図書館の予約で20番以上待った末、ようやく貸出し
することができた。読売新聞の書評など、ずいぶん、
評判になった本のせいかも知れない。
刑事事件弁護士である著者が淡々と異様な罪を
犯した人間たちを描いた11の短編傑作集である。
しかし、非常に淡々と描かれているせいか、異様な
事件であっても、水墨画で描かれたかのように
血なまぐさくないのだ。
しかし、とても事実とは思えないくらい異様な事件の
連続で、ドイツと言う国の不思議さ、事実は小説より
奇なりという言葉が浮かんでしまう。
その中で、最後の作品、”エチオピアの男”が、自分としては
一番、好きだったし、 救われたような終わり方に好感を
持てた。
絶望的な人生から銀行強盗をしてエチオピアに逃げた男が
マラリアにかかってしまう。
九死に一生を得た男は、エチオピアの貧しい村を生き返らせ
ると同時に自分自身も絶望のどん底から、生きがいを持てる
ようになる。しかし、新しい人生がはじまったつかのま、銀行強盗の件で、
捕まり服役をする。
どうしても、もういちど、帰りたいという強い気持ちから、帰るための
費用を稼ぐため、また、銀行強盗をおかしてしまう男の物語だ。
最後に”これはリンゴではない。”という言葉が記されている。
何を意味するのか。この最後の物語の最初に、腐ったリンゴ
が落ちていたが、この赤毛の男は腐ったリンゴではない。
というメッセージなのか。
それとも、血の通った人間の物語なのだというメッセージ
なのかも知れない。
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