MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『映画 ギヴン』

2020-09-30 00:58:12 | goo映画レビュー

原題:『映画 ギヴン』
監督:山口ひかる
脚本:綾奈ゆにこ
撮影:芹澤直樹
出演:矢野奨吾/内田雄馬/中澤まさとも/江口拓也/浅沼晋太郎
2020年/日本

「贈与」の受け取り方について

 ロックバンド「ギヴン」が描かれるかと思いきや、驚くことに本作はドラム担当の大学生の梶秋彦とベース担当の大学院生の中山春樹と、秋彦の同居人の天才ヴァイオリニストの村田雨月の三角関係だけがおよそ1時間で描かれていた。
 興味深い点を挙げるならば、かつて雨月と共にヴァイオリンを学んでいた秋彦が雨月に勝てないと悟ったためなのかヴァイオリンを諦めてドラムを始めたのだが、雨月と別れて春樹と付き合うようになると、人生をやり直すという口実でヴァイオリンを学び直しだし、つまり秋彦はやることが交際相手と被ると角が立つと無意識に思っているようで、「ジャンル(genre)」を変えることで「ジェンダー(gender)」の違いを保障しているように見える。


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アニメーション映画『思い、思われ、ふり、ふられ』

2020-09-29 19:50:27 | goo映画レビュー

原題:『思い、思われ、ふり、ふられ』
監督:黒柳トシマサ
脚本:吉田恵里香
撮影:岡﨑正春
出演:島崎信長/斉藤壮馬/潘めぐみ/鈴木毬花/井上喜久子/田中秀幸/久川綾
2020年/日本

モノローグの弊害について

 既に実写版『思い、思われ、ふり、ふられ』(三木孝浩監督 2020年)が公開されており、内容は細かな設定を除けばほぼ同じで、原作が漫画であることを考慮するならば、本作のアニメーションの方が原作に忠実なのではあろうが、4人のモノローグが多用され、時にユニゾンでかましているためなのか、ストーリーが必要以上に重くなっているように思う。
 山本理央と山本朱里がキスしている現場を目撃したことを敢えて理央に言わなかった乾和臣に繊細な「男心」を感じた。


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『ヒットマン エージェント:ジュン』

2020-09-28 00:49:23 | goo映画レビュー

原題:『히트맨』 英題:『Hitman: Agent Jun』
監督:チェ・ウォンソプ
脚本:チェ・ウォンソプ/シン・ジョンリョル
撮影:パク・セスン
出演:クォン・サンウ/ファンウ・スルヘ/イ・ジウォン/ホ・ソンテ/チョン・ジュノ
2020年/韓国

「漫画的」な描写について

 父親がテコンドーの銀メダリストで母親が体操の選手だったジュンは家族で乗っていた自動車にトラックがぶつかって両親が亡くなってしまい孤児院にいたのだが、ジュンの素性を知った国家情報院のドッキョにスカウトされて、猛攻隊と呼ばれる政府の暗殺組織に加わることになる。
 ジュンは優秀な成績を上げるのだが、元々漫画家志望だったジュンは事故を装って行方をくらまし、15年後の2019年5月頃、念願だったウェブ漫画家として妻のミナと娘のガヨンと暮しているのだが、彼が描く漫画は全く売れず妻の稼ぎで暮らしている。
 ある日、酔った勢いでそれまで隠していた過去の猛攻隊としての活躍を描くものの、身の安全のためにジュンは発表するつもりはなかったのだが、それを読んで面白がったミナが勝手にそのままメールで送ってしまい、それが評判となってしまい、その作品を読んだ国家情報院のドッキョとマフィアのジェイソンの双方に目を付けられることになり、国家情報院にガヨンを、マフィアにミナを人質に取られるのである。
 ここまでのストーリーの流れは良かったのであるが、三つ巴となった途端に「漫画的」になってしまう。例えば、ジェイソンに捕まっていたミナが酔っ払った勢いで「酔拳」のようにジェイソンの手下たちを次々となぎ倒すのだが何故か結局捕まったままなのである。かなりの銃弾が飛び交ったはずなのだが、死体が転がっているようなシーンもなく、コメディーと悪ふざけの境が曖昧でしらけてしまうのである。それは実写と漫画の演出の使い分けというものが分かっていないとも言える。


