MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『炎628』 100点

2011-06-30 21:06:11 | goo映画レビュー

炎628

1985年/ソ連

ネタバレ

‘泥沼’というメタファー

総合★★★★★ 100

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 1943年、白ロシアのある村で、2人の少年たちが、年老いた農夫の忠告も聞かずに砂場で捨てられている銃を探しているシーンを観ていた時には、その後の凄まじいストーリーなど想像もつかなかった。
 その少年の一人である15歳のフリョーラが銃を見つけ出して、翌日、母親の制止を振り切り、幼い双子の妹たちを残してドイツ軍と戦うためにパルチザンの部隊に加わるのだが、実際には戦闘に参加することは出来ずに、一人でキャンプ地に残される。そこでグラーシャという少女に出会う。2人で森をさまよっているとドイツ軍の飛行部隊が投下した爆弾の爆音でフリョーラは耳が聴こえにくくなる(音響効果でもって観客も同様の‘耳鳴り’を体験をすることになる)。フリョーラは自分の家に戻るが、母親も妹たちもいなかった。フリョーラは家から少し離れた島にいると思って、泥沼の中を渡っていくが、既にグラーシャは家の裏に大量の死体があることを見つけてしまう。
 ルーべジュという戦闘員に合流したフリョーラはさらに2人の戦闘員と一緒に食料を探しに出かけるが、フリョーラのミスで2人の戦闘員は地雷を踏んで死んでしまい、盗んだ牛とともにルーべジュも殺されてしまう。
 翌朝、たどり着いた村でフリョーラはドイツ軍によってロシア人の女性や子供たちと一緒に小屋に詰め込まれる。フリョーラは逃げ出すことができたが、小屋の中に残った人たちは小屋に火をつけられたために焼死してしまう。
 フリョーラはパルチザンたちがドイツ軍の兵士たちを捕虜にしたところに遭遇する。最初は捕虜たちにガソリンをかけて焼死させようとするが、結局、全員銃殺してしまう。
 フリョーラは泥水につかったアドルフ・ヒトラーの肖像画に向かってライフルを撃つと、ヒトラーが統括していた当時のドイツの記録映像が逆回しで再生される。フリョーラは絶え間なくライフルを撃ち放つが、逆回転していた記録フィルムが母親に抱かれている幼いヒトラーの写真が映し出された瞬間に、撃つことができなくなってしまう。ナチスによって628の白ロシアの村が村民ともども焼かれたにも関わらず。
 フリョーラは再び別のパルチザンのグループに合流すると森の中に消えていく。ただ銃を手にしただけで、これだけの凄惨さに遭遇してしまうことになるという、全く救いの無い作品であるが、演出は冴えている。


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『翌日戦争が始まった』 90点

2011-06-30 07:25:14 | goo映画レビュー

翌日戦争が始まった

1987年/ソ連

ネタバレ

青春の光と影

総合★★★★☆ 90

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 作品冒頭はある地方都市の1940年の9年B組のクラスのセピアカラーに色褪せた集合写真が映し出される。
 その後、当時のソビエト連邦の映画としては珍しく、主人公の一人であるジーナが自分の胸が大きくなったような気がしてヌードになって鏡で全身を確認するようなシーンがある。そこへ友人のイスクラが一緒に学校へ行くために訪ねてくる。
 学校の教室にはスターリンの肖像が掲げられていて、コムソモール(共産主義青年同盟)の主導で教育が行われている。
 ある日、友人たちが集っていたパーティで、マヤコフスキーと親しかったというリュベレツキーの娘のヴィーカが美しい詩を朗読して友人たちを感銘させるのだが、その詩が、当時退廃的とされていたセルゲイ・エセーニンの詩だったことがジーナを通じて女性教師のワレンドラに知られてイスクラが呼び出される。イスクラは、それは自分ではなくヴィーカだと言った。イスクラには悪気はなく、リュベレツキーの自由な考え方が好きだったのだが、彼の言葉を書き留めていたメモを母親に見られて、叱責を受ける。
 やがてヴィーカの父親のリュベレツキーが危険思想の持ち主として連行されてしまう。ワレンドラから親子の縁を切るようヴィーカは強要されるが、拒んだ末にヴィーカは大量の睡眠薬を飲んで自殺してしまう。
 ヴィーカの葬儀への出席は禁止されてしまうが、それでも生徒たちは出席して、母親の制止を振り切ってイスクラは弔辞を読む。生徒たちに同情的だった校長が職を解かれて、党籍も剥奪されてしまったことを聞いた生徒の一部が訪ねていったばかりの校長の家から帰ろうとした時に、イスクラが軍歌を歌い出し、やがてみんなも歌いだす。
 教室では「ペドロ・パブロフスクの夢」という詩を読んでいる。来年こそは良い年になると信じた生徒たちだったが、1941年にドイツとソ連の間で戦争が始まる。ラストは冒頭の写真が再び映し出され、男子生徒たちがドイツとの戦いで戦死し、さらにイスクラと彼女の母親も銃殺されたことが告げられる。
 体制との葛藤を通じて、なんとかして自由を手にしようとする若者たちの努力が戦争によって全て無駄になってしまうという儚さが胸をうつ。
 基本的にはモノトーンで撮られているのであるが、途中で所々カラーになる。しかしヴィーカの家やピクニックのシーンなどカラーにする意図がはっきりしないために、写真のセピアカラーが生きてこない。


