何とも、物騒な表題だ。10篇からなる短編集だが、ほとんど、どれも、十分楽しめた。
有名な剣客の話だけでなく、むしろ、あまり知られていない剣客の話が面白かった。
例えば、「抜き、即、斬」では、11歳で果し合いをした若武者が描かれる。果し合いを申し出た者が、ほとんど、討たれるとのことだが...
最後の2編も、ちょっと、吉村昭を想起させる作品もある。「剣光、三国峠」の戦闘場面は、素晴らしかった。
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藤沢周平の直木賞受賞作と他4編からなる「暗殺の年輪」を読んだ。
驚いたことに、他4編のうちの3編は、直木賞候補にあがっていたのだ。
それだけに、どれも、濃密な作品だった。
どれも、後味は、少々、辛めで良いとは言えない。男と女の愛憎や、人間の嫉妬も描かれている。
自分としては、直木賞とは関係のない「ただ一撃」という短編が、一番、気に入った。
ちょっと、剣客商売の老剣客を思い出す剣客の物語だ . . . 本文を読む
山本兼一の松本清張賞受賞作、「火天の城」を読んでみた。
巨大な安土城築城の真相に迫る物語だ。
なかなか、読み応えのある重厚な時代小説だった。
よくこれだけ複雑な物語をまとめあげて一つの小説にできたと思う。後に取材協力先なども記載されていたが、大変だったのだろうなと想像できる。
信長の夢、天に聳える五重の天主の城を建てよの号令に答えた棟梁親子の物語だ。
無理難題、妨害、困難に会いながら、こ . . . 本文を読む
小説だと思い込んで図書館から借りたが、随筆集だった。
同じ時代劇作家、歴史作家の作品の書評もあり、なかなか、面白く読めた。
また、藤沢周平を読んでみようかとか、山本兼一という作家にも興味を持った。
この随筆集の中で、医者にもっと、運動しなさいと言われ、ジョギングを始めたが、その分、腹が減り、食べて、痩せられないと言った文がある。これが、2017年7月だが、葉室麟が亡くなったのが、2017年1 . . . 本文を読む
直木賞のおすすめに入っていた本書をよんでみた。花魁の頂点にたつ葛城が、忽然と消えた。
一体何が起きたのか?失踪の謎を追うため、関係者のひとりひとりと、葛城について話を聞いてゆく。
吉原そのものを鮮やかに描き出した時代ミステリーの傑作。と背表紙にうたっているが、まさにその通りだろう。
まるで、ミュージカルのコーラスラインを想起させるインタビュー形式の物語だ。いつまで、続くのかと思いきや、最後ま . . . 本文を読む
葉室麟の本格歴史小説、「春風伝」を読んだ。
葉室麟の小説は、ジャンルは違うが、新田次郎と同じく、いつか、全作読んでみたいと思っている。
それだけ、どの作品も、読後の満足感が高い。
この作品は、高杉晋作の生涯を描いたものだ。正直言って、時代劇小説ファンなのだが、維新の有名人ながら、高杉晋作については、あまり、知ってなかった。
どこか、坂本竜馬と混乱しているところがあったが、おそらく、高杉晋作 . . . 本文を読む
久しぶりにキンドルを充電してみて、読んでない時代劇小説があったので、読んでみた。TVでも、向井が主人公を演じた算盤さむらいこと、風の市兵衛だ。
なかなか面白かった。だから、その後、シリーズものとして30巻も続き、テレビ化もされたのだろう。
一気に、2日で読み終えた。流し読みではなく、堪能しながら読んで、2日で読み終えたのだから、いかに、面白かったかがわかる。
テレビでも見ていたので、主要登場 . . . 本文を読む
「この時代小説がすごい!」のランキングアンケートで上位5位の作品を収めた時代小説傑作選を読んでみた。(2016年刊行)
