夕刊に「花緑・菊志ん二人落語会開催」の記事が掲載されていた。花緑は二年前の夏に観てから気になる噺家の一人であった。
花緑は15歳で祖父五代目小さんに入門し、22歳で真打ち昇進したエリートであるが、対照的に菊志んは大学卒業後に円菊に入門した遅咲きで、二人とも同い年の38歳である。若い二人の共演に注目しながら、前売券を購入して今月二度目の落語鑑賞に御徒町駅へと向かった。
御徒町駅から徒歩五分、不動産屋の足なら三分である。開演が18時30分だったので、18時の終業から全体的に早歩きをしてどうにかギリギリ直前に鈴本演芸場に到着した。すでに「立ち見です」の看板が掲げられている横を前売り券を得意気に差し出す。鈴本はビルの四階にあり、エスカレーターで上って行く。鈴本演芸場には過去に数回来た事があり、一度は小朝の独演会でその時は後方で立ち見だった。
鈴本の歴史は安政四年(1857年)に母体となる上野広小路に「軍談席本牧亭」という講釈場を始め、大正十二年の関東大震災以降に現在の場所に移り、昭和四十六年に現在のビルを新築したので、館内は新宿末廣亭や浅草演芸ホールと比べると新しいのだが、前席の背もたれに収納式小テーブルが付いているので便利である。館内は285席。予約した席はいつものように一番隅の席である。
ほぼ満席状態の館内が少し暗くなり、前座の柳家まめ緑(女性)から幕開けだ。その後に「おせつ徳三郎」の上下を菊志ん・花緑リレーで演じる。菊志んの躍動感溢れる口上と花緑の人情味溢れる口上も対照的でなかなか面白かった。ゲストの水戸大神楽曲芸の若き家元・柳貴家雪之介の曲芸にただただ見とれ、最後のもう一席は花緑は「反対俥(はんたいぐるま)」を菊志んが「お血脈(けちみゃく)」を演じ、たっぷり二時間半を満喫した。
ハネ太鼓に見送られ、鈴本演芸場を後にする。これがまた気持ちがいい。ちなみにハネ太鼓はお客様がお帰りになる様子をデテケ、デテケ(出てけ、出てけ)と打ち、木戸を出て皆さんがいろいろな方角へお帰りになられるので、テンテンバラバラ、テンテンバラバラ、客席からお客様が全員出られたところで太鼓の縁をたたいて、カラ、カラ、カラ(空、空、空)と打ち、最後に太鼓の縁をバチでこすって、ギーと木戸の鍵をおろしましたと言う擬音を出して本日の興行はすべて終わりとの意味があるそうだ。
う~んやはり落語はいいものだ。
有限会社やな瀬不動産