MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『gifted/ギフテッド』

2018-01-31 00:48:39 | goo映画レビュー

原題:『Gifted』
監督:マーク・ウェブ
脚本:トム・フリン
撮影:スチュアート・ドライバーグ
出演:クリス・エヴァンス/マッケナ・グレイス/ジェニー・スレイト/リンゼイ・ダンカン
2017年/アメリカ

数学者という「難しい」才能について

 常識で考えるならば生まれついて持っている才能は伸ばすように教育されるべきであるだろうが、主人公のフランク・アドラーは亡くなった姉のダイアンの娘の7歳のメアリー・アドラーの数学の才能を認めながらも英才教育を拒絶し、それどころかフランク自身も大学教授を辞して船の修理工をしながら後見人としてメアリーを育てている。
 フランクの教育方針に我慢できなかったのがダイアンの母親のエヴリン・アドラーで、メアリーの親権を巡って裁判をすることになり、その結果メアリーはエヴリン側の里親の元で育てられることになる。
 エヴリン自身としては立派に育てたつもりで、実際にダイアンは天才的な数学者になったのであるが、自殺してしまったのである。そしてフランクは姉が自殺した原因はエヴリンにあると思っていた。何故ならばダイアンはミレニアム問題のひとつであるナビエ–ストークス方程式を解いていたにも関わらずエヴリンが死ぬまで公表しないようにフランクに遺言を残していたからである。母親が喜ぶことを本人に知らせないということはダイアンは母親を恨んでいたのである。そして自死した原因は母親が娘自身を愛していたのか娘の才能を愛していたのか分からなかったからであろう。エヴリンは気がつけなかったが、フランクは分かっていたからメアリー自身を愛するために彼女の才能を無視したのである。
 大抵の才能は伸ばすように教育するべきだとは思うが、数学者という存在は特別で、難解な方程式を解き明かした数学者は全て変わり者として仙人のように生きており、幸せそうに見えないから難しい問題なのである。


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ルーラント・サーフェリーと葛飾北斎

2018-01-30 00:14:29 | 美術

 先日観に行った東京都美術館で催されている「ブリューゲル展 画家一家 150年の系譜」

においてヤン・ファン・ケッセル1世(Jan van Kessel the Elder)と葛飾北斎の類似性を

指摘したのだが、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで催されている「ルドルフ2世

驚異の世界展」で葛飾北斎のような画家が他にもいることが分かる。


(『花瓶と果物、昆虫(Vase of Flowers Surrounded by Fruits and Insects)』)

 上の作品はヤーコブ・フナーヘン(Jacob Hoefnagel)が1629年に描いた水彩画である。


(『2頭の馬と馬丁たち(Horses and Grooms)』)

 上の作品はルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)が1628年頃に描いた

油彩画で、ブリューゲル風の画家だったサーフェリーは鳥を描くことを専門としたヨーロッパ

最初の画家として知られている。さらにサーフェリーはクリステイン・ド・パス(Crispijn

 De Passe)やロベルト・ファン・フルスト(Robert van Voerst)という彫刻師と組んで、

『「絵画術・素描術の光」シリーズ(On the True Art of Painting and Drawing)

「Luce del dipingere et disegnare / Van't Light der teken en Schilder konst」』と

いう、まさに北斎漫画のようなスケッチ画集を1628年から1636年にかけて制作して

いる。つまり1830年代前半にヨーロッパに渡った北斎漫画よりも200年早いのである。

 何故サーフェリーではなく北斎漫画がヨーロッパ文化に影響を与えたのか考えるならば、

ルドルフ2世が築き上げたこのような文化的遺産が1618年から1648年にかけて

勃発した三十年戦争で散逸してしまったからなのか、あるいは北斎漫画がヨーロッパの画家

が描いていなかった鯉なども描いていたからなのか? この単純な問題を解くためにあと

どれくらい歴史を勉強しなければならないのか?


