映画「飢餓海峡(1965年公開)」を観た。
【解説】水上勉の同名推理小説を内田吐夢が映画化。「砂の器」と並び、日本映画の傑作と称される。東映が監督に無断で編集した167分版と、監督自身の手による183分の完全版がある。昭和22年に青函連絡船沈没事故と北海道岩内での大規模火災が同時に起きる。火災は質屋の店主を殺害し金品を奪った犯人による放火と判明。そして転覆した連絡船からは二人の身元不明死体が見つかった。それは質屋に押し入った三人組強盗のうちの二人であることが分かる。函館警察の弓坂刑事は、事件の夜に姿を消した犬飼多吉という男を追って下北半島へ赴く。
冒頭からテンポの良い展開で引き込まれ、伴淳三郎演ずる刑事の執拗な捜査にさらに吸い込まれるものの、途中から次第に中だるみ。左幸子演ずる情婦の三國連太郎演ずる主人公への想いが深いが、連太郎が拒絶する気持ちも分からなくもない。高倉健が途中から登場するのだが、状況証拠と自白に頼るのは当時の捜査方法なのだろうが、令和の年になるとどうにも受け入れがたく、連太郎以外で唯一幸子と面会している連太郎夫人への裏付けがない部分を始め、止めない船のラストシーンまでもやもやしたまま3時間のエンディングを迎えた。作品の根底にある想像を絶するほどの貧困さであるが、なかなか私には理解が難しい。ちなみに情婦の勤務していた妓楼は亀有だった。
無断で編集した167分版が気になるが、三國連太郎は実にいい男だった。