MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『劇場版 進撃の巨人 前編 紅蓮の弓矢』

2014-11-30 00:08:07 | goo映画レビュー

原題:『劇場版 進撃の巨人 前編 紅蓮の弓矢』
監督:荒木哲郎
脚本:小林靖子/瀬古浩司/高木登
撮影:山田和弘
出演:梶裕貴/石川由依/井上麻里奈/谷山紀章/小林ゆう/下野紘/逢坂良太
2014年/日本

フランシスコ・デ・ゴヤと『進撃の巨人』の関係について

 かつてフランシスコ・デ・ゴヤ(Francisco José de Goya y Lucientes)の作とされた『巨人 (El coloso)』(1808-12年)が堀田善衛に『ゴヤ』(1974-77年)という長編評伝を書かせたように、21世紀になり諫山創に『進撃の巨人』を描かせたのかもしれない。堀田の評論がゴヤそのものよりもヨーロッパを中心とした文明批評であったように、『進撃の巨人』の舞台もヨーロッパのようで、さしずめ『精神病棟の中庭(Corral de locos)』(1794年)で『我が子を食らうサトゥルヌス(Saturno devorando a un hijo)』(1819-23年)が描かれているように見えるのは偶然なのだろうか? 巨大なスクリーンで観るからこそ巨人は映えるはずなのだから後編を楽しみに待ちたいと思う。

 
『巨人』


『精神病棟の中庭』


『我が子を食らうサトゥルヌス』


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『日々ロック』

2014-11-29 00:05:35 | goo映画レビュー

原題:『日々ロック』
監督:入江悠
脚本:入江悠/吹原幸太
撮影:谷川創平
出演:野村周平/二階堂ふみ/前野朋哉/蛭子能収/毬谷友子/竹中直人
2014年/日本

ロックの「リアリズム」について

 『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』(犬童一心監督 2014年)は当初、売れない漫画家と売れている漫画家の対比が描かれるはずだったと思うが、おそらく主人公の諦念でテーマそのものが立ち消えとなってしまった。漫画家をミュージシャンに変えて同じテーマに挑んだ作品こそ正にタイトル通りに『日々ロック』であろう。
 いじめられても邪魔をされてもロックだけは止めない主人公の日々沼拓郎が作る曲は、当然のことながら日常の鬱憤を晴らすような歌詞のために売れることはなく、生活費に困った挙句、「ザ・ロックンロールブラザーズ」の草壁まもると依田明の2人のメンバーと共に「モンスターGOGO」というライブハウスで住み込みで働きながらバンド活動をしている。一方、宇田川咲は流行りのEDMの楽曲が売れている、例えば、きゃりーぱみゅぱみゅのようなトップアイドルであるが、おじの松本猛が経営している「モンスターGOGO」を訪れた際に、たまたま耳にした「ザ・ロックンロールブラザーズ」の曲に何故か心を打たれる。
 しかし咲を担当している敏腕プロデューサーの風間泉の心には拓郎の作る曲が全く響くことがない理由は、咲が癌を患っていることが大いに関わってくる。つまりポップミュージックというものが、大衆を相手に楽しませる役割を持つものであるならば、ロックミュージックは「私小説」であり、悪口や自虐をネタにしたような歌詞は決して大衆受けをすることはないが、金銭面を度外視し、月並みの生活さえ諦め、マジと書いて本気で取り組んでいるからこそ人生の岐路立たされて落ち込んでいる人たちの心に彼らの勇気が伝わるのである。
 ロックミュージシャンのグダグダの日常が描かれている本作が面白いわけがないのであるが、それがロックなのであり、本作に村上春樹のようなエンターテインメント小説を期待してはいけない。西村賢太のような私小説を読むような覚悟を持って観るべきものであるが、さすがに「犬レイプ」は「犬レイブ」に変更されていた。