(『春(Spring)』フィリップ・ハース(Philip Haas))2010年


(『コロッサス:巨像(Colossus)』フィリップ・ハース(Philip Haas))2010年


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「野外での婚礼の踊り」に花婿がいない原因について

2018-01-29 00:36:26 | 美術

 東京都美術館で催されている「ブリューゲル展 画家一家 150年の系譜」のメインは

ポスターにもなっているピーテル・ブリューゲル2世(Pieter Brueghel the Young)の

『野外での婚礼の踊り(The Outdoor Wedding Dance)』(1610年頃)である。

「この作品では、宴の主役である新婚の二人のうち、花婿はどこにいるのかわからないが、

花嫁は画面奥の特別席に座って祝儀を受け耽っている。彼女のどこか悲しげな表情は、

踊っている農民のカップルたちの楽しげな様子とは対照的である」とキャプションに

あるように、哀しそうな花嫁が気になる。

 本作に並んで展示されているマールテン・ファン・クレーフェ(Marten van Cleve)の

『農民の婚礼(Peasant Wedding)』(1558年-1560年頃)という6点連作の作品

が参考になると思う。

 同じように祝儀を受け取っている花嫁のシーンである。

 花嫁が笑顔なのは祝儀をたくさんもらっているからであろう。ここからは憶測になるのだが

ピーテル2世の作品に花婿がいないのは彼が祝儀を持ち逃げしたためではないだろうか?


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ヤン・ファン・ケッセル1世と葛飾北斎

2018-01-28 09:52:31 | 美術

 国立西洋美術館で催されている「北斎とジャポニズム」では北斎が描いた『北斎漫画』を

ヒントに、例えばエミール・ガレ(Émile Gallé)などが参考にして自身のガラス工芸に

取り入れているのだが、西洋に北斎のような画家がいなかったわけではない。


(『蝶、カブトムシ、コウモリの習作(Butterflies, Beetles and Bat)』)


(『蝶、コウモリ、カマキリの習作(Butterflies, Beetles and Mantis)』)

 例えば、東京都美術館で催されている「ブリューゲル展 画家一家 150年の系譜」で

展示されているヤン・ファン・ケッセル1世(Jan van Kessel the Elder)が1659年に

描いた上の作品は、1830年代前半にヨーロッパに渡った北斎漫画よりも150年以上も

早くに制作されたものであるのだが、影響力がなかったとするならば北斎漫画が紙に描かれ、

流通しやすかったものであるのに対して、本作は何故か大理石に描かれているからであろう。

 しかしそれよりも気になるのは作品のタイトルで邦題と原題の英語が微妙に違っているのは

何故なのか?


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「ノアの箱舟への乗船」

2018-01-27 00:30:24 | 美術

 東京都美術館で催されている「ブリューゲル 画家一族 150年の系譜」では

ヤン・ブリューゲル1世(Jan Brueghel the Elder)が描いた「ノアの箱舟への乗船

(Entry into Noah's Ark)」(1615年頃)も見ることができる。キャプションには

「箱舟は画面中央に描かれたノアの左に小さく描かれている」と書かれており、実物を

凝視したのだがよく分からず、後でネットで確認した。要するに木に登っている猿の頭頂の

背後に箱舟があり、そこへキリンやサイなどが乗船している様子が描かれているのである。


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「種をまく人のたとえがある風景」

2018-01-26 00:27:26 | 美術

 東京都美術館では「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」が催されている。

「種をまく人のたとえがある風景(Landscape with the Parable of the Sower)」(1557年)

というピーテル・ブリューゲル1世(Pieter Bruegel the Elder)とヤーコブ・グリンメル

(Jacob Grimmer)の共作の作品がある。「種をまく人のたとえ」とはマタイ福音書13章

1~23節に書かれていることで、種を道端に蒔けば鳥に食べられ、石の上に蒔けば根付か

ないために枯れてしまい、茨の間に蒔けば茨に邪魔をされて伸びないから枯れてしまうという

話である。

 ここではこの話の解釈するつもりはなく、キャプションに「画面中央を流れる川の

岸辺には小船の周りに人々が集まっており、ここでキリストがこのたとえ話をしている

様子が描かれている」と書かれていたのであるが、実物を何度見てもどこにキリストが

描かれているのか分からなかった。それよりも左下に描かれている、種を蒔いている人の

種が鳥に食べられたり、石や茨の間に蒔かれている様子を指摘した方がいいと思う。


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『嘘を愛する女』

2018-01-25 20:30:50 | goo映画レビュー

原題:『嘘を愛する女』
監督:中江和仁
脚本:中江和仁/近藤希実
撮影:池内義浩
出演:長澤まさみ/高橋一生/DAIGO/川栄李奈/野波麻帆/奥貫薫/黒木瞳/吉田鋼太郎
2018年/日本