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『道』(1954年)

2020-09-27 00:40:03 | goo映画レビュー

原題:『La Strada』
監督:フェデリコ・フェリーニ
脚本:フェデリコ・フェリーニ/トゥリオ・ピネリ
撮影:オテロ・マルテリ
出演:アンソニー・クイン/ジュリエッタ・マシーナ/リチャード・ベイスハート
1954年/イタリア

ジェルソミーナの「一途さ」について

 仕事の手伝いとして引き取られた姉のローザが亡くなったために再び家族の前に現れた旅芸人のザンパノにジェルソミーナが付いて行った理由は4人の妹のためにお金が必要だったことと家族の食い扶持を減らすために母親に乞われたためだった。
 文句を言うと暴力を振るうザンパノからジェルソミーナが逃れるチャンスは何度かあった。一時的に世話になっていたサーカス団について行くこともできたし、修道院に置いてもらうことも可能だったのだが、結局、ジェルソミーナはザンパノについて行き、ザンパノが犯した殺人を目撃してから精神を病んでしまうのである。これは映画として初めて描かれた「ストックホルム症候群(Stockholm syndrome)」ではないだろうか?
 因みにジェルソミーナの設定年齢が分からないのだが、ジェルソミーナを演じたジュリエッタ・マシーナはこの時33歳である。


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「Whenever You Call」 ARASHI 和訳

2020-09-26 00:54:58 | 洋楽歌詞和訳

ARASHI - Whenever You Call [Official Music Video]

 嵐の「Whenever You Call」を和訳してみる。

「Whenever You Call」 ARASHI 日本語訳

僕たちが一緒にいる必要はないし
何なら遠く離れてもいられるよ
僕は君に永遠にこのことを約束するんだ
僕はいつでも君を暗闇から抜け出せる光になるつもりだから

いつだって
どこだって
この世界に僕の行く手を阻めるものなんかないのだから

僕は君の居場所ならどこでも走って行けるんだ
君に対する僕の愛が変わることなんかあり得ないのだから
僕は君の居場所ならどこでも走って行けるよ
君が呼ぶならばいつでも
君が僕の名前を呼ぶならばいつでもね

それが簡単なことだと言ったことはないけれども
君への愛情は戦うだけの価値がある愛だ
僕は昼も夜も永遠に君の心のために戦うつもりなんだ

いつだって
どこだって
この世界に僕の行く手を阻めるものなんかないのだから

僕は君の居場所ならどこでも走って行けるんだ
君に対する僕の愛が変わることなんかあり得ないのだから
僕は君の居場所ならどこでも走って行けるよ
君が呼ぶならばいつでも
君が僕の名前を呼ぶならばいつでもね

君が心配する必要はないよ
僕は急いでそこに駆け付けるから
落ちそうになる君を僕が受け止めるから
僕は自分の全てを捧げることを約束するよ
どうか僕を君が呼び求める人でいさせて欲しい

僕は君の居場所ならどこでも走って行けるんだ
君に対する僕の愛が変わることなんかあり得ないのだから
僕は君の居場所ならどこでも走って行けるよ
君が呼ぶならばいつでも
君が僕の名前を呼ぶならばいつでも
君が僕の名前を呼ぶならばいつでもね

 何故、今年で活動を休止する嵐がいまさらブルーノ・マーズ(Bruno Mars)に楽曲を

提供してもらうことになったのか寡聞にして知らないが、アメリカビルボードのメインシングルチャート

「ホット100」でBTSが1位になったことを意識してのことなら、「年寄りの冷や水」感がなくもない。

BTSの「ダイナマイト」を見てみれば、ダンスの切れもユーモアも全く歯が立たない状態

であることは一目瞭然なのである。本当は60年近くも実績と経験を持つジャニーズ事務所が

頑張れば先にジャニーズ所属のタレントがアメリカシングルチャート1位を獲るべきだったはずで、

若手のSixTONES(ストーンズ)やSnow Man(スノーマン)を「アメリカ仕様」にすればいいのだが、

最近ずっとジャニーズ事務所はゴタゴタしているからそのような余裕さえないのかもしれない。

BTS (방탄소년단) 'Dynamite' Official MV


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『チィファの手紙』

2020-09-25 00:59:58 | goo映画レビュー

原題:『你好,之华』
監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
撮影:神戸千木
出演:ジョン・シュン/チン・ハオ/ドゥー・ジアン/チャン・ツィフォン/ダン・アンシー
2018年/中国

