東京下町・新小岩駅の不動産屋二代目のつぶやき

東京の下町・葛飾区新小岩で今年創業49年を迎えました不動産屋の二代目が気ままに書き綴った独り言ブログです。ブツブツ・・・

消費者保護の波

2009年12月11日 09時32分37秒 | 不動産屋の話~判例・法令

先日弁護士先生が講師となり「賃貸契約に関わるトラブル判例解説」の研修会に参加した。

「外国国籍を理由に入居を拒絶した場合は民法90条に定める公序良俗違反になるのか?」「原状回復特約と消費者契約法」から現在民主党が推し進めている「定期借家契約締結上の留意点」まで三時間の研修はあっという間に終了した。

その中で非常に興味深かった内容が「建物の瑕疵と賃貸人の法的責任」の項であった。

民法717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)には「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じた時は、その工作物の所有者は被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。但し占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をした時は、所有者がその損害を賠償しなければならない」とある。つまりどのような場合においてもオーナーの無過失責任を負う非常に珍しい法律との解説だった。

その中で例としてひとつの判例が取り上げられていた。
【事案】賃借人の妻が洗濯物を干す際に二階の窓から転落死。窓に手すりや柵等が設置されていなかった賃貸人の瑕疵を認めるか?
【状況】本件窓は床面から約73cmの位置に窓枠下部があり、二枚の窓ガラスをスライドさせて開閉する構造。網戸は設置されていたが手すりや柵等は無し。
本件窓の両脇の外壁には伸縮式の物干し竿受けが設置されていたが、すでに錆付いており伸縮出来ない状況。

賃借人は賃貸人に対し、債務不履行ないし不法行為に基づき、約4280万の損害賠償を求める訴えをおこしたと言うもの。

第一審では「・・・窓から転落する危険性はなく、床面からの高さに照らし、通常の注意を払えば転落する事は無い」と請求を棄却したが、高等裁判所の判断ではそれが「一部認容」された。最終的に妻にも極めて大きな過失があったことは否定出来ず、その割合は90%に及ぶとして「10%に相当する約482万」の損害賠償請求権があるとした。

講師の補足では「従来では過失90%に及ぶ場合は棄却されていたような案件ではあるが、近年の消費者保護の波は司法の世界にも及んでいる」と解説していた。

私の予想を遥かに超える早さで「消費者保護」の流れは進んでいるようだ。防衛策としてはとにかく建物・設備の点検はもちろんの事、使用方法の説明、書面での承諾等がさらに必要になるであろう。あぁ~煩雑、煩雑・・・

本当に恐ろしい世の中になったものだ。

有限会社やな瀬不動産


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