MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『地獄でなぜ悪い』

2013-09-30 22:40:41 | goo映画レビュー

原題:『地獄でなぜ悪い Why don’t you play in hell?』
監督:園子温
脚本:園子温
撮影:山本英夫
出演:國村隼/堤真一/二階堂ふみ/友近/長谷川博己/星野源
2013年/日本

降りてくる「映画の神様」の質について

 園子温監督は『ヒミズ』(2012年)や『希望の国』(2012年)など‘正義’を描くと何故かぎこちなくなってしまうことは既にレビューに書いた通りであるが、さすがに‘地獄’を描かせると本領発揮といったところではある。自主映画の基本は「ゾンビもの」か「アクションもの」で、リアリティを追求するあまり演技の喧嘩よりも本物の喧嘩を撮りたくなる平田純の気持ちは理解するものの、いつまでも子どもではないのだから、映画における脚本の重要さはいい加減理解しなければならないと思うのだが、青年となった平田純は相変わらず作品全体の中のアクションシーンだけに拘っており、映画監督として全く成長していない。
 確かに脚本を書くシーンも描かれてはいるのだが、ラストで平田純が持ち逃げしたフィルムには武藤組と池上組が巻き起こす抗争シーンしか収録されていないために映画としては不完全であり、本作のオチはメタフィクション以外にありえないことが容易に察し出来てしまい、血みどろの過激な映像とは裏腹に映画として驚きを感じないのである。最近、石井輝男監督のような作風の映画を見かけないので、その衣鉢を継ぐような園子温監督は貴重な存在ではあるのだけれど。


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「バイ・マイ・アベノミクス」

2013-09-30 00:15:50 | Weblog

首相の講演「アクセントの置き方違う」 みんな・渡辺氏(朝日新聞) - goo ニュース

 みんなの党代表の渡辺喜美の「バイ・マイ・アベノミクス」のアクセント批判はいちゃもんの

レベルだから無視するが、「バイ・マイ・アベノミクス」は『ウォール街』(オリバー・ストーン監督

1987年)や『ウォール・ストリート』(2010年)の主人公でマイケル・ダグラス演じるゴードン・

ゲッコー(Gordon Gekko)のフレーズから引用されている。その部分を訳してみると 

「Its a bankrupt business model.Its malignant, like cancer. Its a disease. Now

we have to fight back. I'll tell you how to fight back in three words: Buy. My.

Book.(あれこそ行き詰ったビジネスの典型だ。癌のような悪性の病気だ。俺たちは今こそ反撃

しなければならない。どのようにしてやり返すのかを3語で教えてやる。『俺の本を買え』)」

となる。このスピーチを言い換えて「How are we going to revive the global economy

Well, I’ll tell you. Three words: ‘Buy my Abenomics’(私たちはどのように世界経済

を復興させればいいのでしょうか 私がみなさんに3語で教えてあげます。『バイ・マイ・

アベノミクス』)」というフレーズを考案したのは谷口智彦内閣審議官だそうだが、洒落として

上手いだろうか ウケていたようだから良いとしても、どのように理解されたのかは分から

ない。なぜならばゴードン・ゲッコーは希代の香具師として描かれていたはずだからである。


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『謝罪の王様』

2013-09-29 23:21:44 | goo映画レビュー

原題:『謝罪の王様』
監督:水田伸生
脚本:宮藤官九郎
撮影:中山光一
出演:阿部サダヲ/井上真央/竹野内豊/岡田将生/尾野真千子/高橋克実/松雪泰子
2013年/日本