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レディー・ガガの日本のブレーン

2011-06-30 00:04:14 | 洋楽歌詞和訳

震災支援、ガガさん訴えられる 「売り上げ一部着服」(朝日新聞) - goo ニュース

 レディー・ガガが3月よりオフィシャルサイト上で発売している東日本大震災のチャリティー

ブレスレットに関して起こされている訴訟は、寄付金額によって最低5ドル(約400円)から

販売されているブレスレットの内訳が、配送料ほかで3ドル99セント(約319円)、税金と

して60セント(約48円)が上乗せされるというところが争点となっており、ミシガン州に

事務所を構える弁護士は、このことに対する説明をガガ側に求めている。弁護士は関係者

にも連絡を取ったものの、ブレスレット1個につき、ガガ側がどれだけの利益を上げている

かについての回答を拒否されたらしい。さらに現在ガガは今回のブレスレットの販売方法を

めぐってアメリカ各州の法に抵触していると申し立てられており、いくつかの購入者からは

まだ商品が届かないという不満も寄せられているらしい。レディー・ガガに悪意はないとは

思う。余りにも急にプロジェクトを立ち上げたために、金銭面に関して不備があることは十分

にありえるが、さすがに2005年のホワイトバンドプロジェクトのようにはならない事を祈る。

しかし実は私の関心は他にあって、レディー・ガガに対する関根麻里の今回5回目となる

インタビューである。何と関根はガガに盆栽をプレゼントした上で、詫び寂びの意味を

伝授していたのである。ただのお座なりのインタビューにしない関根麻里はさすがに

史上最強の2世タレントではあるが、もはやガガのブレーンの一人といっても過言ではない。


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『スカイライン -征服-』 70点

2011-06-29 23:55:40 | goo映画レビュー

スカイライン -征服-

2010年/アメリカ

ネタバレ

B級の‘リアリティー’

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 この作品を観ている内に懐かしさを感じるとするならば、確か昔のSF映画はこの作品のようにストーリーなど二の次で、ただ特撮を駆使して観客を楽しませようとしていたからであり、因って登場人物たちがこの作品のように必然的にドアやブラインドやシャッターを開閉することだけで辛うじて命拾いをする‘リアリティー’こそが売りなのである。
 だからこの作品が失敗しているとするならば、B級作品に徹すればいいものを、あたかもA級であるような色気を出してしまい、ラストでこの作品においてはどうでもいいはずの愛などを描いてしまった点にある。