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『MIRACLE デビクロ君の恋と魔法』

2014-11-28 00:47:30 | goo映画レビュー

原題:『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』
監督:犬童一心
脚本:菅野友恵
撮影:蔦井孝洋
出演:相葉雅紀/生田斗真/榮倉奈々/ハン・ヒョジュ/劇団ひとり
2014年/日本

 役作りよりもタレントのキャラを優先させる作品について

 主人公の書店員の山本光は漫画家になることを夢見ていたが、光の作品はコミックマーケットでも売れずに捨てられてさえいる有様だった。光の作品はセリフが少なく優しいタッチの「癒し系」で、面白みには欠けるのであるが、かと言ってサンタクロースの負の部分を擬人化させた「デビルクロース」を主人公としてビラの形式で光が描いた『デビクロ通信』が面白いかといえばそうでもなく、まるで相田みつをの詩の漫画化でしかないのである。
 だから光の友人の北山一路が作品を1000万部以上売り上げて人気漫画家として成功した代償として、商業ベースに乗せられて自分が描きたいものを描くことができないことに葛藤していても、やはりゴミとして捨てられてしまう光の作品よりも厚遇されており、贅沢な悩みというほかにない。
 それでは何故光の作品には魅力がないのかを考えるならば、彼には誰かのために頑張るという愛情が欠落しているからだと思う。北山は恋人のテ・ソヨンのために描いていたし、ソヨンは北山を支えるために献身していたし、高橋杏奈は光のために陰で奔走していたことを勘案するならば、光はただ自分のためだけに描いていたのであり、その志が低さが作品のクオリティーを高めないのである。
 クライマックスを注視するならば、確かに光はパリに旅立とうとしている安奈を追って空港まで出向き、雪のために出立が遅れていたために幸運にも安奈と再会できて、安奈に愛の告白をするのではあるが、何故か光は完全な受け身で安奈から光にキスをして抱きしめるだけで、光の積極さは感じらず、ラブストーリーとしての痛快さがなのである。
 そのまま終わってしまったために、その後、光が漫画家として大成したのかどうかは描かれていない。おそらく書店員として地道に人生を歩んでいくことになるのであろうから、それはそれでいいのであるが、この光の「草食さ」は個人的に『人間失格』(荒戸源次郎監督 2010年)の主人公の大庭葉蔵を思い出させる。つまり山本光というキャラクターよりも「嵐」のメンバーの相葉雅紀のキャラクターが優先され、女性ファンの気持ちを配慮した結果、榮倉奈々とのからみが不自然になっているのだと思うのであるが、その大庭葉蔵を演じていた生田斗真がハン・ヒョジュに対して意外と積極的ではあった。しかしそれは相葉と比較した上での話であり、女性ファンを意識したラブシーンであることに変わりはない。
 因みに「人は、運命を避けようとしてとった道で、しばしば運命と出会う(On rencontre sa destinée souvent par des chemins qu’on prend pour l’éviter.)」というラ・フォンテーヌ(Jean de La Fontaine)の真意は、「避ける」という行為自体が運命に織り込み済みなのだから、運命は避けようがないということである。
 ジョージ・ハンソン(George Hanson)の『アフリカ(Africa)』という写真集の現物を見てみたいと検索してみたのであるが、どうやら架空のものらしい。


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「汚れ」に堕ちたイメージの代償

2014-11-27 00:07:10 | 邦楽

【紅白】HKT・乃木坂当落の決め手は?(ORICON STYLE) - goo ニュース
乃木坂、紅白落選…生田「進むしかない」(日刊スポーツ) - goo ニュース
乃木坂・生田、落選に「人生に残る悔しさ」(ORICON STYLE) - goo ニュース
乃木坂46さん『何度目の青空か?』の歌詞