土下座という奇妙な風習について

 日本において土下座は最高レベルの謝罪の形式であるが、例えば、マンタン王国においては土下座は最悪の侮辱を意味する。一方、「わき毛ボーボー自由の女神」と唱えながら行うパフォーマンスはマンタン王国においては高尚の謝罪の形式として機能するが、日本においては悪ふざけとしか見做されない。箕輪正臣のまだ3歳の娘が、箕輪が自宅で仕事をしている最中に部屋に入ってきたことを父親に咎められて、その度に「わき毛ボーボー自由の女神」のパフォーマンスを繰り返す理由は、かつて南部哲郎が主演した日本とマンタン王国の合作映画『バタールの丘で』をDVDで観て、そのパフォーマンスが謝罪を意味すると理解したためであろうが、コロンビア大学を卒業し、27カ国語を操る完璧な一流弁護士である箕輪であっても、アメリカ暮らしの日本人にはマンタン王国の風習は理解できない。それは東京謝罪センター所長という肩書きを持つ「謝罪師」、黒島譲にしても同じであるのだが、黒島は謝罪は自分自身の気持ちの問題ではなく、いかに相手の気持ちを鎮められるパフォーマンスを演じることが出来るかどうかを問題にしており、言い換えるならば、謝罪とは皮肉なことに気持ちを込めなくても土下座や「わき毛ボーボー自由の女神」などの破廉恥な振る舞いを通じて相手の気持ちを揺さぶることで成り立つ奇妙な風習であることを本作は暴きだすのである。
 ラストで流れる、E-girlsの「ごめんなさいのKissing You」の映像もプロモーションヴィデオとして素晴らしい出来である。

土下座、危ないブーム…「不寛容の表れ」と識者(読売新聞) - goo ニュース


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北野武のバイク事故の原因

2013-09-29 20:00:36 | goo映画レビュー

ビートたけし バイク事故の原因を明かす「節目節目でバチがあたる」(デイリースポーツ) - goo ニュース

 ビートたけしが28日、MBS系のトーク番組「サワコの朝」に出演し、1994年に起こした原付

バイク事故の原因に関して、「実は事故の原因はかなり映画があったの。自分としては自信が

あったのに、まるっきり評価がない。そうなると自分の感覚が悪いんだと思って」と、93年に

撮った『ソナチネ』が評価されなかったように語っているが、興行的には失敗したものの、作品

そのものは一部の評論家からは高評価されていたように思う。淀川長治のみならず蓮實重彦

や柄谷行人なども絶賛していたのではなかったのか だからたけしの本音を代弁するなら、

実はバイク事故を起こす直前に完成しており、95年に公開された『みんな~やってるか

の出来が酷すぎたことに対するコメディアンとしての絶望が事故の原因だったように思う。

その後もコメディ作品は冴えず、現代的解釈による切腹を描いた『HANA‐BI』や一連のヤクザ

もの作品が評価されるに至るのだが、ビートたけし本人としては不本意なのかもしれない。


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『クロニクル』

2013-09-28 23:44:47 | goo映画レビュー

原題:『Chronicle』
監督:ジョシュ・トランク
脚本:マックス・ランディス
撮影:マシュー・ジェンセン
出演:デイン・デハーン/アレックス・ラッセル/マイケル・B・ジョーダン/マイケル・ケリー
2012年/アメリカ

擬似ドキュメンタリー形式に拘る意義について

 『キャリー』(ブライアン・デ・パルマ監督 1976年)の男性版のようなストーリーそのものは悪くはないと思うが、ファウンド・フッテージと呼ばれる形式が間違っていると思う。最初は主人公の高校生であるアンドリュー・デトメールが撮影した映像が流れているのであるが、途中で、同級生のケイシー・レターが撮影した映像が挿入されることで、流れている映像がアンドリュー個人で編集されたものではないことになり、何故かヴィデオで撮られた映像にこだわっているために、病院などに設置されている監視カメラで撮られた映像や、クライマックスにおいてはアンドリューの超能力で空中に浮遊している他者のヴィデオカメラで撮影された映像まで使われることになる。ここまでくると本作のオチは一連の事件の映像を全て収集した警察が事件の証拠として編集したものとなるしかないはずであるが、最後にアンドリューのいとこのマット・ガレッティがチベットで撮影した映像がどのような経緯で入手されたのか分からなくなる。ヴィデオ映像に拘っていながら、何故この形式の破綻に無関心なのか意図が見えず、その点を考慮するならば『クローバーフィールド/HAKAISHA』(マット・リーヴス監督 2008年)は本当に良く出来ていると思う。


