったことがあるけれど、
いつの日かこの山でも「ゼロ to ゼロ」をやってみたいと思った。
19:15
高速船トッピーが鹿児島港に到着。
19:55
高速バス「桜島号」、鹿児島本港発。
23:28
高速基山にて下車。
駐車場に駐めていた車で帰宅。
こうして今回の私の旅は終わった。
わずか3日間だったけれど、中身の濃い旅であった。
ギュっと濃縮されたエキスのような高純度の旅であった。
今回も、多くの方からメッセージを戴いた。
その中のひとつ、
初日の屋久島縦断の記事を読んだ、福岡県在住のある女性から、
「タクさんのブログを読んで、これほど涙が溢れてくるとは思いませんでした」
とのメッセージに、私の方がむしろ胸が熱くなった。
私の文章や写真に、人を感動させられるほどのものはないけれど、
屋久島が持つ神聖な空気、神秘的な森、厳かな巨樹……それらが、私の写真や文章から伝わり、感動を生んだのではないかと思う。
2010年8月に「剱岳・立山連峰・大日三山」ソロトレッキングをしたとき、
私はこう書いている。
このブログで、剱・立山の素晴らしさが、そしてソロトレッキングの楽しさが、少しでも伝われば、これ以上の喜びはない。
そして、きっと、ソロトレッキングした4日間がすべて晴れたのは、山の神様が、私に「剱・立山連峰」の素晴らしさをみんなに伝える使命を与えて下さったからではないかと思っている。
今回の屋久島縦走でも、
雨が降って欲しいときには降り、
晴れて欲しいときには晴れ、
これ以上ない条件の中で歩くことができた。
今回もまた、
山の神様が、私に「屋久島」の素晴らしさをみんなに伝える使命を与えて下さったからではないか……と思っている。
屋久島は、やはり素晴らしい島であった。
私の「宝島」である。
この小屋での泊まりは私ひとりだけだろうと思っていた。
この鹿之沢小屋は、花山歩道と永田歩道の分岐に建っているのだが、
どちらもマイナールートなので、利用者はそうはいないと思ったからだ。
しかし、私が小屋に着いて1時間ほど後に、
40歳くらいの男女ペアが到着した。
男性は山岳ガイド(エコツアーガイド)で、女性は彼の顧客であった。
このペアも明日は花山歩道を歩くとのこと。
女性は神戸から来た人で、
どうしても花山歩道を歩きたくて、
でもひとりで歩くのは不安があるので、
ガイドを雇ったとのこと。
ガイドの男性も、出身は大阪で、
屋久島が気に入って住むようになり、
職業としてガイドを始められたそうだ。
現在、屋久島には150から200人ほどのガイドがいるらしいのだが、
地元出身の人は少なく、多くは島外出身者とのこと。
深夜、小屋の外に出てみた。
空を見上げる。
満天の星。
ひとつひとつの星が、明るく、大きく見える。
夜空一面に広がる星のシャンデリアを、
私はいつまでも見ていた。
4月18日(水)。屋久島単独完全縦走最終日。
午前5時半、外が明るくなると同時に、
山岳ガイドと顧客の男女ペアは、出発した。
私はふたりが小屋を出た後に起き出し、朝食。
6:16
鹿之沢小屋を出発した。
小屋を出てしばらくは急登が続く。
まずは尾根に出なければならないからだ。
尾根に乗ってからは、ゆるやかな傾斜の下りとなった。
いろんな形の木々があり、まったく飽きない。
7:14
大石展望台に到着。
ここまで樹林帯だったので、パッと解放された感じ。
ここからは、烏帽子岳(1614m)や七五岳(1488m)が見えた。
この花山歩道、道標はほとんどなく、
鹿之沢→
←栗生
と書かれたプレートがたまにあるくらいで、
ピンクテープを頼りに歩かなければならない。
歩く人も少ないので、山慣れない人は、ひとりで歩かない方がイイだろう。
展望のない樹林帯の道なので、時折遠くが見える場所があるとホッとする。
7:44
ハリギリの大木に到着。
すごい存在感の大木。
山岳ガイドと顧客の男女ペアは、この木を見ながら朝食を摂っていた。
縄文杉よりこちらが好きという人も多いと聞く。
縄文杉と違って、こちらは木に触れることもできる。
ふたりに別れを告げ、出発。
ここから先、他の山では絶対にお目にかかれないような風景が続く。
なんと豊饒な森なんだろう。
8:14
花山広場に到着。
花山歩道で私が一番楽しみにしていた場所。
木々だけを撮っただけでは、その大きさが判らないので、
人(私)を入れて撮ってみる。
なんだか童話の世界にさまよい込んだみたいだ。
こんな森、初めて見た。
メルヘンの世界だ。
現実にこんな森があるなんて……信じられない。
ずっとここに居たいと思った。
この花山広場の先が、ちょっと迷いやすい。
右のピンクテープが2本ぶら下がっている方向は水場を示している。
下山路はここから左へ向かわなければならない。