  基本的にNHKの紅白歌合戦の出場歌手にはそれほど興味はないのであるが、

乃木坂46が落選したことには驚いた。今年4月に発売された「気づいたら片想い」は名曲

だと思うし、7月発売の「夏のFree&Easy」も悪くはなく、10月発売の「何度目の青空か?」

は傑作と呼べるクオリティーの高さで、生田絵梨花の気持ちが痛いほどよく分かる。特別な

原因があるとするならば、それは生田の問題ではなく、やってしまったことは仕方がない

としても、清楚だったイメージが完全に崩れてしまった後に年末までに新たな不祥事が

起こる可能性を勘案するならば、乃木坂46よりも、対処の仕方を熟知している指原莉乃が

率いるHKT48の方が安全とは言えるのだが、今年最高傑作が紅白で流れないなんて


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『紙の月』

2014-11-26 00:40:39 | goo映画レビュー

原題:『紙の月』
監督:吉田大八
脚本:早船歌江子
撮影:シグママコト
出演:宮沢りえ/池松壮亮/大島優子/田辺誠一/小林聡美/近藤芳正/石橋蓮司
2014年/日本

善意で得られる「快感」について

 「わかば銀行」で契約社員として勤務する主人公の梅澤梨花が、自身の顧客の預り金に手をつけた原因は、皮肉なことに通っていたカトリック系の学校の教えだった。当時、梨花の学校では大洪水で被害を受けていたタイの子供たちのために募金を集めており、そのお礼の手紙を受け取ったりと交流があったものの、熱が冷めてしまって誰も募金をしなくなった頃に、これではいけないと思った梨花が父親の財布から抜き取った5万円を全部募金箱に入れてしまう。これを問題視したシスターは募金を中止してしまうのであるが、善意の寄付を中止してしまうことに梨花は納得できない。この善意で得られる「快感」を大人になって梨花は再び思い出すのである。
 浮気相手の平林光太が大学の学費を払えないで困っていることを知った梨花は光太の祖父の平林孝三から預かった200万円をくすねて光太に渡す。梨花にはお金が有り余っている人がお金に困っている人に施すことが悪いことだと思えないのである。偽物でも本物に見えればいいと言ったり、何を買うのか忘れてしまうようなお金持ちが余計なお金を持っていても仕方がない。「ケチ」や「ボケ」がお金を貯め込んでいるよりも、必要としている人に回せばいいというのが梨花の考え方なのである。
 おそらく5万円をくすねた際に、父親から叱られなかったことが不幸の始まりだったのかもしれないが、「悪銭身につかず」と言われるように、光太はいつの間にか大学を辞めており、かといって定職に就くこともなく2人は梨花の「善意の快楽」から抜け出せなくなる。
 しかし話はここで終わらない。上手く日本から脱出した梨花がタイの市場を歩いていると、かつて手紙のやり取りをしていた顔に大きな傷を負った男性と遭遇する。立派な大人になって市場で働いていた彼を見た梨花は自分のしたことが間違っていなかったことを確信するのであるが、地元の警官を見つけると足早に去っていく。この善意で得られる「快感」に狂っている宮沢りえの演技が素晴らしい。
 エンドロールを白地にしてヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコの「Femme Fatal」を流すB級感に監督のセンスの良さを感じる。


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『マダム・マロリーと魔法のスパイス』

2014-11-25 00:06:31 | goo映画レビュー

原題:『The Hundred-Foot Journey』
監督:ラッセ・ハルストレム
脚本:スティーヴン・ナイト
撮影:リヌス・サンドグレン
出演:ヘレン・ミレン/オーム・プリー/マニッシュ・ダヤル/シャルロット・ルボン
2014年/アメリカ