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ロビン・シックとプリンス

2013-09-28 12:51:27 | 洋楽歌詞和訳

AKB大島&小嶋が日米1位共演 全米12週No.1ロビンとセクシーMV(ORICON STYLE) - goo ニュース

 ロビン・シック(Robin Thicke featuring T.I., Pharrell)の「ブラード・ラインズ~今夜は

ヘイ・ヘイ・ヘイ(Blurred Lines)」を聴く度に思い出すことは、1980年代はこのような曲を

プリンスがいとも簡単に作り上げてヒットを量産していたことで、例えば、1986年の「KISS」

なども全米ナンバーワンになっている。しかし何故か次にリリース予定のアルバムだった

『ブラック・アルバム(The Black Album)』にはそれまでのポップな感覚が失われており、

どうもプリンス本人がアルバムリリース前にそのことに気がつき、一時お蔵入りにしていた。

1988年に『LOVESEXY(Lovesexy)』というアルバムをリリースし、何とか面目は保った

ものの、一体『ブラック・アルバム』とは何だったのか今でも謎である。ちなみにロビン・シックの

「ブラード・ラインズ」の意味は「曖昧な言葉」ということで、「I hate these blurred lines」は

「俺はこのように言葉を濁されることが嫌いなんだ」という意味に捉えれば良いと思う。


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『私が愛した大統領』

2013-09-27 23:30:03 | goo映画レビュー

原題:『Hyde Park on Hudson』
監督:ロジャー・ミッシェル
脚本:リチャード・ネルソン
撮影:ロル・クロウリー
出演:ビル・マーレイ/ローラ・リニー/サミュエル・ウェスト/オリヴィア・コールマン
2012年/イギリス

「フォーマル」嫌いのアメリカ大統領

 本作を観る限り、第32代アメリカ大統領のフランクリン・ルーズベルトは、‘フォーマル’なことが好きではないらしく、例えば、1939年6月にニューヨーク州のハイドバークにあるルーズベルト邸を訪ねてくるジョージ6世とエリザベス王妃のために用意された部屋にはわざわざイギリス人を揶揄した風刺画が飾られており、祝賀行事として行われるピクニックにおいてはファストフードであるホットドッグを振る舞い、ネイティブアメリカンに伝統芸を披露させる。それはアメリカ大統領という立場上、晩餐会の最中に女中たちが料理をこぼしたりするような緊張感を和らげる意図もあるのだろうが、やはりルーズベルト自身が小児麻痺を患っているということが大きいはずで、だから吃音に悩んでいるジョージ6世に親近感を覚えることは自然であろうし、延いては結婚という制度に囚われないことにも納得がいくのである。
 それにしても身体に障害があることを隠したい大統領の希望に合わせて新聞記者たちが撮影に応じていたように、秘密を秘密のままに置くことが出来た時代はインターネット時代から見るならば本当に「古き良き時代」といった感じで、その点において本作が主人公であるデイジー(=マーガレット・サックリー)の私的な日記から製作されたことを本人は草葉の陰からどのように思うのであろうか。


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「アベノミクス」は“買い”?

2013-09-27 00:01:29 | Weblog

首相、アベノミクスは「買い」…NY証取で講演(読売新聞) - goo ニュース
アベノミクスは「買い」だ…首相、米証券取引所で講演へ(朝日新聞) - goo ニュース

