原題:『傷だらけの天使 港町に男涙のブルースを』
監督:神代辰巳
脚本:大野靖子
撮影:田端金重
出演:萩原健一/水谷豊/岸田森/ホーン・ユキ/池部良/潤ますみ/荒砂ゆき/田島義文/山中貞則
1974年/日本
「ロマンポルノ」がテレビドラマとして放送された時代について
舞台は鴨川グランドホテルの一室。主人公の小暮修が行きずりの女性とベッドを共にしているところに見知らぬ男たちが乗り込んできたのだが、修は間一髪で部屋から逃げ出した。修は辰巳五郎の依頼で東南アジアから輸入している冷凍エビを横流ししている犯人を突き止める役目を担っていたのだが、そんな時にバーで知り合った、地元でヌードスタジオを経営している梶シュンスケと出会い、金欠から彼のスタジオを手伝う羽目になった。
乾亨と合流して、絶えず自分の命を狙っている者たちの正体を探っているうちに、実はその冷凍エビに紛れこませて麻薬が日本に持ち込まれていることを知る。自分の命を狙っている者たちの首謀者は中興水産の柳田社長であることが分かるが、なんと最初に修を襲撃させた犯人は梶だったのである。
梶によれば柳田はかつて戦時においてニューギニアで中尉として21人の部下と1人の従軍カメラマンを従えていた。戦況が悪化しアメリカ軍が襲撃してくる直前に撤退命令が出ていたのであるが、小さなモーターボートしかなかったために柳田は一人で逃げてしまい、部下は全員射殺されカメラマンだった梶一人が生き残ったのだった。梶は3年前に柳田の所在を知り、30年来の恨みを自ら晴らそうとしていたのである。
ここで不可解なシーンがある。梶が修と亨に手榴弾を見せた後に、海岸で修が手榴弾の一つを手に取ってピンを外して爆破させるのである。しかし再び修に扱い方を教えて手榴弾を渡した後に、ヌードモデルのアケミが詰難すると「あれはおもちゃで、本物がここにあるはずがない」と梶は答えるのだが、最初の手榴弾は爆発しているのだから、梶自身も30年も経ったために記憶が不確かなのである。
クライマックスにおいて船に乗って待っていた梶を柳田はライフルで撃ち殺そうとするのだが、30年も経っており腕が鈍って仕留めることができない。その内に梶が柳田が乗って来たモーターボートに乗り移って刀で切り殺し、2人とも海の藻屑となる。
本作で使用される曲は「好きになった人」、「浪曲子守唄」、「戦友」、「同期の桜」など別れをテーマにしたもので、最後は「君が代」に日本国国旗で、そもそも梶と柳田がいがみ合う原因になったものが示されるというアイロニーが神代辰巳監督らしい。