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“原発解散”の信憑性

2011-06-29 00:02:35 | Weblog

菅首相、質問求める怒声振り切り退席…両院総会(読売新聞) - goo ニュース

 菅直人は28日夕方に開かれた民主党両院議員総会で、エネルギー政策の見直しが

「次期国政選挙でも最大の争点になると思っている」と述べた。70日間の会期延長が

決まった以上、菅直人が「8月衆院解散-9月投開票」に踏み切ることは確実のように思う。

ただ首相を退任しただけでは事実上の政治生命の終焉になることは菅は分かっている

だろうから、6年前の小泉純一郎の“郵政解散”を見倣って“原発解散”をしてくるだろう。

辞めなければならない菅にとってはただ辞任するよりも、万が一でも勝つ可能性があるなら

解散総選挙に打って出た方が、首相として延命できる。首相でいられないのならば菅に

とって民主党などどうなってもいいのだろうから。全ては菅のシナリオ通りに進行している。


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『アントニオ・ダス・モルテス』 80点

2011-06-28 22:58:28 | goo映画レビュー

アントニオ・ダス・モルテス

1969年/ブラジル=フランス

ネタバレ

やはり善悪は判別できない

総合★★★★☆ 80

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 『アントニオ・ダス・モルテス(ポルトガル語の原題:戦う聖者と対決する邪悪なドラゴン)』(1969年)は『黒い神と白い悪魔』(1964年)の‘姉妹編’とされている。‘続編’ではなく‘姉妹編’である理由は、『黒い神と白い悪魔』では脇役であったアントニオ・ダス・モルテスが主役になっているからであるが、それだけではなくこの2作品は複雑に絡み合っている。
 冒頭のシーンから『アントニオ・ダス・モルテス』は西部劇を装っているが、その直後、教師が生徒たちにブラジルの歴史を教えているように、あくまでも‘現代劇’である。『黒い神と白い悪魔』では目立たなかった盲目の男が『アントニオ・ダス・モルテス』では町の大地主の陸軍大佐として権力を振るっている。その妻のラウラは夫が盲目であることをいいことに警官のマトスと恋仲になっている。マトスはラウラにそそのかされて大佐の右腕であるバチスタを殺すのであるが、煮え切らないマトスに嫌気がさしたラウラはマトスを刺し殺す。
 アントニオ・ダス・モルテスは黒人の司祭と聖バーバラと義賊カンガセイロの一人であるコイラナが率いる集団を弾圧するために大佐に呼ばれ、300コントスの報奨金を600コントスにさせて引き受ける。民衆たちの前でアントニオはコイラナと戦い、コイラナに深手を負わせるが、聖バーバラやプロフェッサーと呼ばれる男に諭される(このプロフェッサーが『黒い神と白い悪魔』ではアントニオの敵だったコリスコ役のオトン・バストスだからややこしい)。
 クライマックスで、命を落としたコイラナの剣を取ってアントニオと一緒に戦うことにしたプロフェッサーは大佐が呼び出したマタ・バカが率いる義賊たちを相手に死闘を演じることになる。最後は聖バーバラと一緒の馬に乗った黒人の司祭が放つ矢で一突きされて大佐は絶命してしまう。
 ラストシーンは戦いを終えたアントニオがシェル石油の看板の下をとぼとぼと歩いていくことで、観客は現代の中の西部劇であることを認識させられる。やはり冗長なシーンが目立つ。


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遺伝子検査ビジネス

2011-06-28 00:22:07 | Weblog

子の才能わかる?遺伝子検査つき本 専門家は否定的(朝日新聞) - goo ニュース

 宝島社が5月に発売した1600円もするムック本「潜在能力がわかる!遺伝子検査」の

実物を見たことがないので、はっきりしたことは言えないのであるが、「どの論文が根拠かや

遺伝子のどの部分を調べているのかが不明」と指摘されているところをみると、どうやら

ムック本には詳細なことは書かれていないようである。さらにそれを検査するところが

中国の政府機関が出資する会社というのも怪しさが増す。ムック本のタイトルも絶妙で

あくまでも“潜在能力”がわかるだけであり、それを開花させられるかどうかはあくまでも

個人の努力ということになるのであるが、仮に開花させたとしても、それが遺伝子のおかげ

なのか、本当に努力の賜物なのか分らないため、結局、検査の結果の正否は分らない。


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『黒い神と白い悪魔』 80点

2011-06-28 00:19:20 | goo映画レビュー

黒い神と白い悪魔

1964年/ブラジル

ネタバレ

神と悪魔は判別できない

総合★★★★☆ 80

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 『黒い神と白い悪魔(ポルトガル語の原題:太陽の大地の中の神と悪魔)』はギターの弾き語りを通して物語の粗筋が語られていくという特異な演出のみならず、作品の冒頭で、主人公で貧しい牛飼いのマヌエル・バケイスが飼っていた牛が死んだために、地主の牧場へ行き、金の工面を求めたところ自分の責任にされたために、マヌエルは地主を殺してしまうのであるが、その諍いの最中にいつの間にか場面がマヌエルの家の前に変わっているという大胆(無謀?)な‘ジャンプカット’が使われている。
 その際にマヌエルは母を殺されたために、妻のローザを連れて、多数の人々を引き連れていた聖セバスチャンに救済を求める。聖セバスチャンを脅威に感じた地主たちはアントニオ・ダス・モルテスを殺し屋として雇う。
 聖セバスチャンを盲信しているマヌエルは彼に言われるままに石を担いで山の斜面の坂道を降りていくような‘修行’をこなしていくが、生け贄として赤ん坊を殺されたローザは聖セバスチャンを刺し殺し、再びマヌエルと逃げることになり、その直後、アントニオ・ダス・モルテスは‘信者たち’を皆殺しにする。
 マヌエルとローザは逃げる途中で出逢った、盲目の男の仲介で義賊カンガセイロの長であるコリスコと彼の妻のダダの一味に加わるが、マヌエルが周囲を探索している間にローザとコリスコは密通してしまう。
 ラストで4人はアントニオ・ダス・モルテスに見つかってしまい、コリスコは呆気なく殺されてしまう。マヌエルは子供を作って幸せになろうと約束していたローザと必死になって走って逃げるのであるが、何故か最後は転んだローザを置き去りにして一人で走って逃げていってしまう。
 ユニークな演出で、その粗さが魅力だとは思うが、マヌエルが石を担いで山の斜面の坂道を降りていくシーンなど意味も無く妙に冗長なシーンがある。この作品はグラウベル・ローシャ監督が1969年に制作した『アントニオ・ダス・モルテス』に繋がる(のか?)。