 安倍晋三首相が25日午後(日本時間26日未明)、米ニューヨーク証券取引所で講演し、

安倍政権の経済政策「アベノミクス」に関し、「日本に帰ったら直ちに成長戦略の次なる矢を

放つ。投資を喚起するため、大胆な減税を断行する」と述べ、日本経済について、「世界第3位

の経済大国の日本が復活する事は、世界経済回復の大きなけん引役となる」と語り、さらに、

「世界経済回復のためには3語で十分だ。Buy my Abenomics(アベノミクスは『買い』だ)。

ウォール街の皆さんは常に世界の半歩先を行く。今がチャンスだ」と述べていることに関して、

一つ疑問を呈するならば、「バイ・マイ・アベノミクス」というフレーズの意味で、これは裏を

取っているだろうから間違って解釈しているはずはないとは思うのであるが、文章の流れから

判断するならば、「Buy」ではなくて「By」と解釈し、「世界経済回復のためには3語で十分だ。

By my Abenomics(アベノミクスによってだ)。」の方が相応しいような気がする。


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観客の「ため息問題」

2013-09-26 00:28:34 | Weblog

クルム伊達観客ため息連発に激高/テニス(日刊スポーツ) - goo ニュース
ストーサー「ため息は出るわ」/テニス(日刊スポーツ) - goo ニュース
【テニス】クルム伊達、観客ため息にキレた!単複で日本勢全滅(スポーツ報知) - goo ニュース

クルム伊達公子にこのように指摘されるまで観客の「ため息問題」は全く気にしていなかった。

例えば野球においても選手が三振するならば観客席からため息が漏れるであろうし、サッカー

でも絶好の機会にシュートを外したらため息が漏れるだろうし、バレーボールにしてもサーブを

外したらため息が漏れてしまうだろうが、野球にしてもサッカーにしてもバレーボールにしても

チームとして戦っているわけだから、一人が全責任を負うことはなく、失敗しても他のメンバー

が声をかけてくれるわけだから、精神的に追い詰められるようなことはない。しかしテニスの

ように一人で戦う場合は観客のため息を一人で絶えず浴びなければならないことになり、

精神的負担はかなり大きいと想像できるが、よほど注意していなければため息は思わず

出てしまうと思う。


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『そして父になる』

2013-09-26 00:07:04 | goo映画レビュー

原題:『そして父になる』 英題:『LIKE FATHER, LIKE SON』
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
撮影:瀧本幹也
出演:福山雅治/尾野真千子/真木よう子/リリー・フランキー
2013年/日本

作品を観る順番の重要性について

 6年経ってから自分の育てていた息子が他人の子供と取り違えられていたことが分かり、血を選ぶか情を選ぶか苦悩する2組の夫婦の物語の主人公は、エリート会社員で仕事に忙殺され、息子に関しては妻のみどりに任せっきりだった野々宮良多である。息子の慶多と血が繋がっていないことを知った野々宮は自分と慶多の類似点と相違点を思案することになる。例えば、なかなかピアノが上達しない慶多は、自分もピアノに挫折したから似ているのか、あるいは近所の下手なピアノの音を聞かされてうんざりしている良多の父親の野々宮良輔には似ていないという思いにも捕らわれる。一方、血縁関係がある斎木琉晴は育ての父親である斎木雄大と似てストローを噛む癖があったりするために心境は複雑である。
 しばらく家族ぐるみでの交際を経て、それぞれ本当の両親の下で育てられることになるのであるが、エリート会社員の家庭と街の電気店の家庭とでは環境が大きく異なり、一人っ子と3人兄弟という家族構成も違うためになかなか慣れることはない。
 琉晴は勝手に斎木の家に戻ってしまうのであるが、頑なに慶多が野々宮に会おうとしない理由は、野々宮と交わしていた「ミッション」を忠実に守っていたからであり、それは自分の力で人生を切り開いてきた野々宮の生真面目さを受け継いでいるためであろう。
 ラストは子供を交換したのかどうか曖昧なまま終わらせているのであるが、お金を積んででも2人とも引き取りたいと懇願する野々宮の言葉に説得力を感じてしまう理由は、『凶悪』(白石和彌監督 2013年)を観た直後だったからで、笑顔になればなるほどリリー・フランキーが怪しく見えてしまい、そういえば子供を意図的に取り替えた看護婦の夫として法廷にピエール瀧の姿も一瞬だが見かけたような気がしたが、本当にあの2人はヤバイんだって、マジで。


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