鑑賞後に必ず物足りなさを感じる巨匠の作品について

 例えば、マダム・マロリーがオーナーを務めるミシュラン1つ星のフレンチ・レストラン「ル・ソル・プルルール(=シダレヤナギ)」では有力者たちには評判の良い鳩(=平和の象徴)の肉の料理を提供しているのであるが、向かい側に出店した「メゾン・ムンバイ」の創業者のカダムに鳩肉を買い占められて、代わりにチキン(=臆病者)料理を提供することになるというギャグや、「いつまで女王様気取りなんだ」と言われるマダム・マロリーのシーンは彼女の役を演じるヘレン・ミレンが『クィーン』(スティーヴン・フリアーズ監督 2006年)でエリザベス2世を演じているから成り立つギャグで面白いと思う。当初はカダム一家の次男ハッサンと仲が良かったマルグリットが、ハッサンが「ル・ソル・プルルール」に雇われることになった辺りから、ハッサンに素っ気なくなった理由が、自分のライバルになるというよりも、ハッサンの料理人としての実力を知っていたがために、すぐに大手のレストランに引き抜かれることが分かっていたからという演出など冴えたところもあるが、最初にカダム一家がインドからイギリスに移住した原因は贔屓にしている議員と対立していた議員の抗争に巻き込まれて店舗を失ったことがきっかけで、フランスで再起をはかろうとしながらマダム・マロリーと「冷戦状態」になる原因がパパの頑固さという点にストーリーのつなぎの悪さを感じる。
 あるいは雇っているシェフの一人が仲間2人と「メゾン・ムンバイ」に放火した後に、マダム・マロリーがフランスの国家である「ラ・マルセイエーズ」の詞を引用して、シェフを解雇してしまうのであるが、詞の内容をよくよく鑑みるならば寧ろシェフの方に分があると思う。
 ラッセ・ハルストレムは巨匠と言ってもいい監督だと思うが、最近の作品には鑑賞後に必ず何らかの物足りなさを感じてしまう。


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『デビルズ・ノット』

2014-11-24 00:23:56 | goo映画レビュー

原題:『Devil's Knot(悪魔の集団)』
監督:アトム・エゴヤン
脚本:ポール・ハリス・ボードマン/スコット・デリクソン
撮影:ポール・サロシー
出演:コリン・ファース/リース・ウィザースプーン/デイン・デハーン
2013年/アメリカ

悪魔に関わりたがる者たちについて

 1993年のアメリカ合衆国アーカンソー州ウェスト・メンフィスで起こった8歳の男児3人の殺人事件「ウェスト・メンフィス3」を基にした作品である。ヘビーメタルとオカルト映画をこよなく愛する3人の若者が猟奇的殺人事件の容疑者として疑われることになったのであるが、この「シナリオ」に疑問を呈して独自に捜査を始めた主人公の私立探偵のロン・ラックスには見逃せない動機があった。彼の仕事場にはロバート・ジョンソンのポスターが貼ってあり、「十字路で悪魔に魂を売り渡して、その引き換えにテクニックを身につけた」という神話(「Cross Road Blues」)を持つミュージシャンが好きな者としては、ブルースの発展形のヘビーメタルを否定されることは我慢ならなかったはずである。
 しかし皮肉なことに弁護士資格を持っていないロン・ラックスは法廷で発言することが許されず、博士号を「通販」で購入した「オカルト専門家」のデイル・グリフィスが法廷で自分の意見を述べられるのは、当時のオカルトに対する社会的スタンスが定まっていない何よりの証拠であろう。
 結局、犠牲者の一人であるスティーブ・ブランチの継父であるテリー・ホッブスが疑われたが、テリーは自殺してしまい、レストランの女子トイレで泥と血にまみれて座っていた黒人男性は見つからないままで、目新しい情報はないのであるが、法廷劇としては最後まで緊張感が途切れることはない。


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『ショート・ターム』

2014-11-23 00:13:09 | goo映画レビュー

原題:『Short Term 12』
監督:デスティン・ダニエル・クレットン
脚本:デスティン・ダニエル・クレットン
撮影:ブレット・ポウラク
出演:ブリー・ラーソン/ジョン・ギャラガー・ジュニア/ケイトリン・デヴァー
2013年/アメリカ