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名前の読み方について

2011-06-27 20:33:52 | Weblog

次女の携帯電話、持ち去られた可能性 大阪母娘殺害事件(朝日新聞) - goo ニュース
母娘殺害 次女、5月に襲われる 交友関係を捜査(産経新聞) - goo ニュース
事件前の次女、何度も暴行被害 大阪・母娘殺害(朝日新聞) - goo ニュース

 この事件とは直接関係の無い話なのであるが、気になったことを書き留めておきたい。

殺害された山下裕美は韓国籍で、本名は金裕美というらしい。彼女の母親も殺害された

のであるが山下香代子も韓国籍で、本名は金玉香というらしい。ここまでは何も問題は

無い。問題は母親の名前に関する報道の仕方なのであるが、私の知る限りではTBSの

ニュースでは、韓国名であるために“キム・オクヒャン”と読んでおり、慣習的にそれが正しい

読み方だと思うのであるが、テレビ朝日では何と“きん・たまか”と読んでいた。どのように

考えても、しかも女性の名前に“きん・たまか”はありえない。よく笑えずに言えたものだ。

今は通称名を使っているが、殺害のニュースで笑ってしまった私が顰蹙を買ってしまった。


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『SUPER8/スーパーエイト』 100点

2011-06-26 18:10:25 | goo映画レビュー

SUPER8/スーパーエイト

2011年/アメリカ

ネタバレ

‘変わり者’から‘個性的’へ

総合★★★★★ 100

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 「早くも2011年最高傑作」と謳われているものに大抵ロクなものは無いのであるが、『SUPER8/スーパーエイト』に関していうならば、それを否定する要素は無いように思う。
 主人公のジョー・ラムの母親が、勤めていた鉄筋工場の事故で亡くなった1979年2月1日から物語は始まる。ヒロインのアリス・デイナードにも母親がいないのであるが、この物語で重要なことは母親の喪失よりも父親の圧力だと思える理由は、ジョーやアリスがお互いの父親に交際を禁じられるのみならず、やがて現れる、白いルービックキューブのような物体から身体を作り上げる宇宙生命体がアメリカ軍によって長い間監禁されていたからである。
 母親の死から4ヶ月後にジョー・ラムは友人たちと中断していた映画制作を始める。しかしこのメンバーたちはみんな変わり者で、ケアリーは爆弾を作る趣味を持ち、ジョー自身もフィギュアや模型を作る趣味を持っている。そして映画を撮るということは、そのような‘オタク’たちが集まってするようなことである。発売されたばかりの‘ウォークマン’で好きな音楽を一人で聴くということさえ、当時は変わり者と見倣されていた。
 宇宙船の故障で地球に不時着してしまい、ただ宇宙船を修理して帰還したかったのにアメリカ軍に監禁された上に調査の名の元に拷問を受けた宇宙生命体が怒り狂って‘首謀者’のネレク大佐を殺す気持ちは理解できる。宇宙生命体が地下に巣くって人間や電気を集めている有様はまるで‘オタク’のようである。だから宇宙生命体がジョーを捕まえて対峙した時に、ジョーが「悪いことも起こるけれども、君はまだ生きることができる」と言った言葉の意味を同じ‘オタク’として宇宙生命体は理解することができた。宇宙生命体はそれまで培っていたエネルギーを駆使して、あらゆる金属を寄せ集めて、宇宙船を作り出して帰還していく。そしてその光景を見ていたジョーやアリスも大いに刺激されてゾンビ映画を完成させるのである。
 ‘オタク’がこれほど優しく美しい寓話として描かれたものを私はいままで見たことがない。


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