MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『汚れなき悪戯』

2015-04-30 00:46:14 | goo映画レビュー

原題:『Marcelino Pan y Vino』
監督:ラディスラオ・バホダ
脚本:ラディスラオ・バホダ/ホセ・マリーア・サンチェス・シルバ
撮影:エンリーケ・ゲルメル
出演:パブリート・カルボ/ラファエル・リベリエス/フアン・カルボ/アントニオ・ビコ
1955年/スペイン

神や宇宙人と人間の遭遇シーンの類似性について

 今となっては作品そのものよりも「マルセリーノの唄」で有名なのかもしれない本作を改めて観なおしてみると、ストーリーはいたって単純で、だから物語が記憶に残らないのかもしれないが、やはり見逃してはならないカットは主人公のマルセリーノとキリスト像が初めて接触するところで、下のシーンを観て思い出す場面は間違いなく『E.T.』(スティーヴン・スピルバーグ監督 1982年)のエリオットとエイリアンとの人差し指が触れ合うカットであり、この作品からスピルバーグはインスピレーションを得たように思う。


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『案山子とラケット~亜季と珠子の夏休み~』

2015-04-29 00:06:10 | goo映画レビュー

さだまさしさん『案山子』の歌詞 カカシ
words by サダマサシ
music by サダマサシ
Performed by サダマサシ

原題:『案山子とラケット 〜亜季と珠子の夏休み〜』
監督:井上春生
脚本:村川康敏
撮影:小松高志
出演:平祐奈/大友花恋/小市慢太郎/星田英利/草村礼子/柳葉敏郎/斉木しげる
2015年/日本

 「案山子」不足の作品について

 題名の「案山子」はさだまさしの曲名にもかかっているのであるが、曲中の案山子は雪をかぶっており本作のストーリーとリンクしておらず、そもそも主人公の小田切亜季は東京から父親の雅也が住んでいる田舎に越してきたのだから、都会で暮らす子供を想って歌われるさだまさしの曲が醸し出すニュアンスが全く活かされていない。
 予算の都合とはいえ亜季と松丘珠子の2人しかいない部活動だけで廃校になった小学校の校庭にテニスコートを作るようになった経緯が不自然で、最近公開された「学園もの」の『幕が上がる』(本広克行監督 2015年)や『くちびるに歌を』(三木孝浩監督 2015年)と比較しても明らかに見劣りしてしまう。
 出演者の動員不足を補うだけのスリリングなストーリー展開があるのかと問うならば、「ラケット」は多々見かけるものの、圧倒的に「案山子」が不足している。それは実際の案山子ではなく、試合中に「案山子」にしかなれない亜季と珠子が描かれるべきだったのである。2人が一緒にブラジャーをはずすシーンが撮れるのに、2人が「案山子」と化すシーンが撮れないというのは何とも理解しがたく、これではただのソフトテニスの啓発作品の域を出ないと思う。
 『風に立つライオン』(三池崇史監督 2015年)でも論じたように、結局、さだまさしの「原作」は歌として表現されるからいいわけであり、具体的に映像化すると平凡なものになってしまうきらいはある。


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『風に立つライオン』

2015-04-28 00:28:55 | goo映画レビュー

原題:『風に立つライオン』
監督:三池崇史
脚本:斉藤ひろし
撮影:北信康
出演:大沢たかお/真木よう子/石原さとみ/萩原聖人/鈴木亮平/石橋蓮司
2015年/日本

「風に立つライオン」という「ファンタジー」について

 主人公の島田航一郎がケニアにある長崎大学熱帯医学研究所に赴任するきっかけとなった出来事として大学病院に勤務していた時に、大学病院に入院したいという肝臓がんを患った女性患者の希望を叶えられずに結果的に手術の手遅れで死なせてしまったことがあると思う。婚約者の秋島貴子を放っておいたまま航一郎は一ヵ月の任期で派遣されたロキチョキオの赤十字病院の勤務の任期を自ら伸ばし、ついには専任となるのであるが、これではまるで同国人同士の細かいやり取りを諦めてしまい、地元の離島で父親の病院の後を継いだ貴子の存在も相まってあまり言葉が通じない人たちと上辺だけで関わることで満足する航一郎は日本から逃げてしまったように見える。航一郎の正義感は理解できるものの、現地に溶け込んでいるのかどうかも怪しい。それならば僻地に診療に向かう際に、運転手が言う「嫌な予感」を尊重せずに暴漢に襲われてしまうはずはないからである。つまり航一郎の言動を裏付ける描写がないためにリアリティーがなく、かと言って航一郎がまるで風に立つライオンのように上手く描かれているようには見えず、ファンタジーの域を出ないのである。


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『映画 暗殺教室』

2015-04-27 00:58:53 | goo映画レビュー

原題:『映画 暗殺教室』
監督:羽住英一郎
脚本:金沢達也
撮影:江崎朋生
出演:山田涼介/菅田将暉/山本舞香/橋本環奈/優希美青/竹富聖花/高嶋政伸/椎名桔平
2015年/日本

