原題:『Gifted』
監督:マーク・ウェブ
脚本:トム・フリン
撮影:スチュアート・ドライバーグ
出演:クリス・エヴァンス/マッケナ・グレイス/ジェニー・スレイト/リンゼイ・ダンカン
2017年/アメリカ
数学者という「難しい」才能について
常識で考えるならば生まれついて持っている才能は伸ばすように教育されるべきであるだろうが、主人公のフランク・アドラーは亡くなった姉のダイアンの娘の7歳のメアリー・アドラーの数学の才能を認めながらも英才教育を拒絶し、それどころかフランク自身も大学教授を辞して船の修理工をしながら後見人としてメアリーを育てている。
フランクの教育方針に我慢できなかったのがダイアンの母親のエヴリン・アドラーで、メアリーの親権を巡って裁判をすることになり、その結果メアリーはエヴリン側の里親の元で育てられることになる。
エヴリン自身としては立派に育てたつもりで、実際にダイアンは天才的な数学者になったのであるが、自殺してしまったのである。そしてフランクは姉が自殺した原因はエヴリンにあると思っていた。何故ならばダイアンはミレニアム問題のひとつであるナビエ–ストークス方程式を解いていたにも関わらずエヴリンが死ぬまで公表しないようにフランクに遺言を残していたからである。母親が喜ぶことを本人に知らせないということはダイアンは母親を恨んでいたのである。そして自死した原因は母親が娘自身を愛していたのか娘の才能を愛していたのか分からなかったからであろう。エヴリンは気がつけなかったが、フランクは分かっていたからメアリー自身を愛するために彼女の才能を無視したのである。
大抵の才能は伸ばすように教育するべきだとは思うが、数学者という存在は特別で、難解な方程式を解き明かした数学者は全て変わり者として仙人のように生きており、幸せそうに見えないから難しい問題なのである。