原題:『グッドモーニングショー』
監督:君塚良一
脚本:君塚良一
撮影:栢野直樹
出演:中井貴一/時任三郎/長澤まさみ/志田未来/濱田岳/林遣都/池内博之/松重豊/吉田羊
2016年/日本
「踊らない」大捜査線について
主人公の澄田真吾は朝のワイドショー「グッドモーニングショー」のメインキャスターを務めているが、かつて報道番組の人気キャスターの地位からある災害現場の現場リポートの「ヤラセ疑惑」から「左遷」されたような立場で、視聴率次第では後がない状況だった。
いつものように番組がスタートするはずだったが、直前に起こった都内のカフェに銃を持った男が人質を取って立てこもっている事件により予定していたネタを飛ばして番組が始まるのであるが、その番組冒頭に時間は告げるのに誰も日にち言わないところに違和感を持つ(おそらく2015年9月8日だと思うが)。
犯人の西谷颯太の要求で澄田が現場に呼ばれることになる。そして西谷のさらなる要求で澄田が外に出て謝罪することになるのだが、さすがにその生中継を中断して報道部が割り込むことはリアリティーに欠ける。さらに『踊る大捜査線』の脚本を手掛けた君塚良一監督にしては防弾チョッキと耐爆スーツを着た澄田と警視庁の黒岩哲人たちの、西谷の銃と爆弾に対する防御意識が甘いように見える。
西谷は澄田に向かってプレゼントだと言って澄田と同じ番組のサブキャスターの小川圭子が澄田とレストランらしき場所でテーブルを共にしている写真がばらまかれ、それがカメラに映ってしまうのであるが、例えば、『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』(山口雅俊監督 2016年)において弁護士の都陰亮介の浮気現場を撮った写真と比べてみるならばそれが澄田の浮気の証拠になるのかと疑問を生じさせる程度のものである。
いずれにしても全体的に演出が甘く、特に同じ題材を扱った『マネーモンスター』(ジョディ・フォスター監督 2016年)の後に観るとチープな感じが際立つ。『マネーモンスター』でさえ傑作と呼べるものではないのだけれど。