昨年暮れから色々と問題となっていた「追い出し屋」について、先日鳩山内閣が次の通常国会で「追い出し規制法(通称)」を提出することになった。
追い出し屋とは家賃を滞納した借主が賃貸保証業者・不動産業者等から強制的に退去を迫られる行為で、今年の初めから次々と判決が下っており、その動向をこの一年間見続けて来た。
最近の賃貸借契約では「家賃保証契約」を保証会社と締結する事が条件の契約が増えている。家賃保証とは連帯保証人がいない場合や、連帯保証人と二重の保証をする目的で広く浸透しており、当社でも数年前から導入している。おかげで滞納時の対応業務はかなり軽減されているのだが、昨年末から「追い出し屋」被害が全国で起こっており、今年2月にも家賃保証会社の深夜の督促が違法性を認定されている。
【昨年12月の記事】
家賃の支払が遅れた際、法的手続を踏まず不当に高率な損害金を請求したり玄関ドアに別の鍵を取り付けたりする等の方法で賃貸住宅からの退去を迫られたとして、入居者4人が家賃保証会社及び家主に対し、1人あたり約110万~約140万円の慰謝料等を求める訴訟を簡裁に起こした。
【今年2月の記事】
敷金・礼金が不要な「ゼロゼロ物件」と言われる賃貸住宅に入居した30代男性が、未明にわたる家賃の強引な取り立てを受けたとして、家賃保証会社と社員3人に100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、簡裁は同社に慰謝料5万円の支払いを命じた。「全国追い出し屋対策会議」(大阪市)によると、家賃の取り立てに関する保証会社への賠償命令は初めてとのこと。
判決理由で野瀬裁判官は、午前0時を過ぎた取り立ては「生活の平穏を害して精神的苦痛を与えた」と指摘。「社員に脅迫を受け監禁された」とする男性側の主張は「犯罪に相当する強引な取り立てがあったとは認められない」と退けた。
判決によると、男性は月額約5万円の家賃を3ヶ月間滞納し、2007年8月31日午後9時ごろから翌午前3時まで、約6時間にわたって社員3人から取り立てを受けた。
【今年3月の記事】
敷金・礼金なしで部屋を手軽に借りられるとして人気の「ゼロゼロ物件」をめぐり、家賃支払いが遅れた際に勝手に鍵を交換されたなどとして、元借り主の男性(35)が9日、不動産会社の前社長と社員に対し、不動産侵奪と住居侵入、窃盗の疑いで東京地検に告訴状を提出した。弁護団によると、ゼロゼロ物件を扱う不動産業者の刑事告訴は初めて。
告訴状によると、男性は2007年、同社と契約し、中野区内のアパートに入居。家賃支払いが約1週間遅れた2008年6月、同社は部屋の鍵を交換して勝手に部屋に入り込んで荷物をすべて撤去し、別の人に賃貸した。男性は以前にも2回、鍵を交換されたという。同社に対しては、男性を含む元借り主ら9人が慰謝料など計3400万円の賠償を求め地裁に提訴している。
前回の「鍵交換」と同様なケースである。今回のケースでは詳細が報じられていないが、保証会社や不動産業者はいきなりそのような「暴挙」に及んだ訳ではないと思う。何回も連絡を取り→約束期日を決め→反故を何度か繰り返した挙句の行動だと思う。今回の入居者側には不誠実な対応はなかったのだろうか?一年未満に複数回鍵を交換(=滞納)されていることも、3ヶ月もの長期間に渡り滞納していることもかなり悪質だと思う。
そもそも大前提は「期日までに家賃を支払うこと」である。当たり前の事である。但し、様々な事情により支払が困難になる場合も出てくるであろう。この未曽有の不景気ならば尚更であろう。そのような場合はまず第一に「人として」事前に事情を説明して、支払期日を猶予して貰い、もしもそれを守れなかった場合は、ちゃんと自己責任で対処すべきではないかと思う。
これまで数多くの滞納者を見て来たが、最終的にはその人自身の「誠実さ」次第である。以前ブログで紹介した滞納者さんはその後も毎月きっちりと分割して支払い、先月ようやく完済した。完済時に彼に「偉いとは言わないが、よく頑張りました」と言った。偉いのはやはり毎月きっちりお支払いしている入居者さんだと思っている。
しかしそのような人は非常に稀で、残念ながら大半は様々な理由を付けては支払期日を延ばし、途中から「いつ支払えるか確実な予定がつかず、嘘は付きたくないので連絡出来なかった」と言い、最後は大抵「引越する費用すらない」と開き直ってしまうパターンである。そして上記のような「居住権」を主張する記事。
以前も書いたように貸主側にとって「賃料未払い」は死活問題である。ローンの返済がある場合は尚更である。決してボランティアではない。もちろん借主側にとって「衣食住」の基本となる「住」を失う事は死活問題である。「住」が無ければ就職先を見つけるのは至難の業である。
だからと言って「支払えませんが住み続けます」と言うのはいささか都合が良過ぎるのではないだろうか?例えば一括返済が無理であるならば分割して支払う方法だってあると思う。貸主も仲介業者も誠実さには誠実さで応える準備はあると思う。
「借地借家法」を始めとする、賃貸における関連法規の整備はかなり遅れている。滞納したとしても消費者を守る法規は整備されているが、貸主側を保護する法規はいつまで経っても手付かずのままである。貸主側からすると簡単に言えば「入れるのは簡単、出すのは大変」なのである。
以前から事ある毎に、議員さんには要請しているのだが、彼らは異口同音に「少数意見(借主>貸主)をあえて反映しない」スタイルである。絶対数的に貸主の数より借主の数の方が断然多いので、それも分かるのだが・・・
少子化やマンション建設ラッシュで賃貸物件の供給過多は年々増加している。そしてこの不景気・・・このような世情を踏まえて、入居時の条件を色々と緩和・調整して少しでも困っている方々に提供出来れば、最終的に三者(貸主・借主・業者)が喜べるのでは?と常日頃から考えてはいるのだが、滞納が発生しても即退去は出来ない。最終的な解決までは非常に時間と費用が掛ってしまうし、オーナーも不動産業者も出来ればそのような事態は避けたいと思うので、保証会社を利用して、安心感を得るのだが、このような訴訟が起きてしまうとならば最終的には「余計な事はしないに限る」と思ってしまう。非常に悪循環である。良かれと思った事が最終的にやらなきゃ良かったになる事ほど虚しい事はない。
先日新聞の投書欄に非正規雇用者さんの投書が掲載されていた。賃料を遅延していて、管理会社から「期日までに支払わなければ鍵を交換する」と威圧的に言われたそうだ。自分自身の非は認めるとした上で、最後の一文が非常に気になった。
「儲け本意の弱者切り捨ての事態が日本各地で起きていると推測できる」・・・
う~ん~儲け主義か~そんな風に言われてしまうと何もかも嫌になってしまうな~有限会社やな瀬不動産