出来の悪い小説をモチーフにする映画のクオリティーについて

 主人公の川原由加利が小出桔平と名乗る男と出会ったのは2011年3月11日だった。東日本大震災による交通マヒに巻き込まれた由加利が体調を崩して駅の構内でしゃがみ込んでしまったところを研究医の小出が介抱したことを縁に、再び由加利が小出を偶然見つけたことで交際することになるのだが、小出は自分には家族がなく収入もないために由加利の部屋に転がり込んで「主夫」のような関係で2017年2月23日を迎える。その前夜、小出を母親に会わせようと由加利が夕食を一緒にする約束をしたのであるが、小出は現れなかった。翌日になって小出が帰ってきたと思ってドアを開けるとそこにいたのは小出ではなく刑事だった。小出はクモ膜下出血を発症して入院していたのであるが、「小出」という人物が存在しないという話になっているのである。運転免許証は偽造されたものだったが、1979年4月23日という生年月日は正確だったようで37歳である。
 そこで由加利は私立探偵の海原匠を雇い、小出のノートパソコンをロッカーから発見し、そこに書いていた原稿用紙700ページを超える書きかけの小説を手掛かりに「小出」が何者なのか探索する旅にでる。
 由加利が瀬戸内を一人で回っていると小出らしい人物の存在を突き止めて梅原を呼び寄せるのだが、それは他人の空似だったトシという青年だった。しかしトシは以前にも間違えられたことがあり、広島県警が訪ねてきたことを教えてくれる。そこから小出は安田公平という外科医で妻とまだ幼いひとり娘がいたのだが、安田は仕事に忙しく妻の育児ノイローゼに気が付かず、気がついた時には妻が赤ん坊を湯舟で窒息死させ、その直後外へ飛び出してトラックに轢かれて死なせてしまった過去を持つことを知り、それらは2010年9月20日の地元の新聞に掲載されていた。
 正直、一体何を言いたい作品なのかよく分からない原因は、小出が書いた小説が亡くなった妻や娘のためになのかあるいは騙して付き合っていた由加利のためになのか、誰のために書かれたものなのかはっきりしないからであろうが、教訓ならば由加利もウーマン・オブ・ザ・イヤーにも選ばれて忙しく働いているように仕事のし過ぎは決して家族を幸せにしないということくらいであろう。
 それにしても小出の思い出の品として「マジンガーZ」のフィギュアが出てきて、奇しくも『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』(志水淳児監督 2018年)が公開されているのだが、本作は東宝で『マジンガーZ』は東映だからこれは偶然ではあるだろう。


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『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』

2018-01-24 00:09:52 | goo映画レビュー

原題:『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』
監督:志水淳児
脚本:小沢高広
出演:森久保祥太郎/茅野愛衣/上坂すみれ/関俊彦/小清水亜美/花江夏樹/藤原啓治/石塚運昇
2018年/日本

魅力的なキャラクターを映画で活かしてもらえない原作者について

 『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』(上堀内佳寿也監督 2017年)同様に本作も「パラレルワールド」が描かれているのであるが、これは子供向けの作品に流行っている物語の「雛形」なのかどうかはよく分からない。
 主人公の兜甲児には弓さやかという恋人がおり、さやかの想いをよそに兜甲児の気持ちは学者として仕事に打ち込んでいる様子であるのだが、それはラストの伏線へつながるとしても、子供向け作品に似合わず妙に生々しいのは既に大人になった昔からの「マジンガーZ」ファンをも取り込む目論みだったのだろうか。しかしこの挿話だけが全体的に浮いてしまっている。
 しかし個人的には冒頭で剣鉄也が操縦するグレートマジンガーが敵と戦っているシーンにおいて空間を埋め尽くすほどに現れる敵の機械獣の「無数さ」に笑ってしまい緊張感を失い、さらに「光子力」というものが原子力系のエネルギーなのか再生可能エネルギーなのか曖昧なのはともかくとしてもあれほど機械獣がいるならばマジンガーインフィニティが必要なのだろうかと思ってしまった。
 唯一良かったことといえば主題歌を水木一郎に歌わせたことくらいかもしれないくらいで、本当に不幸にも永井豪原作の映画化はどれも上手くいっていない。


