「世の中、ちょっとやぶにらみ」

本音とたてまえ使い分け、視点をかえてにらんでみれば、違った世界が見えてくる・・・かな?    yattaro-

「おくりびと」

2009年02月24日 | ニュース・世相
映画界最高の栄誉とされる、アメリカ映画芸術科学アカデミー賞で、日本映画「おくりびと」が外国語映画賞に輝いた。さらに、短編アニメ賞を「つみきのいえ」が獲得した。なんと二部門制覇は半世紀ぶりだという。すっごいことである。
個人的にはあまり貢献していないが、日本映画文化も決して廃れていない。むしろ世界に誇れるのは嬉しい。

今回の受賞作「おくりびと」とは、亡くなった人とその家族との最後の別れ目となる、遺体をお棺に納める専門職の人を言う。つまり、医師や看護師に次ぐ、場合によってはそれら以上に、遺体との接触の多い職業である。それだけに、その一挙手一投足に、遺族親族のシビアな目が注がれる。

実は私自身、納棺師という職業のあることは知らなかった。 なにせ、我が家からお葬式を出すのは35年ぶりである。その頃にはまだこの職業が存在しなかったように思う。

昨年11月、母の葬儀に際して、それまで知らずに過ごしてきた葬儀全般の多くの知識を注入した。その中の一つが、納棺師つまり「おくりびと」という職業である。

枕勤めをして一晩我が家に泊めた翌朝。専用道工具一式を積んだワゴン車が横付けされる。男女のペアーが慇懃な挨拶の後、テキパキと部屋に防水シートを張り巡らし浴槽を搬入。ふすまを開け放った隣の部屋の遺族親族に完全公開で湯灌が始まる。
湯灌は「逆さ水」といわれるように、お湯の温め方も、水にお湯を足して温度調節をする。遺体に浴びせるお湯も、必ず足下から胸元へひしゃくでかけて上げる。通常我々が、お風呂で、肩や胸からお湯を浴びるのとは全く逆な方法を取る、これが逆さ水なのだという。

そうして遺体を生まれたままの素っ裸に一度戻す。この一瞬が非公開。真新しい下着、こちらの希望で最も新しいお気に入りの和服を着させてもらう。頬紅の色・口紅・指先の化粧にに至るまで、一つ一つサンプルを見せられながらこちらが色を選ぶ。その手際たるやお見事!の一言に尽きる。そして納棺。

これから永遠の別れとなる人に、まさに新たな命を吹き込んで、紅さす顔に微笑みまで浮かべて旅立たせる見事な演出。おくりびとの役割は、死者を送るのではなく、遺族親族にその永遠の人間としての姿を焼き付かせてお見送りさせる介添職人さんなのだと気付いた。 

このように完璧なまでに、死者を見送る日本人の心根、優しさ、死者を弔う文化、みたいなものが、映画を通して世界に受け入れられたのだろう。 もちろん、制作・出演ほか多くのスタッフの力が結集した結果であることも間違いない。

        ( 写真: アカデミー賞で手にする、オスカー像 )
コメント (12)
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