「逢いたい人に逢いに行く」という特別企画の第31回目は、
詩人の豆塚エリさん。
私が「豆塚エリ」という詩人を知ったのは、
昨年(2022年)の4月、
NHK・Eテレのバリアフリーバラエティー「バリバラ」で、
「女性障害者の恋愛のなやみ」について放送された回であった。
それは偶然、なんとなく観始めた番組であったのだが、
そこに出演していた「豆塚エリ」という車椅子の詩人に惹かれるものがあった。
鼻にかかったようなくぐもった声から発せられる言葉は、
彼女が経験してきた数々の体験から絞り出されたと思われる、
これまであまり聴いたことのない研ぎ澄まされた心に刺さる言葉であった。
【豆塚エリ】
1993年、愛媛県生まれ。
16歳のとき、飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。
現在は車椅子で生活する。
大分県別府市で、こんぺき出版を拠点に、詩や短歌、短編小説などを発表。
NHK Eテレ『ハートネットTV』に出演するなど、幅広く活動中。
番組終了後、
「豆塚エリ」という詩人について知りたくてネットで検索してみたのだが、
車椅子の理由が、「16歳のとき、飛び降り自殺を図り頸髄を損傷」と知り、
ドキッとさせられ、動揺した。
60代後半になり、大抵のことは経験済みだし、
どのようなことを見聞きしても、あまり動揺することはない筈の私であったが、
彼女の過去には前期高齢者の私の心を揺さぶるものがあった。
〈どうして飛び降り自殺をしようと思ったのか?〉
〈死ぬことが叶わず車椅子生活になったとき、どう思ったのか?〉
様々な思いが湧いては消えた。
豆塚エリさんのTwitterを見ると、
『しにたい気持ちが消えるまで』という自伝エッセイが、
2022年9月に発売されるとの告知が出ていた。
〈読みたい!〉
と思った。
Amazonに予約し、台風の影響で到着が数日遅れたものの、
刊行直後に本書を読むことができたのだった。
そうして約1年前の2022年10月17日に、
豆塚エリ『しにたい気持ちが消えるまで』 ……車椅子の詩人が綴る初エッセイ……
と題してブックレビューを書いた。(コチラを参照)
以来、豆塚エリさんの活動はTwitter等で見させてもらっていたのだが、
その活動のひとつとして全国各地の「文学フリマ」に出店されていることを知った。
「文学フリマ」とは、作り手が「自らが〈文学〉と信じるもの」を自らの手で作品を販売する文学作品展示即売会のことで、私はそういうものがあることはなんとなく知ってはいたものの、一度も参加したことはなく、豆塚エリさんが出店されているならば、いつか参加してみたいと思っていた。
「文学フリマ」は、毎年、
京都(1月)、広島(2月)、東京(5月)、岩手(6月)、香川(7月)、札幌(9月)、福岡(10月)、東京(11月)、大阪(未定)の全国8箇所で、年合計9回開催されているようで、
佐賀から近い福岡での開催を待っていた。
昨年は仕事の都合で行くことはできなかったが、
今年は何としても行きたいと思っていたところ、10月22日の開催が決定。
早々に会社に休みを申請して休暇を取得し、当日、福岡の天神へ。
会場であるTKPエルガーラホールに駆けつけたのだった。
7F・8Fの両フロアが会場で、合計242の出店があり、
会場は多くの出店者と参加者で賑わっていた。
私は、豆塚エリさんの「こんぺき出版」のブースがある8F大ホールの「お-01」へ。
初めて見る実物の豆塚エリさんは、とても美しい方であった。
私には、「お-01」のブースだけが特別に光って見えた。(コラコラ)
(写真は豆塚エリさんのTwitterより)
ザックから本を取り出し、
「家から持ってきた本ですけど、サインして頂けますか?」
と訊くと、
「もちろんです」
と答えられた後、本を手に取り、帯を見て、
「初版本を買って頂いたのですね。嬉しいです」
と仰って下さり、私も嬉しかった。
サインをしながら、
「読んだ感想はいかがでしたか?」
と訊かれたので、
「《一日の王》というブログにレビューを書いています。《一日の王・豆塚エリ》のキーワード検索で出てきますので、そちらを読んで頂けると嬉しいです」
と答えると、
「忘れるといけないので、ここにブログ名を書いておいて下さいませんか? 後で検索してみます」
とメモ紙を渡されたので、ブログ名を記入して渡した。
そして『しにたい気持ちが消えるまで』以外の豆塚エリさんの本、
句集『恋ぞつもりて』
歌集『やさしくきく毒』
歌集『君は自由に傷つく』
歌集『濡れた髪を乾かさない君は嘘つき』
エッセイ集『薄明、ここにいるから Vol.1』
詩集『あまざらしの庭園』
BONUS TRACKS『しにたい気持ちが消えるまで』
の7冊を買った。
積んである本のそれぞれ一番上にある本を集めて渡したら、
「一番上の本は、いろんな人が触っているので、下にある本をお渡ししますね」
と言って、自ら下の綺麗な本を集めて下さった。
これには、
〈なんと優しくて繊細な方なんだろう……〉
と、本当に感激した。
最後に、ダメモトで、
「写真を撮らせて頂けませんか?」
と訊くと、
「もちろん、イイですよ」
と仰って下さったので、パチリ。
初めてお会いした豆塚エリさんは、美しく、物静かで、優しく、繊細で、
とても魅力的な方であった。
福岡まで逢いに行って良かったと思った。
今日も「一日の王」になれました~