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『劇場版「進撃の巨人」Season2~覚醒の咆哮~』

2018-01-23 21:59:44 | goo映画レビュー

原題:『劇場版「進撃の巨人」Season2~覚醒の咆哮~』
監督:肥塚正史
脚本:小林靖子/瀬古浩司
撮影:山田和弘
出演:梶裕貴/石川由依/井上麻里奈/下野紘/小林ゆう/三上枝織/藤田咲/神谷浩史/子安武人
2018年/日本

「変身」から「座標」までの物語について

 それまで「巨人vs.人間」という構図が本作あたりから人間の言葉を理解する体毛で覆われた巨大猿の出現により崩れてくる。主人公のエレン・イェーガーが104期兵たちと逃走を図っている最中にライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーの裏切りに遇い、ユミルと共に森に連れていかれる。2人は、壁に穴が空いていないにも関わらず巨人が出現していることから巨人は壁の中で生まれているために「壁の中に未来は無い」と捉えており、ユミルはクリスタ・レンズを救いたいがために2人と行動を共にしたのである。巨人化して壁外に逃走中のライナーの頭部で繰り広げられる戦士たちの攻防が何とも言えない寂寥感をもたらす。
 ところがクリスタを襲おうとしている巨人と戦うためにエレンが巨人に変身しようとするものの失敗して万事休すと思った矢先に他の巨人たちが、エレンが倒そうとしていた巨人に一斉に襲いかかり、その様子を見た巨人化していたユミルも加勢してクリスタが無事に救出されるという出来事が起こる。これが後に「座標」と呼ばれる特殊能力なのであるが、これはあくまでも原作を読んでおらずテレビ版も見ていない映画を観ているだけの者の感想である。


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「Your Good Thing (Is About To End)」 Lou Rawls 和訳

2018-01-22 00:57:35 | 洋楽歌詞和訳

LOU RAWLS - "Your Good Thing (Is About To End)" (Live HQ TV Performance On "Music Scene") | © 1969

 NHK-BSプレミアムの『笑う洋楽展』ではルー・ロウルズの「ユア・グッド・シング」が

流れていたのだが、番組でも流したこのTVパフォーマンスはよく出来ている。以下、和訳。

「Your Good Thing (Is About To End)」 Lou Rawls 日本語訳

僕は抱きしめてもらうために君に懇願したりする必要はないんだ
だって他の女性がいるのだから
僕が欲しがっても君は僕を愛する必要はないんだ
だって他の女性がいるのだから

君が友達と呼んでいる人たちが
絶えず愛を手にいれようと頑張っている時でさえ
君にはそんなものは必要ないと彼女たちは言っている
気をつけておいた方がいい

君の長所は終わろうとしている
君の本当の良さがまさに終わろうとしているんだ

毎晩僕は四方の壁を見つめていた
一人でそんなものを見つめる必要などなかったのに
彼女たちが僕と付き合いたがっていると他の男たちが言っていても
僕が君だけのものだと彼女たちに言う必要などなかったんだ

君の愛は総て僕が手にいれている
まさに氷が水と化して沸騰しようとしているんだ
気をつけておいた方がいい

だって君の長所は終わろうとしている
君の本当の良さがまさに終わろうとしているんだ

僕が自分を取り戻すことが大きな問題になることは分かっているけれど
善良な人が僕を求めるならば
僕が拒むことはないことに君は賭けることができる

君の本当の良さがまさに終わろうとしているんだ
君の本当の良さが

君の長所が
君の長所が終わろうとしている

君の長所が
君の長所が


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