北海道昆虫同好会ブログ

北海道昆虫同好会は北海道の昆虫を中心に近隣諸国および世界の昆虫を対象に活動しています。

エゾシロチョウ交尾拒否行動に関する考察

2015-07-05 21:57:41 | エゾシロチョウ 
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エゾシロチョウ交尾拒否行動に関する考察

エゾシロチョウ♀の交尾拒否の主なシーンは 1. 羽化直後交尾中のとき



 2.交尾後まもない♀が吸蜜中、ないし静止中のとき


  3. 産卵中の♀に対するもの





  4. 交尾も産卵も既に終了した♂♀の交尾強要・拒否行動 といった4つのパターンがある。






いずれも♂は必死に交尾をせまるが当然ながら♀に交尾する気はまったくないので100% 交尾は不成立に終わる。

もっともよく観察されるのは 4. のパターンだが、初夏の道東なら、それこそどこにでも見られるありふれた光景だ。





このとき必死の♂に対して♀は羽根を大きく開いて、まれにモンシロチョウのように尾端をぴっと短時間上に上げることがあるが思い切り挙上することは少ない。

この際♀は、♂の前足で前翅付け根あたりをはげしくひっかれ羽根の鱗粉が落ちてスケスケの羽根になりながらも、あまり気にもせずしばしば平然と吸蜜を続けている。

交尾後の♀に対する余りにも空しい♂たちの行動は♀にとって一見したところは迷惑千万そのものに見える。

特に パターン3. の産卵行動中の♀にしつこく交尾を迫る♂の行動などは、一体どのような意味があるのだろうか。

しっかり産卵する葉を決めた♀は最初は慎重に時間をかけて一卵ずつ産んでゆき、少しずつピッチをあげながら1-2時間かけて膨大な数の卵を1層のシート状に産み付ける。

この間、♂は絶え間なく交尾を迫って産卵中の♀に接近し、その都度やたら派手派手しく羽根をばたつかせる。

とうとう♀は産卵を中断しいつもの交尾拒否行動をとる。♂があきらめて飛び去ると、またおもむろに産卵を開始する。と思うまもなくまた別の♂がやってくる。

最初は見ていてイライラした。なんとひどい♂だろうか。やっとの思いで産卵にまでこぎつけたのに♂のじゃまに閉口する♀がかわいそう。いい加減にしろ。♀はこんな馬鹿な♂たちの激しい妨害にくじけず産卵を完結させてほしい。

しかし、長いこと、これらのシーンを見ているうちに  まったく別の考えが私の頭に浮かんできた。

神様は無駄なことはしないというが、これら♂のしつこい行動は、実は重要な意味があるのではないかと考えた。

3.の産卵中はもちろん、1.の羽化直後交尾中の時、2.の交尾後間もない♀が吸蜜中や葉の上で休んでいるとき、これらの場面は実は♀が最も天敵( クモ、アリ、ハチ、小鳥? その他 )に襲われやすい時にほかならない。

しつこいほど絶え間のない♂の一見無意味な交尾を求める、やたらはではでしい行動は、この危険な瞬間に天敵が♀を攻撃するのを躊躇させる効果があるのではなかろうか。

この考えはやがて私の頭のなかでは確信に変わった。

そう考えれば♂たちの一見すると馬鹿馬鹿しく見える行動や しつこい♂のじゃまにもくじけず産卵を続ける♀や、♂にはげしくせまられながらも悠然と吸蜜を続ける♀の様子も説明がつく。

パターン4.は特別な意味はなくまったく惰性で行われているに過ぎない。皆さんがもっぱら見かけるのものの多くは、このパターン4.であろう。

一見、理不尽に見えるアオムシコマユバチ繭塊を命がけでまもりぬくエゾシロ幼虫のふるまいも、あたかもおろかしく見える♂たちの交尾をせまる行動も、実はエゾシロチョウ個体群維持のための精緻な仕組みの一環なのかもしれない。


産卵も終わり、もうしつこい♂の接近もなくフキノ葉上で休む♀。実はもっとも天敵に襲われやすい瞬間ではあるまいか。



♀へのちょっかいかけもしなくなりのんびりと吸蜜中の♂。


葉上で休む♂。

エゾシロチョウノ交尾拒否行動に関する記事は一応これでいったんお休みですが、生涯でこんなにまじめにエゾシロチョウを観察した経験はありませんでした。


本当に実に多くのことを知りました。 これまではひたすら珍蝶、稀種を追いかけ回すことが多かった蝶人生ですが、観察も捨てたものではありません。






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パターン4. いわゆるエゾシロチョウ交尾拒否行動

2015-07-03 18:48:15 | エゾシロチョウ 
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パターン4. いわゆるエゾシロチョウ交尾拒否行動


2015-6-21(日) 晴れ

北見市周辺でアカツメクサ群落がきれいなピンクの花を咲かせ始めるとそこはエゾシロチョウの乱交パーティ会場になる。








産卵を終えた♀があちこちから飛来してアカツメクサに吸蜜している。

そこへ盛りがついたような♂たちがやってきて、♀に交尾をせまる。あっちでも、こっちでもエゾシロチョウの交尾行動みたいな異様な光景が見られる。

♂の交尾をせまる行動はいかにも激しくて、一頭の雌に数頭の♂がせまることも稀ではない。

たまりかねた♀がアカツメクサから地面に転げ落ちても、その上に覆い被さって執拗に交尾をせまる♂の行動が続く。







しかし、♀は決して♂に交尾を許すことはなく、徹底した交尾拒否行動をとり続ける。

見ていて♂がいじましくさえ思われてくる。

前述のごとくエゾシロチョウの交尾は♀の羽化直後に発生樹上で行われるため、ここでは♂は決して交尾はできない。

普通、♀も再交尾にいたるものはない。すでに♀たちの産卵は終わっていると思われ、♂は交尾できるあてもなく、しかしこの不毛の行動は果てしなく続けられる。


これらの行動の意味合いは何だろう。

多くの方々が、いわゆるエゾシロチョウ交尾拒否行動として報告したり観察したり撮影しているのはこの時期、このパターンのエゾシロチョウの行動であろうと思う。

       この項 続く



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エゾシロチョウ、大量産卵しました。

2015-07-02 21:04:07 | エゾシロチョウ 
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エゾシロチョウ、大量産卵しました。

