MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『前橋ヴィジュアル系』

2016-06-17 00:38:10 | goo映画レビュー

原作:『前橋ヴィジュアル系』
監督:大鶴義丹
脚本:一雫ライオン
撮影:倉本和人
出演:風間俊介/黄川田将也/藤田玲/杉浦太雄/加藤和樹/八代みなせ/宍戸開/吉田羊
2011年/日本

若者の切実な想いに応えない作品について

 群馬県の前橋市でヴィジュアル系のバンド「プリンシパル」を友人たちと結成して活動しているヴォーカルのタクジに限らず、リーダーでギターのジュンにしても売れないバンドの活動をしながら実家の農業の手伝いをして先の見えない将来に不安を感じており、同じような悩みを抱えている若者たちにとっては彼らがどのようにそのような現状を打開していくのかと本作を真剣に観るはずだが、驚くべきことにマーティー・フリードマンが演じる、かつて「ザ・ピッグ」というロックバンドでギタリストとして名を馳せたトーマス・ジェリー・スターダストがフランスの音楽フェス出演を依頼してきた辺りから作品自体の様子が怪しくなり、マヨコが作ったバンドのホームページを通して「プリンシパル」を知ったにも関わらず、何故かバンドの曲をCDで改めて聴いていたり、あるいは余りにも前橋をバカにした言動に我慢できずにジュンがトーマスを殴った後に、例え後に彼が詐欺師に成り下がっていたとしても誰もトーマスを助けることもなく立ち去ってしまい、最終的にはバンド活動と地元の農業の仕事は両立できるということになってしまい、実際に一年後の2011年11月頃の「プリンシパル」のライブはネット配信され、一応世界中の人々が観ることができるというストーリーの流れなのであるが、ホームページからの無料配信ならば少なくともその2、3年前から実現可能で、だからと言ってやはり売れなければバンド活動は厳しいはずで、今まで私たち観客が見せられていた、彼らが抱えていた葛藤は一体どこへ消えてしまったのか全く理解できず、本作を真面目に観ていた若者たちが気の毒になってくるのである。
 かつて大鶴義丹監督は大林宣彦監督の作品を嫌いだとテレビで発言しており、それならばそう言う本人がどれほど素晴らしい作品を撮るのかと期待して観てみたらこの有様なのである。


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