一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『幸せへのキセキ』 ……S・ヨハンソンの軌跡と、E・ファニングの奇跡……

2012年06月21日 | 映画
動物には素人の英国人作家が動物園付きの家を買い、
人生や家族を見つめ直していく……という、
「いかにも」なストーリーにはまったく興味はなかったのだけれど、
大好きなスカーレット・ヨハンソンとエル・ファニングが出ていたので、
2人に逢いに行くつもりで映画『幸せへのキセキ』を見に行った。
で、見た結果はどうだったかというと、
これが、作品としても「なかなか」のものだったのだ。

イギリスの新聞コラムニストであるベンジャミン・ミー(マット・デイモン)は、
半年前に最愛の妻を亡くし、
14歳の息子と7歳になる娘とともに、悲しみと混乱の中にいた。


ベンジャミンは仕事を辞め、
息子は学校で問題を起こし退学処分になってしまう。
ベンジャミンは心機一転、新天地での再スタートを望み、郊外に家を購入するが、
その家はなんと閉鎖中の「動物園」付きだった。


これまで無給で働いてきたというチーフ飼育員ケリー(スカーレット・ヨハンソン)や、


ケリーの従姉妹のリリー(エル・ファニング)、


飲んだくれの荒くれ者ピーターなど、


かろうじて動物園に残っていたわずかなスタッフと一緒に、
動物園を再建すべく取り組むベンジャミンだったが、
素人ゆえわからないことだらけでトラブルが続き。


荒れ果てた施設の改修費用、
47種類もいる動物のエサ代や医療費など、
次々と出費がかさんでたちまち資金難に陥る。


しかも園を再開するには超イジワルなフェリス検査官の認可が必要だし、
反抗期のディラン、
クマの脱走騒動、
大型台風の来襲など、
その後も次々と問題は立ちはだかる。
果たして動物園はオープンできるのか……


原題は「We Bought a Zoo」(動物園を買った)。
『幸せへのキセキ』という邦題は、
ここ数年『幸せのちから』『幸せのレシピ』『幸せパズル』『幸せの時間』『しあわせの雨傘』『幸せの教室』『しあわせのパン』など、
「幸せ」が乱発気味の映画タイトルにウンザリしている私としては、
この作品にもっと相応しいタイトルはなかったものか……と思ったが、
タイトルを別にすれば、素晴らしい作品であった。
最初に、「いかにも」なストーリーと私は書いたが、
驚いたことに、これは実話をベースにした物語だったのだ。
大きな喪失感を抱え、バラバラになっている家族が、
動物園の再生という冒険に取り組みながら、
溝を埋め、絆を深めていく姿は、実に感動的であった。


恰幅のいい中年体型のマット・デイモンも良かったが、
私の目には、やはり、
スカーレット・ヨハンソンとエル・ファニングが、とても輝いて見えた。

【スカーレット・ヨハンソン】
1984年11月22日生まれ。
27歳。(2012年6月現在)
幼い頃から演劇教室に通い、
8歳のときにオフ・ブロードウェイの舞台『Sophistry』でデビュー。
1994年に『ノース 小さな旅人』で映画デビュー。
2003年公開の『ロスト・イン・トランスレーション』、
それに『真珠の耳飾りの少女』での演技が高く評価され、
この年のヴェネツィア国際映画祭ブレイク女優賞、
ロサンゼルス映画批評家協会賞ニュー・ジェネレーション賞を受賞。
英国アカデミー賞では両作品で主演女優賞のダブル候補となり、
前者の作品で共演のビル・マーレイと共に受賞。


私は『真珠の耳飾りの少女』で初めてスカーレット・ヨハンソンに出逢ったのだが、
フェルメールの絵から抜け出てきたような彼女の出現は衝撃であった。


作品の素晴らしさもあって、この一作で、
スカーレット・ヨハンソンの名は私の胸に深く刻まれた。


その後の軌跡をたどると、
『ママの遺したラヴソング』(2004年)
『理想の女』(2004年)
『マッチポイント』(2005年)
『アイランド』(2005年)
『プレステージ』(2006年)
『タロットカード殺人事件』(2006年)
『ブラック・ダリア』(2006年)
『私がクマにキレた理由』(2007年)
『それでも恋するバルセロナ』(2008年)
『ザ・スピリット』(2008年)
『ブーリン家の姉妹』(2008年)
『そんな彼なら捨てちゃえば?』(2009年)
『アイアンマン2』(2010年)

などに出演。
ここ数年はセクシー女優風な感じだったので、
本作『幸せへのキセキ』では、
久しぶりに本来のスカーレット・ヨハンソンに再会したようで、嬉しかった。


【エル・ファニング】
1998年4月9日生まれ。
14歳。(2012年6月現在)
ジョージア州コンヤーズ出身。
14歳にして、すでに身長170cm(5フィート7インチ)。
ハリウッドの名子役として鳴らしたダコタ・ファニングの4歳年下の妹。
2歳11ヶ月の時に『アイ・アム・サム』(2001年公開)でデビュー。
TVドラマ『TAKEN テイクン』で、姉の幼少期役で出演。
2004年公開の『ドア・イン・ザ・フロア』で、
主演のキム・ベイシンガーに絶賛され、
それがきっかけで母国アメリカでは名を知られるようになった。
最近では姉をも凌ぐ活躍で、ドラマの出演本数は姉よりも多くなった。
ここ数年の映画出演は、
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008年)
『モンスターVSエイリアン』(2009年)
『SOMEWHERE』(2010年)
『SUPER8/スーパーエイト』(2011年)
などがあり、
特に、『SOMEWHERE』と『SUPER8/スーパーエイト』で、
エル・ファニングの名は広く世界に知られるようになった。


本作『幸せへのキセキ』では、
ケリーの従姉妹で、動物園内のレストランのスタッフとして働いている少女の役。


好奇心旺盛だが田舎町から出たことがない。
都会からやってきたディランに興味を抱いて、
毎日サンドイッチを届けるなど積極的にアプローチする。


『SUPER8/スーパーエイト』の時と同様、
サイドストーリー的なこの初恋の物語がとてもイイ。




『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』『SOMEWHERE』『SUPER8/スーパーエイト』と見てきて、この作品のエル・ファニングが、最も輝いていると思った。
まだ14歳だが、キラキラするような美しさで、
眩しくて、目が痛くなるほどであった。
まさに「奇跡の美」と言えよう。


今後の予定としては、今夏(2012年8月11日より順次ロードショー)公開の、
フランシス・F・コッポラ監督作品『Virginia/ヴァージニア』がある。
ゴシック・ミステリーとのことで、こちらも楽しみ。


作品としての『幸せへのキセキ』に感動し、
スカーレット・ヨハンソンとエル・ファニングの美に酔い、
とても得した気分で映画館を出た。
今日も「一日の王」になれました~

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