原題:『POP IN Q』
監督:宮原直樹
脚本:荒井修子
撮影:中村俊介
出演:瀬戸麻沙美/井澤詩織/種崎敦美/小澤亜李/黒沢ともよ/羽佐間道夫/小野大輔/島崎和歌子
2016年/日本
本当の意味で「エピソード0」の作品について
舞台が高知県というところからシブい。主人公の小湊伊純は中学3年生で卒業と同時に東京に引っ越すことになっているのだが、所属していた陸上部で後輩の深町美晴に相変わらずタイムを計ってもらっている。卒業式に出席するのかしないのかためらっているところも伊純の地元に対する心の葛藤が上手く描かれている。
同じ頃、同い年の日岡蒼や友立小夏や大道あさひや都久井沙紀もそれぞれの「壁」にぶつかっていた。例えば、蒼は勉強ばかりの学校生活に嫌気がさしており、同級生がサイン帳を差し出しても断ってしまう有様なのであるが、4人の様子は伊純ほど詳細に描かれてはいない。
そんな彼女たちが「時のカケラ」を拾ってワープしてきた「時の谷」は、ポッピン族が生息しており、彼女たちそれぞれに「同位体」と呼ばれるポッピン族が付き、ダンスをして世界を救って欲しいと懇願される。
5人でダンスの練習をしていたところに「沙紀の未来」と名乗るキャラクターが現れ、沙紀は敵方に回ることになるのだが、これが「既に大人たちに決められた未来」とするならば中学生にとっては「敵」であるという暗示であろう。実際に、「沙紀の未来」は消えてしまいクライマックスで5人は一緒にダンスを踊ることになる。
そして「時の谷」から無事に戻ってこれた伊純は両親と祖父に祝福されながら卒業式を迎えたのであるが、このありきたりの物語に驚かされるのはエンドクレジットが終わった後に訪れる。彼女たちは東京の同じ高校に進学していることに始業式の最中にお互い知ることになるのであるが、それは観客も同じである。つまり本作はこれから始まるメインの高校生活を舞台とする物語のほんの序章にすぎないのである。だから本当の意味で「エピソード0」である本作の評価は続編の出来次第ということになるのではあるが、ある意味これほど驚かされた作品は今年観た映画の中で一番である。