原題:『Sully』
監督:クリント・イーストウッド
脚本:トッド・コマーニキ
撮影:トム・スターン
出演:トム・ハンクス/アーロン・エッカート/ローラ・リニー/マイク・オマリー
2016年/アメリカ
調査員と評論家の違いについて
本作と類似した映画として既に『フライト(Flight)』(ロバート・ゼメキス監督 2012年)という名作があるが、本作はあくまでも実際に起こった事故を忠実に映画化したものであり、主人公で機長のチェスリー・サレンバーガーのバックグラウンドが詳細に描かれることはないために物語に捻りがないものの、事故の過程が丁寧に描かれ緊迫感は十分に感じられる。
しかしこの作品をクリント・イーストウッドの「映画論」として捉えることができなくもない。撮り終えた映画に関してあれやこれやと文句を言うことは簡単なことである。それは事故の詳しいデータを基に他のパイロットがシミュレーターで近隣の飛行場に戻ることはできるのであるが、かつてなかった事故に遭遇した際に、わずか30秒強に的確な判断を下して乗員乗客155名全員を救出することはシミュレーターでは計れないサリーの気質や才能の問題であり、それはもちろんかつてなかった作品を決められた期間で撮らなければならない映画監督にも当てはまるものであろう。
国家運輸安全委員会の調査員たちが悪者扱いになっていることは気の毒に見える。彼らは調査員である以上、できるだけ安全の可能性を探る義務があり、彼らの厳しい追及によってこそサレンバーガーは本物の英雄になれたのだから。
テーマソングのティアニー・サットン(Tierney Sutton)が歌う「フライング・ホーム(Flying Home)」が素晴らしかったので和訳しておきたい。
「Flying Home」 Tierney Sutton 日本語訳
あなたと別れることはつらい
あなたはいつでも私を受け入れて
何でも最後まで助けてくれるから
あなたはどこから始めるべきか分かっている
私はここで自分のためにあはたが必要なの
だってあなたはいつだって私の気持ちを理解してくれるから
私たちの気持ちが変わって
離ればなれにならなければならないなんて私には信じられない
でももしもあなたが彼女の瞳の中に愛を見つけたのならば
全ては上手くいくはず
もしも彼女の心の揺れ方が分かるのならば
彼女は彼女がいるべき場所に飛んでいく
生まれ出て家に飛んでくる天使を私たちが見るために生きていたなんて
私には全く信じられなかった
あなたが笑顔でいるのが分かればそれで良いの
あなたはいつだって私の手を握りしめて
天国から見ていてくれて
いつでも分かってくれるから
私たちはあなたを表に連れて行き
私たちがすることを全て取り入れる
私たちはあなたがどれほど私たちを愛してくれているのか分かるだろう
優しくて誠実な魂を理解するだろう
でももしもあなたが彼女の瞳の中に愛を見つけたのならば
全ては上手くいくはず
もしも彼女の心の揺れ方が分かるのならば
彼女は彼女がいるべき場所に飛んでいく
生まれ出て家に飛んでくる天使を私たちが見るために生きていたなんて
私には全く信じられなかった
敢えてあまり深くは説明しないが、娘が生まれ、夫との関係に変化が生じた妻の気持ちが歌われていると思う。
というようなことを書いていたら本ブログの唯一の読者の貴重な指摘によって訳した歌詞が間違っていたことに気がついた。上の訳詞はシャンタール・クレヴィアジック(Chantal Kreviazuk)の同名曲で、本作に使用されている曲はティアニー・サットン(Tierney Sutton)の「Flying Home」だった。もったいないので前の和訳は残したままサットンの曲の和訳をしておきたい。
「Flying Home」 Tierney Sutton 日本語訳
あなたの話を聞かせてよ
私のも話してあげるから(I'll tell you mine)
私にあなたの歌を歌って
私も一緒に口ずさむから
私をそばに引き寄せて
私にきらきらとした歌を聴かせて欲しいの
この降る雪の中
迷宮に立たされていることは間違いない
あらゆるものさしを使って
真実にたどり着こうと熟慮している
どうやって私たちお互いが今後の世界で立ち上がっていこうかと
あなたの苦悩の中に私のものも見えるだろう
いまだにあなたは一人で旅を続けるのだ
あなたはこの星のために生まれ
風雨にさらされなければならない
本物の冬の風が通りすぎる場所で
あなたは重大な時期に直面したのだ
あなたと私は自分たちが見つけることができる道を歩いて
一緒に波に乗って行けるだろう
あなたの話を聞かせてよ
私のも話してあげるから
私にあなたの歌を歌って
私も一緒に口ずさむから
調節器で光量を調節しながら夜を更けさせよう
夜明けが来ることを信じながらも
私たちは朝に希望が持てない
最終的に私たちは一緒に波に乗って行けるだろう
一緒に家に飛んで帰るんだ
Flying Home (Sully)