急勾配の石段。これを上らないと桜を見ることはできない。中年にはきつい運動だ。ロープウェイを利用して横着する手もあるが、そこまで体力が落ちているわけでもない。一応プライドはあるので、ゼエゼエ言いながら頂上を目指す。派手なハンカチが汗でビシャビシャになった。
風が吹くたびに大量のピンクの花びらが散っていく。その様は本当に美しい。なぜそう思うのか。病んで老いた人間が金や薬の力をかりて延命をはかる醜さ、愚かさを同時に思い浮かべ、人間とは何て業の深い生物なのかとホトホト呆れているからだろう。
千光寺公園から尾道水道を見下ろした。不細工な飲み食いに興じる老若男女の多いこと。単に飲みたいだけの口実作り。桜もさぞかし苦笑していることだろう。私はそんなことを考えながら、坂道を下りた。