原題:『検察側の罪人』
監督:原田眞人
脚本:原田眞人
撮影:柴主高秀
出演:木村拓哉/二宮和也/吉高由里子/平岳大/八嶋智人/大倉孝二/松重豊/山崎努
2018年/日本
「不良」から「正義」という「振り幅」の効果について
予告編を見た限りではエリート検事の最上毅と新人検事の沖野啓一郎の法律の解釈を巡る対立かと思いきや、実際は2017年現在から23年前に北海道の大学の学生寮において家族ぐるみで付き合いがあった中学生の久住由季の殺害に対する復讐と、第二次世界大戦時に起こったインパール作戦に巻き込まれた祖父を持つ最上の「反戦思想」による確信犯としての犯行が展開され、最上の怨念の度合いは友人の丹野和樹の妻の怪しい宗教団体の存在も加わってもはや今どき珍しく横溝正史レベルである。
主役を演じた2人の熱演もあって画面には終始緊張感がみなぎって見応えはあるのだが、長編小説を2時間で描いたためなのかわかりにくいという難点はある。
ところで個人的に気になるのは木村拓哉と二宮和也の関係ではなく、木村拓哉と福山雅治の関係である。木村は前作『無限の住人』(三池崇史監督 2017年)で、福山は前々作『SCOOP!』(大根仁監督 2016年)で「不良」を演じており、木村は本作で検事を演じており福山は前作『三度目の殺人』(是枝裕和監督 2017年)で弁護士を演じているのである。この符合が興味深く、『SCOOP!』の原作が本作の監督の原田眞人という偶然もあるのだが、これが広告代理店のリサーチによるものならば2人が「不良」を演じて興行的に失敗した作品は一体何のために製作されたのかよく分からない。
作中で使用されていたダイナ・ワシントンの「クライ・ミー・ア・リバー」を和訳しておきたい。
「Cry Me a River」 Dinah Washington 日本語訳
あなたは今孤独だと言う
一晩中泣いていたとも言っていた
それならば私の前で泣いてもいいのよ
流れる涙が川のようになるくらいに
あなたを巡って私は散々泣かされてきたのだから
あなたは今誠実でなかったことを申し訳ないと謝る
今更何なの?
ただ私の前で泣けばいいのよ
流れる涙が川のようになるくらいに
あなたを巡って私は散々泣かされてきたのだから
あなたは流す涙も無いくせに
私を無我夢中にさせた
憶えてるの?
私はあなたが言ったこと全てを憶えている
愛などゲスの極みだとあなたは言った
私とはもう赤の他人だとあなたは言った
今のあなたは私のことを愛していると言う
それならばそれを証明するために
頑張って私の前で泣いてみせてよ
流れる涙が川のようになるくらいにあなたが泣くところを私は見てみたい
だって私はあなたのために泣くことに飽きてしまったのだから
Dinah Washington - Cry Me a River