原題:『Moonlighting』
監督:イエジー・スコリモフスキ
脚本:イエジー・スコリモフスキ
撮影:トニー・ピアース・ロバーツ
出演:ジェレミー・アイアンズ/ユージーン・リピンスキ/イジー・スタニスラフ
1982年/イギリス
「真剣さ」と「悪ふざけ」の境界線が曖昧な映画監督について
1981年12月5日。主人公のノヴァクと3人のポーランド人たちはワルシャワからロンドンに到着する。車の取り引きを目的に一ヵ月滞在するというのが表向きの滞在目的だったが、実はロンドンにある「ボス」の別宅を改修することが目的だった。
仕事は順調にはかどっているように見えたが、12月13日、ポーランド全土に戒厳令が発令さたことをノヴァクは店先のテレビで知り、翌日の新聞でも確認するのであるが、3人には伝えないまま仕事を続けさせる。実はノヴァクは「連帯(独立自主管理労働組合)」が好きではなく、街角に貼ってある「連帯」のポスターを破り捨てている。
やがてポーランドから持って来ていた資金が枯渇してしまい、食料だけでも確保するためにノヴァクはレシートを使って食料をスーパーから盗むことを思いつくのであるが、ついに女性マネージャーに見つかってしまい、店長と3人でノヴァクは、自分の自転車が盗まれたために向かいの家から盗んで使っている自転車まで連れていく。しかし「幸運」にもノヴァクが盗んでいた食料は浮浪者に盗まれており、証拠不十分でお咎めなしとなる。
さらにネクタイなども盗みながら資金を稼いでいたノヴァクと3人のポーランド人たちは、深夜にスーパーのカートの上に荷物を乗せて運んでいる。てっきり一ヵ月が過ぎてようやく仕事を終えて帰国の途につくのかと思いきや、日付は1982年12月5日でなんと一年経ってしまっているのであり、なおかつ相変わらずノヴァクと3人は「スポットライト」ではなく「月の光」の下で喧嘩をしている。
因みに「火曜日」とされる1982年12月5日は、正確には火曜日ではなく日曜日で、これが何かの意図があるのか、あるいはいつものスコリモフスキ監督の「悪ふざけ」なのかどうかはよく分からない。ノヴァクは妻のアンナと「ボス」と一緒に「ティナ・ターナー」のコンサートに行った時のことを語っているが、本作の制作時期がほんの少しズレていたら、「U2」のコンサートだったかもしれない。