「何者」かになる手段について

 『ラストレター』(2020年)と同じ物語なのだが、本作の方が先に制作されている。
 『ラストレター』の演出の甘さは既に書いた通りで、本作においても例えば、小説家でネットの記事を執筆しているイン・チャンがユアン・チィナンの実家に手紙を送り、それをチィナンの娘のムームーとチィナンの妹のチィファの娘のサーランがチィナンを装ってチャンに返信するのであるが、ムームーとサーランがどのようにして上海のチャンの住所を知り得たのかよく分からないのである。
 しかし『ラストレター』では分からなかった本作の主題は分かったような気がする。ムームーの弟のチェンチェンは祖母(チィファの夫のジョウ・ウェンタオの母親)をマッサージしている時に祖母がぎっくり腰になり入院沙汰になってしまう。その事に動揺したチェンチェンは母親が亡くなったばかりということもあり家出をしてしまい、警察の世話になるのだが、要するにイン・チャンもチィファの夫だったジャン・チャオもチェンチェンでさえ女性に対して「何者」かになろうとして失敗しているのである。
 そしてラストにおいて朗読されるイン・チャンが書いた小説『チィナン』とチィナンが2人の子供に残した遺書にも書かれていた文章は中学校卒業時にイン・チャンとチィナンが共同で書いた答辞で、つまり「何者」かになれるのは決して一人ではなく協調することで初めて成り立つことなのであるということが本作を通じてようやく分かった次第である。


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『宇宙でいちばんあかるい屋根』

2020-09-24 00:30:07 | goo映画レビュー

原題:『宇宙でいちばんあかるい屋根』
監督:藤井通人
脚本:藤井通人
撮影:上野千蔵
出演:清原果耶/桃井かおり/伊藤健太郎/吉岡秀隆/坂井真紀/水野美紀/山中崇
2020年/日本

数々の「超越」を巡って

 主人公の大石つばめは14歳の中学生だが、父親の敏雄の再婚相手の麻子との間に妹が誕生することで、一人だけ仲間外れにされるのではないかと不安に陥っている。つばめが通う書道教室があるビルの屋上にはもう一人の主人公である「星ばあ」が勝手に住み着いているのだが、彼女は逆に最愛の孫に会えないことを悩んでいる。
 「血」の繋がりをベースにつばめの「視線」の上下がストーリーに深みを与えているのだが、それは「血縁」という問題を越えて生死の問題へとつながっていく。
 興味深い点は2人ともスマホを使いこなしているにも関わらず、最後は糸電話で言葉を交わし、ラストはそれまで色鮮やかな画面で映されたビルの屋上からの街並みがつばめの描いた水墨画で終わるところである。限りなく余計なものを削いだ「音」と「像」こそが血を越えた絆にとって大切なものだと気づかせてくれるのである。


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『リスタートはただいまのあとで』

2020-09-23 00:59:59 | goo映画レビュー

原題:『リスタートはただいまのあとで』
監督:井上竜太
脚本:佐藤久美子
撮影:中澤正行
出演:古川雄輝/竜星涼/村川絵梨/佐野岳/中島ひろ子/蛍雪次朗/甲本雅裕/三浦理奈
2020年/日本

そもそも共感できない主人公の性癖について

 主人公の狐塚光臣は高校卒業後に故郷の長野県から東京に出て10年働いていたのであるが、仕事の上で上司と意見が合わずに退職して故郷に戻って来る。仕事が見つかるまで同い年の熊井大和の実家の農園を手伝うことになるのだが、雇われている身でありながら最初はやる気を見せず、寝坊で遅刻をする光臣の仕事に対する姿勢に違和感がある。高校を卒業したばかりならばそういうこともあるだろうが、10年間も東京で社会人として暮らしていながら、全く経験が役にたっていないのである。
 しかしその後は心を入れ替えて仕事に熱心に打ち込むのだから、キャラが完全にブレているのである。東京で光臣がどのような人間関係、特に女性関係を築いていたのかという描写もなく、ここにはBL以前の問題があるように感じる。


