作品の冒頭とラストにおいて取調室で事情聴取を受けているハッチ・マンセルが映るのだが、BGMは「悲しき願い(Don't Let Me Be Misunderstood)」で原題の意味は「俺のことを誤解したままでいないで欲しい」というものだが、少なくともマンセルが堅気ではなく、国家の要職を務めていたことは暗示され、魔が差したような感じで家庭を持ってしまったのであり、結局、本人が正体を明かさないために誰だか分からないだけで、誤解しているとしたらそれは黙秘している本人の問題であることだけは言っておきたいし、言うまでも無く同じような凡人(Mr.ノーバディ)だからと言って真似をしてはいけない。 それでも本作は「ジョン・ウィック」のシリーズを担っているコルスタッドの脚本に最近の作品だと『ランボー ラスト・ブラッド』(エイドリアン・グランバーグ監督 2019年)のような要素も加わって良質のアクションスリラー作品に仕上がっていると思う。
The Animals "Don't Let Me Be Misunderstood" on The Ed Sullivan Show
原題の意味を考えてみたい。当初はビートルズの「ブラックバード」が脚本に組み込まれていたようなのだが、書き進めていくうちに曲調が脚本と会わなくなったものの、タイトルは悪くなかったので残ったらしい。しかし個人的には「ブラックバード」はアメリカの詩人であるウォレス・スティーヴンズ(Wallace Stevens)の「ブラックバードを見るための13の方法(Thirteen Ways of looking at a Blackbird)」から採られているように思う。設定舞台が同じコネチカットで、13という数字で不吉さを表していること以外に根拠はないけれど。何度も読んでいくうちに点と点が線で繋がるような気がする。 ストーリーに関しては言及しないが、全くそつのない完璧な主人公だからこそできることであって何の参考にもならないと思う。以下、和訳してみる。