映画「無法松の一生(1958年公開)」を観た。
【解説】岩下俊作の原作から故伊丹万作と稲垣浩が脚色、「柳生武芸帳 双龍秘劔」の稲垣浩が再び監督する往年の名作の再映画化。撮影は「遥かなる男」の山田一夫が担当した。「柳生武芸帳 双龍秘劔」の三船敏郎、「張込み」の高峰秀子という顔合せに、芥川比呂志、笠智衆、宮口精二、多々良純、有島一郎などが出演。色彩はアグファカラー。
日露戦争時代の話で、「車なんか引いてる」との台詞から車夫の仕事は蔑まれていることが分かる。特に高峰秀子演ずる未亡人がひとり息子をボンと呼ぶのを止めて欲しいと訴え、代わりに要望した呼び名が「○○さん」だった。それだけで身分の違いを涼しい顔して明確に表している台詞だった。映画「伊豆の踊子」同様、職種差別をあからさまにしていた時代である。本作品では男子たるものが底辺にあるのだが、様々な平等・無差別・横並びを掲げる令和の世で観ると何だか気持ち良い作品にも思えた。そしてそもそも松五郎はそれほど無法ではないように思えたし、親の甘い躾はこの時代から続いているようだ。
以前訪れた小倉駅が登場するので懐かしく思いつつ、同じ福岡でも博多と小倉の微妙な違いはこの時代から育まれていたようだ。ちなみに外国訳のタイトルは「Muhomatsu,the Rikisha-Man」だった。