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『窮鼠はチーズの夢を見る』

2020-09-22 00:10:59 | goo映画レビュー

原題:『窮鼠はチーズの夢を見る』
監督:行定勲
脚本:堀泉杏
撮影:今井孝博
出演:大倉忠義/成田凌/吉田志織/さとうほなみ/咲妃みゆ/小原徳子/小柳友/国広富之
2020年/日本

「主体性」の欠如の罪について

 主人公でサラリーマンの大伴恭一の人生は言われるがままで、2年付き合った知佳子と何となく結婚したのだが、押しに負けたためなのか井手瑠璃子と不倫の関係にあり、そんな時に興信所の調査員として大学の2年後輩の今ヶ瀬渉が現れるのである。
 その後、大学時代のサークル仲間で交際していた夏生と再会し、恭一と渉の関係を怪しみ、自分が恭一と別れた原因が渉の企みであることを知って、無理やり渉と別れさせたものの、ホテルに行っても恭一は勃起することなくそのまま別れてしまうのである。さらに会社の部下の岡村たまきと婚約するのだが、渉と関係を断つことができず、恭一はたまきと別れることになる。
 流されやすい恭一の性格は罪なもので、芯が強ければどの女性も悲しませる必要はなかったはずで、あるいは人間に興味が無いのかもしれないが、逆に言うならば渉の愛情が強烈だからこそ恭一は愛を知ることができたのかもしれない。
 『オルフェ』(ジャン・コクトー監督 1950年)が引用されているのだが、ゲイの渉が告白してノンケの恭一と寝る直前に渉が見ていたシーンの字幕が「これからすることを理解しようとしないで」というもので、渉の恭一に対するモノローグのように受け取れるし、そもそもジャン・コクトーも主演のジャン・マレーもゲイであり、引用するならばこれくらいの芸を見せてもらいたいと思う。


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『ソワレ』

2020-09-21 00:38:27 | goo映画レビュー

原題:『ソワレ』
監督:外山文治
脚本:外山文治
撮影:池田直矢
出演:村上虹郎/芋生悠/岡部たかし/康すおん/江口のりこ/石橋けい/山本浩司
2020年/日本

無理強いの孤独の旅について

 映像の美しさは申し分なく演出も素晴らしく、例えば、夜中に部屋の中で向かい合っている主人公の岩松翔太と山下タカラの背後の壁に映る2人の影が本人たちと関係なく戯れるシーンなどシャレていると思う。
 ところがストーリーの方は考えれば考えるほど理解できなくなってくる。タカラは実の父親に性的暴力を受けていた。ある日、その父親が出所してくるという通知をタカラは受け取り、その後2020年7月11日に父親がタカラが住むアパートにやって来て、再び性的暴力を受けるのだが、たまたまタカラを迎えに来た翔太が発見してタカラを救うものの、タカラが父親の腹部をハサミで刺してしまい怪我を負わせる。それを見た翔太がタカラを連れて逃走をはかるのだが、どう考えてもタカラは被害者なのだから逃げる必要はなく、せめて電車に乗るあたりでタカラの部屋で父親が刺されているのだからどうやっても逃げきれないことに冷静になって気がついてもいいと思う。逃げなければならないとするならば、翔太は高齢者を狙ったオレオレ詐欺の「受け子」をしているために警察とは関わりたくないであろうから、それはタカラではなく翔太の都合なのである。
 しかし翔太が関わっている詐欺グループが摘発されたのは2人が逃走をはかった後で、辻褄が合わないし、ラストは翔太が所属している劇団で翔太が練習に参加しており、つまり詐欺に関してバレなかったということになり、タカラが姿を現さないのは捕まったということを暗示させ、ますます訳が分からないのである。引用されている「安珍・清姫伝説」と物語が上手くかみ合っていないし、オチが秀逸なだけに惜しいと思う。


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