原題:『恋のいばら』
監督:城定秀夫
脚本:城定秀夫/澤井香織
撮影:渡邊雅紀
出演:松本穂香/玉城ティナ/渡邊圭祐/中島歩/北向珠夕/不破万作/片岡礼子/白川和子
2023年/日本
歪み過ぎた同性愛について
本作の粗筋を書くとするならば、カメラマンの湯川健太朗に対して、図書館に勤務している元カノの富田桃と今カノのダンサーの真島莉子がタッグを組んで、とりあえず2人が撮られたかもしれないプライベートの性的写真を処分するまでのドタバタ喜劇といった感じであろう。
しかし健太朗の留守の間に2人が彼の部屋の忍び込んで確認した写真はどれも絶対に処分しなければならないような、例えば全裸のようなものはなく、もちろん「ハメ撮り」のような写真も存在しない。つまり莉子を誘った桃の真意はそこではなかったのである。
ここでストーリーのカギとなるものがロビー・クリエガー(Robby Krieger)という写真家の写真集『Woman's Sadness(女性の悲しみ)』である。健太朗が桃の勤めている図書館にその写真集を探しに来たことがきっかけで二人は交際するようになるのだが、その時は図書館にはなくて、後日桃が入手した稀少版を健太朗にプレゼントしたのである。
ところが桃が健太朗にプレゼントを渡した彼の部屋のベッドの下には莉子が隠れており、嫉妬した莉子は後日同じ写真集を手に入れて、健太朗にバレないように桃がプレゼントした同じ写真集と取り替えて、帰りがけに桃がプレゼントした写真集をゴミ集積所にそのまま捨てたのであるが、その現場には桃もいて、帰って行く莉子の後ろ姿を見ながら、ゴミ集積場からその写真集を拾って、中を見てみると眠っている莉子のスナップ写真を見つけるのだが、その美しさに桃は莉子に一目ぼれしたのである。
つまり桃の目的はプライベートの性的写真の処分ではなく、健太朗が所有している莉子の写真を全て処分することで桃が莉子の写真を独り占めすることだったのである。桃の行動は健太朗の認知症を患っている祖母のトキが毎日のようにきれいな物なら何でも収集していることと対照をなしており、桃(=松本穂香)の莉子に対する表に出さない狂気同然の愛情はストーカーという意味合いを越えたものであろう。
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