原題:『Closing the Ring』
監督:リチャード・アッテンボロー
脚本:ピーター・ウッドワード
撮影:ロジャー・プラット
出演:シャーリー・マクレーン/クリストファー・プラマー/ミーシャ・バートン/グレゴリー・スミス
2007年/イギリス・カナダ・アメリカ
戦争と夫婦生活
1991年、アメリカのミシガン州のブラナガンにおいて夫のチャックの葬儀が教会内で執り行われているにも関わらず、彼の妻であるエセル・アンは教会の前で暇を持て余しているような態度で、これでは確かに娘のマリーに責め立てられても仕方がないのであるが、不思議なことは以前、恋人であったテディとの関係は細かく描かれながら、結婚後のエセル・アンとチャックの様子が全く描かれず、チャックの何が不満でエセル・アンの気持ちが夫の葬儀に向かないのかがよく分からない。
アイルランドに住むジミーという青年が、ベルファストの丘で見つけたいう指輪を届けてくれたことをきっかけに、エセル・アンは1941年当時の自分とテディとチャックとジャックの関係をマリーに打ち明けることになる。そしてエセル・アンは帰国するジミーと共にテディが亡くなった現場であるベルファストの丘に行くのであるが、エセル・アンは爆弾テロに巻き込まれてしまう。家から出てきたエセル・アンは目の前に瀕死のイギリス兵を見つけて彼の手を取り、その場を離れなくなる。その時、テディの最後の言葉を聞いたクインランがエセル・アンに伝える。それはテディを永遠に愛するという約束から自由になって欲しいというもので、その言葉を聞いたエセル・アンはようやく危険な現場から立ち去るのであるが、どうもこのエセル・アンの、第二次世界大戦も北アイルランド紛争さえも眼中に入らないほどのテディに対する異常な執着心が理解できない。エセル・アンとチャックの長い夫婦生活が全く描かれなかったことと、戦争もテロもまるで起こっていないかのように振る舞うエセル・アンの身振りは、嫌なことは徹底的に無視するという点においてリンクしていると思う。