実は、直木賞受賞作の池波正太郎の「錯乱」が読みたくてこの傑作選を選んだのだ。池波正太郎の作品は、シリーズものの鬼平とか剣客商売は、随分と読んでいるが、代表作の一つの「錯乱」は読んでなかったのだ。しかし、他の4作品(伊東潤、笹沢佐保、山田風太郎、坂口安吾)も、中々、面白かった。
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直木賞受賞作のおすすめトップ10というネットのサイトの一番に上がっていた「心淋し川」を読んでみた。
先日読んだ「流れ」や、「理由」などは、どちらのランキングにも入っている。江戸時代のうらぶれた長屋にくらす人々の6つの珠玉の短編からなる作品だが、どの短編にも一人、共通して登場するのが、差配の茂十だ。
かといって、5編目までは、いたって、目立たない地味な役回りだ。
それが、最後には、主人公となっ . . . 本文を読む
葉室麟の「川あかり」を読んだ。
藩で一番の臆病者と言われる若侍が、派閥争いの中で、家老を暗殺する刺客に命じられ、川止めがあけて、対岸からわたってくる家老を、木賃宿に泊まって待つ話だ。
その木賃宿には、一癖も、二癖もある連中が泊まっている。ちょっと、「雨あがる」の設定を思い出させるが、まったく、異なる。
最後の解説で、何度、泣いたことか、何度、笑ったことか。この書は、読者にとって、忘れられない . . . 本文を読む
「本屋が選ぶ時代小説大賞」及び「新田次郎賞」を取得した本書を読んでみた。
仏師、定朝の物語だ。
平安時代後期に活躍した仏師の物語だから、今までに読んだ小説としては、最も、古い時代の小説だったかも知れない。
歴史時代小説の次世代のエースと言われるだけに、そのストーリー展開や、時代考証、定朝の創作にかける熱意と悩みなど、よく描けていると思った。一方、その重い題材と時代背景などから、やや、疲れを覚 . . . 本文を読む
葉室麟の「蒼天を見ゆ」を読んだ。もう、十年ほど前になるが、吉村昭の「最後の仇討ち」も読んだし、また、NHKのTVドラマも見た記憶がある。
仇討ち禁止令後に、仇討ちをした臼井六郎の話だ。
葉室麟の作品は、かなり、細かいところまで書き込まれた歴史長編となっていると感じた。
武士の時代には、仇討ちをすることは、誇らしいこととされていたのが、時代が変わり、罪になるようになっても、仇討ちに生きた青年の . . . 本文を読む
木内昇の直木賞受賞作「漂砂のうたう」を読んでみた。
重苦しい雰囲気の時代の中で、希望が見いだせるのか、いったい、何を言いたいのか、非常に難しく考えてしまう作品だった。時は、明治維新によって、侍がなくなった時代。西郷は、戦うことで、生きることを決断した。
そんな時代、新しい時代に、どう生きるか、ひとりひとりが、自分の生き方を考えなければならない、見直さなければならない時代だった。
その時代の雰 . . . 本文を読む
8篇の短編からなる新田次郎の時代小説で、どれも、とても面白かった。
ちょっと、残念なのは、「凶年の梟雄」を含む3篇は、以前よんだ時代小説短編集「赤毛の司天台」とダブっていたものだった。
読んでいるうちに、気が付いたが、忘れている部分もあるので、また、読んでしまった。
「きびだんご侍」は、小作人が川中島の戦いで、手柄を立てる物語をコミカルに描いたものだが、「最後の叛乱」などは、幕末のアイヌの反 . . . 本文を読む
ちょっと、軽めのが読みたくて、本書を選んだが、葉室麟でも、こんな軽いのがあるのかと驚いた。
風野真知雄とまではいかないが、なかなかである。
道場主の父が、酔って階段で足をすべらせてなくなる。しかし、不審な点が多く、父の仇を3人兄弟が力を合わせて探すのだ。
その方法が面白い。その藩には、主人公の道場を含めると6つの流派の道場があるのだ。おそらく、その中に、仇となる犯人がいると、道場破りをしてつ . . . 本文を読む