発生樹である赤ボケの大株ではエゾシロチョウ♀たちが 2015年6月12日~16日のあいだに盛んに産卵を行った。



産卵場所は主に赤ボケの上部 1/3ほどの部分で、株の上部にある若い葉( 幼虫の食害で、一旦丸裸にされたところに出た新葉 )に好んで産卵した。





前述のごとく、しっかり産卵する葉を決めた♀は最初は慎重に時間をかけて一卵ずつ産みはじめ、少しずつピッチをあげながら1-2時間かけて膨大な数の卵を1層のシート状にロボットみたいな正確さで規則正しく整然と産み付ける。






いくらはげしく♂の交尾行動にじゃまされようとも産卵場所はいったん決めた場所からは微動だにせず、産卵終了までは移動することはなかった。








































赤ボケは枝にするどいトゲトゲがあるのでさがすのが大変であったが、ざっと見たところ 20卵塊ほどを発見した。 

およそ数千卵はありそうだが実際に数えてみる気には ちょっとならない。。

きっと見えないところにはまだあると思う。

       この項、 続く。

  いよいよエゾシロチョウ交尾拒否行動の謎にせまってみたいと思います。



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エゾシロチョウ交尾拒否 パターン3  産卵中♀の再交尾拒否行動

2015-06-30 23:31:52 | エゾシロチョウ 
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エゾシロチョウ交尾拒否 パターン3  産卵中♀の再交尾拒否行動

意外なことに♂がもっともはげしく♀に交尾行動をしかけるのは♀が産卵中の時である。




産卵中の♀にしつこく交尾を迫る♂の行動は、一体どのような意味があるのだろうか。




しっかり産卵する葉を決めた♀は最初は慎重に時間をかけて一卵ずつ産みはじめ、少しずつピッチをあげながら1-2時間かけて膨大な数の卵を1層のシート状にロボットみたいな正確さで規則正しく整然と産み付ける。





ブータンシボリアゲハのようにてんこもりの卵塊状に産むことは無い。

この間、♂は絶え間なく交尾を迫って産卵中の♀に接近し、その都度やたらと派手派手しく羽根をばたつかせる。














あまりの派手派手しさに、とうとう♀は産卵を中断しいつもの交尾拒否行動をとる。

やっと♂があきらめて飛び去ると、♀はまたおもむろに同じ位置で産卵を開始する。



と思うまもなくまた別の♂がやってくる。




見ていて、とてもイライラする。

なんとひどい♂たちだろうか。

やっとの思いで産卵にまでこぎつけたのに♂のじゃまに閉口する♀がかわいそう。いい加減にしろ。

♀はこんな馬鹿な♂たちの激しい妨害にくじけずがんばって産卵を完結させてほしい。

といった思いが強かった。

  この項、続く。






常呂町にて。エゾノコリンゴで産卵中の♀に複数の♂がしつこくせまっていた。





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エゾシロ交尾拒否パターン2.  交尾後産卵前再交尾拒否行動

2015-06-29 20:18:32 | エゾシロチョウ 
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にほんブログ村 アウトドアブログ 自然観察へにほんブログ村エゾシロ交尾拒否パターン2. 
交尾後、体力をつけようと体を休めたり吸蜜中の♀にせまる♂に対する交尾後産卵前再交尾拒否行動。


♀は羽根を大きく開いて、まれに、モンシロチョウのように尾端をぴっと短時間上に上げることがあるがモンシロチョウのように思い切りしっかりと挙上することは少ない。

よくみると前翅を大きく開くと同時に後翅を腹部にしっかりとかぶせて♂の尾端が♀尾端に接触するのを防いでいる。

この際♀は、♂の前足で、前翅付け根あたりをはげしくひっかれ羽根の鱗粉が落ちてスケスケの羽根になりながらも、そんなことは気にもせずしばしば吸蜜を継続する。

この余裕はなんだろう。









  赤ボケのとなりにあるヨドガワツツジに吸蜜中の♀に求愛行動をする♂。














♂もストローを伸ばしていることにご注目。必ずしも必死に交尾をもとめているとは思われない行動だ。







赤ボケの近くに植えてあるネギの葱坊主に吸蜜中の♀にせまる♂。 ♂にしつこくせまられながら、よく見ると♀はゆうゆうとストローをのばして吸蜜を続けている。興味ふかいことには、この間、盛んに♀にせまりながらも♂も時々一緒に吸蜜する。


今回多数の例を観察していてとりわけ興味深かったこととしては、♂はこんな行動をとりながら♀と一緒にストローを伸ばし吸蜜することだ。

本気で交尾しようとしているにしては、ちょっと不真面目、不謹慎にも見える。 さてこの際、♂は、本気で交尾しようとしているのだろうか。ふと、疑念が湧いてくるのを禁じ得ない。


交尾後の♀は発生樹からあまり離れず、♂のしつような接触にさらされ続けながらも体力をつけ、1-2日以内にいよいよ産卵行動に移る。

    この項 続く。






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