だが、「水場」と書かれた文字が目立たないために、
こちらに進むひとが多いようなのだ。
水場の先は道がないので、道迷いしてしまったと勘違いするらしい。
ただ、この水場は、花山広場の「美しい場所」として、知る人ぞ知る存在。
私も水を補給がてら、訪れてみた。
ウワサ通りの場所であった。
美しい苔と、美しい水。
なんて素敵な場所なんだろう。
またいつの日か訪れたいと思った。
地図右上の部分が、水場に寄った軌跡。
先程の分岐に戻り、下山にかかる。
ここから先も巨樹が多く、そのダイナミックな生きざまを仰ぎ見ながら歩く。
この倒木は、私の背丈ほどもあった。
森の生命力がビンビンと感じられる道だ。
整備されていない道だし、歩く人も少ない道なので、
荒れている箇所も多々ある。
この大木は最近倒れたもののようだ。
道を人の背丈ほどもある大木が塞いでいる。いやはや。(笑)
これを乗り越えていくのは大変だったよ。
そう、ここは「世界自然遺産登録地域」なのである。
人がたやすく入り込めない森だからこそ、豊かな自然が残っているのだ。
突出した大きな岩に木々の影が映り、不思議な空間を創り上げていた。
急坂を下っていく。
10:32
カスミ谷展望台を通過。
栗生港が見えた。
花山歩道入口が見えてきた。
10:56
花山歩道入口に到着。
ここまでけっこう険しい道だったし、
ひとりで花山歩道を無事に歩けたことにホッとする。
と同時に、喜びがこみ上げてきた。
花山歩道、素晴らしいルートだった。
単独トレッキングには、万全の装備と、ある程度の登山経験が求められるけれど、
歩いてみる価値のあるルートである。
皆さんもいつの日か、ぜひ……
突き当たりの大川林道を左へ。
最初は少し登るが、やがて下りに。
11:58
大川林道入口に到着。
花山歩道入口から大川林道入口までのコースタイムは2時間となっているが、
約1時間で下ってきた。
突き当たりの県道78号線を右へ向かう。
やがて美しい海が見えてきた。
この屋久島縦走のゴールを、あの美しい海岸にすることを決める。
その前に、「大川(おおこ)の滝」へ。
12:08
大川の滝に到着。
日本滝百選にも選出されている、落差88mの大迫力の滝。
私は少し前に立っているが、
後ろの方にいる人と滝を比較してみてほしい。
滝の大きさが把握してもらえると思う。
大川の滝の駐車場から海岸へ下りる道があった。
海が見えてきた。
ゴールに相応しい美しい海。
12:16
海に到着。
これで、「ゼロ to ゼロ」屋久島単独完全縦走が完了した。
GPSの電源はここで切ったが、
ここからさらに栗生の集落まで1時間ほど歩かなければならない。
これがきつかった。(笑)
13:18
栗生橋バス停に到着。
13:39
栗生バス停をバス発車。
15:05
宮之浦港に到着。
16:20
高速船トッピーで宮之浦港発。
途中、開聞岳が見えた。
開聞岳には登ったことがあるけれど、
いつの日かこの山でも「ゼロ to ゼロ」をやってみたいと思った。
19:15
高速船トッピーが鹿児島港に到着。
19:55
高速バス「桜島号」、鹿児島本港発。
23:28
高速基山にて下車。
駐車場に駐めていた車で帰宅。
こうして今回の私の旅は終わった。
わずか3日間だったけれど、中身の濃い旅であった。
ギュっと濃縮されたエキスのような高純度の旅であった。
今回も、多くの方からメッセージを戴いた。
その中のひとつ、
初日の屋久島縦断の記事を読んだ、福岡県在住のある女性から、
「タクさんのブログを読んで、これほど涙が溢れてくるとは思いませんでした」
とのメッセージに、私の方がむしろ胸が熱くなった。
私の文章や写真に、人を感動させられるほどのものはないけれど、
屋久島が持つ神聖な空気、神秘的な森、厳かな巨樹……それらが、私の写真や文章から伝わり、感動を生んだのではないかと思う。
2010年8月に「剱岳・立山連峰・大日三山」ソロトレッキングをしたとき、
私はこう書いている。
このブログで、剱・立山の素晴らしさが、そしてソロトレッキングの楽しさが、少しでも伝われば、これ以上の喜びはない。
そして、きっと、ソロトレッキングした4日間がすべて晴れたのは、山の神様が、私に「剱・立山連峰」の素晴らしさをみんなに伝える使命を与えて下さったからではないかと思っている。
今回の屋久島縦走でも、
雨が降って欲しいときには降り、
晴れて欲しいときには晴れ、
これ以上ない条件の中で歩くことができた。
今回もまた、
山の神様が、私に「屋久島」の素晴らしさをみんなに伝える使命を与えて下さったからではないか……と思っている。
屋久島は、やはり素晴らしい島であった。
私の「宝島」である。