このままでは終われない「暗殺」について

 「殺せんせー」に拠るならば殺人と暗殺は違うらしい。殺人であるならばそれは力がものを言うはずで必然的に勝負は決まってしまうが、暗殺ならば高度な作戦を必要とし、だから鷹岡明たちは潮田渚を筆頭とする3年E組の生徒たちに勝てないのである。しかし本作だけでは結局、決着がつかないまま終わってしまっており生徒たちが学んだ暗殺という皮肉が効いていないと思っていたのであるが、どうやら続編の製作が決定したらしい。


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『マップ・トゥ・ザ・スターズ』

2015-04-26 00:26:39 | goo映画レビュー

原題:『Maps to the Stars』
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
脚本:ブルース・ワグナー
撮影:ピーター・サシツキー
出演:ジュリアン・ムーア/ジョン・キューザック/ミア・ワシコウスカ/オリヴィア・ウィリアムズ
2014年/アメリカ・カナダ・フランス・ドイツ

一度囚われた過去から抜け出すことの難しさについて

 大女優であるハヴァナ・セグランドは同じく映画スターだったクラリスに性的虐待を受けていた経験からバイセクシャルになっていた。女優として落ち目だったハヴァナはクラリスが出演した映画『Stolen Waters』のリメイク版に再起を賭けている。
 ワイス家は父親のスタッフォード・ワイス博士がテレビ番組のメインパーソナリティを務めるほどの心理学者で、息子も有名子役のベンジーで母親のクリスティーナは息子のマネージャーを務めているのであるが、この家族にはアガサという問題児がいた。彼女は7年前にベンジーと結婚しようとして家に放火したことからフロリダの精神病棟に隔離されていたのであるが、全てに決着をつけるためにハリウッドに戻って来たのである。
 アガサがベンジーと結婚しようとしていた理由は両親が近親相姦による結婚だったからであるが、両親は幼い時に離れて暮らしていたために自分たちが兄妹であることを知らずに結婚したことをアガサは知る。しかし一度囚われた観念から抜け出すことは難しく、アガサとベンジーは両親がしていた指輪を抜いて自分たちの指にはめた後、大量の薬を飲んで自殺してしまう。
 一方、その前にハヴァナはアガサが手にした彼女自身の「トロフィー」によって殴り殺される。結局、誰もが過去に囚われてしまいそこから逃げ出すことができず、ポール・エリュアール(Paul Éluard)の「自由(Liberty)」という詩がただ空しく響くのである。


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『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』

2015-04-25 21:15:43 | goo映画レビュー

原題:『Under the Skin』
監督:ジョナサン・グレイザー
脚本:ジョナサン・グレイザー/ウォルター・キャンベル
撮影:ダニエル・ランディン
出演:スカーレット・ヨハンソン/ジェレミー・マクウィリアムス/ポール・ブラニガン
2014年/アメリカ・イギリス・スイス

「地球に落ちてきた女」について

 冒頭の真っ暗な画面の中から一条の光が差し、それは眼球に変化する。オートバイに乗っていた男が川から運んできた女性が着ていた衣服を身にまとった、スカーレット・ヨハンソンが演じる女性は次々と身寄りのない男性に声をかけると部屋に連れ込んで黒い液体の中に沈ませていく。
 それがまるで彼女の役割のように見えるが、顔に障害を持った男と関わったことで愛情を知ってしまった女性は、その後知り合った男性の家を訪れて性交渉を持とうとしたのであるが、直前になって自分が生殖器を持たないことを知って逃げ出し、森の中で女性は暴漢に襲われる。しかし暴漢は女性の「皮膚」が裂けていることを見つけ、ガソリンを浴びせて女性を燃やすのである。
 なかなか理解しにくい作品ではあるが、本作を観て思い出すのはウォルター・テヴィス(Walter S. Tevis)原作の『地球に落ちてきた男(The Man Who Fell to Earth)』(ニコラス・ローグ監督 1976年)で眼球に対するこだわりも一緒で、まるで男の代わりに女が地球に落ちてきたらどうなるのか想定されたような作品である。監督のジョナサン・グレイザーはレディオヘッドやジャミロクワイなどのミュージック・ビデオを撮っており、当然デヴィッド・ボウイ主演の『地球に落ちてきた男』を観ているはずで、この2作品を合わせて観るとより理解が深まるように思う。


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『ブルックリンの恋人たち』

2015-04-24 00:44:28 | goo映画レビュー

原題:『Song One』
監督:ケイト・バーカー=フロイランド
脚本:ケイト・バーカー=フロイランド
撮影:ジョン・ガレセリアン
出演:アン・ハサウェイ/ジョニー・フリン/メアリー・スティーンバージェン
2014年/アメリカ

