MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『花とアリス殺人事件』

2015-03-21 20:08:29 | goo映画レビュー

原題:『花とアリス殺人事件』 英題:『The case of hana & alice』
監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
撮影:神戸千木
出演:鈴木杏/蒼井優/平泉成/相田翔子/キムラ緑子/木村多江/鈴木蘭々/黒木華
2015年/日本

岩井俊二監督の変わらない「甘さ」について

 背景は「静止画」でその中で人物を動かす手法は、『ねらわれた学園』(中村亮介監督 2012年)以上に『Peeping Life -WE ARE THE HERO-』(森りょういち監督 2014年)を想起させるが、決してグダグダではなく、ただ人物の躍動感を重視したためなのか人物造形はいたってシンプルである。
 黒柳健次が乗る「鉄人タクシー」の後を追いかけるため有栖川徹子が乗るタクシーが「鉄腕タクシー」であるところや、荒井花が着ているトレーナーには「BAKADA UNIVERSITY(バカ田大学)」だったりとギャグの細かさは秀逸なのに、例えば、職員室に貼ってあるカレンダーは9月1日は土曜日であるのだが、アリスが教室に入って以降のカレンダーの9月1日が水曜日であるところや、さらには湯田光太郎が教室内で婚姻届を渡した4人の「ユダ」に責められている際に、そのうちの一人が持っていた婚姻届の日付には「平成13年6月」と書いてあったり、とにかく時系列に関する細かさは無きに等しく、この演出のギャップが気になる。
 もちろん私は揚げ足を取っている訳ではなく、細かな時系列を配慮できるかどうかが、必然的に作品そのものに細かい配慮ができているかどうかのバロメーターになってしまうから指摘しているのである。寧ろ何故日時の設定という簡単なことがあやふやになってしまうのか監督本人に訊いてみたいぐらいなのだが、前作『花とアリス』(2004年)を観賞した時と演出に関する「甘さ」は変わっておらず、ストーリーそのものは良いだけに惜しいと思い次第である。


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