人形と金魚とタコを巡る物語について

 心を病んでしまった子供たちをケアする短期保護施設では些細なことが大事になる。例えば、サミーはカウンセラーから人形を没収されたことで落ち込み、18歳になり施設を出なければならないマーカスはその直前に飼っていた金魚が死んだことが原因で手首を切って自殺を図ってしまう。あるいは新入りのジェイデンは実の父親から暴行されていることを言うことができず、おとぎ話としてサメと友達でいたいタコが自分の脚を食べさせることでサメとの友情をつなぐことを自分の今の状況として例えて、かろうじて施設の主任であるグレイスに伝えることができる。施設長のジャックが気がつかずにジェイデンを彼女の父親の元に返してしまったことに対して、グレイスが大反対してわざわざ迎えに行った理由は、グレイス本人も父親に暴行されて妊娠中絶をした過去を持っていたからである。
 だからラストでアメリカ国旗をマントにしてサミーが施設から走り出し、グレイスとメイソンとネイトが追いかける、上のポスターで描かれているような場面は、病んだアメリカそのものを追いかけているように見え、最後まで緊張感が途切れることがない佳作になっていると思うのである。


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『天才スピヴェット』

2014-11-22 00:06:55 | goo映画レビュー

原題:『The Young and Prodigious T.S. Spivet』
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
脚本:ジャン=ピエール・ジュネ/ギョーム・ローラン
撮影:トマ・ハードマイアー
出演:カイル・キャトレット/ヘレナ・ボナム=カーター/ジュディ・デイヴィス
2014年/フランス・カナダ

ポップな表現に隠されて見逃される内容について

 ジャン=ピエール・ジュネ監督は『アメリ』(2001年)の印象が強すぎて、そのポップな独特の映像に目を奪われて本作の内容の理解に難をきたしているように思う。
 最初に指摘しておきたいことは、フランスの映画監督がアメリカで製作した『エイリアン4』(1997年)はともかく、何故アメリカ西部を舞台とした英語劇をフランス・カナダの資本によって製作したのかということである。もちろん原作がアメリカ人作家のライフ・ラーセンの『T・S・スピヴェット君 傑作集(The Selected Works of T.S. Spivet)』を元にしているということはあるだろう。しかし10歳の天才科学者の主人公のT・S・スピヴェットと彼の周囲の人物たちのおもしろおかしな言動だけに目を奪われてしまっては、テレビ出演時に、スピヴェットが本心を吐露しようとした際、大人たちに都合の良いように言いくるめられる状態と変わらなくなってしまうだろう。
 本作のテーマはスピヴェットと双子の弟のレイトンの間で起こった銃の暴発事故によるレイトンの死である。スピヴェットが約400年ももつ「永久機関」を発明した理由は、10年も生きられなかった弟を思ってこそなされたものであり、西部開拓時代から続く銃社会アメリカの暗部をあからさまに示そうとしたはずである。しかし残念ながらこのようなテーマにアメリカが資本を出すわけがなく、フランス人監督がフランス・カナダ資本で製作しなければならないことをもっと深刻に考えるべきであろう。


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『小野寺の弟・小野寺の姉』

2014-11-21 00:57:32 | goo映画レビュー

原題:『小野寺の弟・小野寺の姉』
監督:西田征史
脚本:西田征史
撮影:相馬大輔
出演:向井理/片桐はいり/山本美月/麻生久美子/大森南朋/及川光博
2014年/日本

 敢えて責任を引き受ける勇気について

 主人公の33歳で独身の小野寺進は、過去に交際していた祖父江好美とは進の姉の40歳の独身のより子と同居することを巡って喧嘩して別れてしまい、早くに両親を亡くし、姉に世話になっていたこともあり、より子が結婚するまでは自分は結婚できないだろうと女性との交際には消極的だった。
 進は好美と別れた原因を姉には言っていない。ラストにおいてもより子は自分が浅野暁にフラれてしまったことを告げるのであるが、進はもたもたしていた自分がチャンスを逃して岡野薫にフラれたことは言わない。もちろんどちらもお互いに気を使っているのではあるが、年下ではあっても男性の方が「責任」を引き受けるというモラルに好感が持てる。
 以前から思っていたのであるが、向井理とお笑いコンビ「オードリー」の若林正恭が似ていると指摘している人がいてようやく溜飲が下がった(松井玲奈『週刊SPA!』「ひとりぼっちの映画祭 19」)。


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