何も起こらない「ラヴストーリー」について

 これほど何をテーマとして撮られたのか分からない作品も珍しい。主人公のフラニー・エリスがモロッコで遊牧民の文化を研究している際に、大学を中退してストリートミュージシャンをしていた弟のヘンリーが交通事故で昏睡状態に陥ってしまう。半年ほど前から2人は弟の進路を巡り喧嘩をしており連絡を絶っていたことをフラニーは後悔し、弟がよく行っていた場所を訪ねていた時に、ミュージシャンのジェイムズ・フォレスターと知り合い、一緒にヘンリーが好みそうな音を録音しているうちにお互い惹かれあうのだが、結局、ジェイムズはニューヨークでの最後のコンサートでフラニーのために新曲を披露した後に、田舎に帰ってしまうのである。
 フラニーとジェイムズが結ばれることはなく、意識を取り戻したヘンリーがその後どうなったのか描かれることもなく、ヘンリーがCDに残していた「Marble Song」をジェイムズがカヴァーすることもない。人類学を専攻しているフラニーは学者然り冷静に音を記録するだけでストーリーにクライマックスがないのである。『君が生きた証』(ウィリアム・H・メイシー監督 2014年)のようなものを期待していただけにあまりのストーリー展開のなさにがっかりした。ジョン・カサヴェテス的な作風を狙ったのであろうか?


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『テラスハウス クロージング・ドア』

2015-04-23 00:14:06 | goo映画レビュー

原題:『テラスハウス クロージング・ドア』
監督:前田真人
出演:菅谷哲也/小田部仁/吉野圭佑/島袋聖南/松川佑依子/和泉真弥
2015年/日本

気配り不足のメインキャラクターについて

 2012年10月から2014年9月までフジテレビで放送されていたこのリアリティショーを一度として見たことはなかったのであるが、意外と面白かった。
 気になったことを書いておけば、メインキャラクターと思われる「てっちゃん」こと菅谷哲也が着ていたトレーナーに「OBEY」と書かれていたことで、これは「服従する」とか「命令に従う」という意味で自主性の無さを表してしまっている。自身が相手をリードする立場を掴むことがテラスハウスに住む意義だったはずなのであるが、結局は、相手女性に対してのみならず自身の服に対する配慮の足りなさが「てっちゃん」の限界であったように思う。まだ若いから仕方がないのだけれど。


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『はじめてのももクロ』

2015-04-22 00:37:21 | goo映画レビュー

原題:『はじめてのももクロ』
監督:本広克行
出演:百田夏菜子/玉井詩織/佐々木彩夏/有安杏果/高城れに/早見あかり
2015年/日本

「あの空へ向かって」と虹について

 ももいろクローバーZの七年間の軌跡を追ったドキュメンタリー番組は残されていた大量の映像素材を元に『幕が上がる』を撮った本広克行監督によってまとめられたものである。個人的な興味は早見あかりが脱退した理由で、実際にその様子を映したシーンも見られたが、本人は自分にはアイドルとしての才能がなかったと言っており、他のメンバーは何も早見に言うことはなかった。しかしヘアメイクの中條三菜子の証言によれば握手会の後などに早見が泣いていることがよくあったらしく、やはり人気の面で他のメンバーとかなりの差があったことは伺える。改めて見てみると早見は他のメンバーよりも体が一回り大きくバランスの悪さを感じるが、結果的にはお互いに売れたのだから良かったのである。
 ところで映像に関してだが、冒頭の「プロローグ(Prologue)」の綴りが間違っており、公開されるまで多くの人の目に触れていたはずなのに何故誰も気がつかなかったのであろうか? もちろんこれは監督の責任である。


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『ナイトミュージアム/エジプト王の秘密』

2015-04-21 00:49:58 | goo映画レビュー

原題:『Night at the Museum: Secret of the Tomb』
監督:ショーン・レヴィ
脚本:デヴィッド・ギヨン/マイケル・ハンデルマン
撮影:ギレルモ・ナヴァロ
出演:ベン・スティラー/ロビン・ウィリアムズ/スカイラー・ギソンド/ダン・スティーヴンス
2014年/アメリカ

マーベル・コミックスのキャラクターの圧倒的な強さについて

 シリーズ最終作ということもあってか「予定調和」という感じが拭えなかったのであるが、例えば、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督 2014年)において主人公のリーガン・トムソンがテレビを見ながら『アイアンマン』の主人公のトニー・スタークを演じているロバート・ダウニー・Jrの演技を批判し、『ワイルド・スピード SKY MISSION』(ジェームズ・ワン監督 2014年)において入院を余儀なくされたルーク・ホブスが娘がテレビで見ている『超人ハルク』を貶し、それは本作においても『キャメロット』の舞台でアーサー王を演じているヒュー・ジャックマン本人をキャスティングし、ランスロットがウルヴァリンをネタにしてジャックマンをいじっており、マーベル・コミックスのキャラクターの強さだけはやたらと目立つのである。


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