原題:『地獄でなぜ悪い Why don’t you play in hell?』
監督:園子温
脚本:園子温
撮影:山本英夫
出演:國村隼/堤真一/二階堂ふみ/友近/長谷川博己/星野源
2013年/日本
降りてくる「映画の神様」の質について
園子温監督は『ヒミズ』(2012年)や『希望の国』(2012年)など‘正義’を描くと何故かぎこちなくなってしまうことは既にレビューに書いた通りであるが、さすがに‘地獄’を描かせると本領発揮といったところではある。自主映画の基本は「ゾンビもの」か「アクションもの」で、リアリティを追求するあまり演技の喧嘩よりも本物の喧嘩を撮りたくなる平田純の気持ちは理解するものの、いつまでも子どもではないのだから、映画における脚本の重要さはいい加減理解しなければならないと思うのだが、青年となった平田純は相変わらず作品全体の中のアクションシーンだけに拘っており、映画監督として全く成長していない。
確かに脚本を書くシーンも描かれてはいるのだが、ラストで平田純が持ち逃げしたフィルムには武藤組と池上組が巻き起こす抗争シーンしか収録されていないために映画としては不完全であり、本作のオチはメタフィクション以外にありえないことが容易に察し出来てしまい、血みどろの過激な映像とは裏腹に映画として驚きを感じないのである。最近、石井輝男監督のような作風の映画を見かけないので、その衣鉢を継ぐような園子温監督は貴重な存在ではあるのだけれど。