歴史小説で、直木賞受賞作ということで、「炎環」を読んでみた。
鎌倉幕府の成立、武士の台頭のころを、4編の連作を一本にしたものだ。
阿野禅師、梶原景時、北条保子(政子のいもうと)、北条四郎の4人が、
主人公のような4篇であるが、不思議なのは、どれも、かなりの部分で
重なり合っている物語の部分があるところだ。
また、鎌倉幕府と言えば、当然、源頼朝、義経、政子、北条時政などの
普段なら主役間違いなしの者も、頻繁に出てくるのだが、この作品群では、
どちらかと言えば、脇役である上記4人にスポットライトを当てている。
それぞれの立場から、描写することによって、違った面が見えてくる
部分もあるかも知れないが、それを意図しているというのでもなく、
淡々と、描いている。
そして、いかに、鎌倉幕府の頃というのは、疑心暗鬼の中で、
裏切りや、目立つものに対する不信感から、出る杭は打たれ、
くるくると、表舞台にたつ人間が変わっていく不安定ともいえる時代だった
ことがわかる。
脇役ともいえる4人の性格が、淡々と、しかし、見事に描かれていることも
面白い。
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