ようやく満開を迎えた今年の沈丁花
遅い春がようやくやってきた。
あの穏やかな薄ピンク色の花と共に、ふくいくたる甘い香りの沈丁花が咲き始めると、私にとって本当の春の訪れを実感させられる。
『厳しい寒さが峠を越し、女性のお白粉を思わせる沈丁花の香りにのって、ようやく春が姿を見せようとしている。長い冬眠から醒めようとする……』で始まる随筆を、“工場ニュースいわくに”に投稿したのが、忘れもしない35歳になったばかりの3月であった。遠慮気味に400字で書くつもりが460字に膨らんでしまったことを覚えている。
1977年4月1日発行第9号に掲載。これが実質的スタート。何回続けられるか分らないまま、気軽に「やぶにらみ随筆」と命名。本名で書くのも芸がないかな……などと生意気も手伝って、ペンネーム『一丁八太郎(いっちょうやったろう)』。今もってその愛着を捨て切れず、単純にそのままハンドルネーム『yattaro-』になっているという次第。
月に一度の提出だから、3回か5回書ければ十分だ・・・と高をくくっていたら「もうちょっと続けませんか」と編集担当者から持ちかけられた。最初ころの謝礼は、丸い缶に入ったキンキラ光る飴であった。文字通り飴をねぶらされて……。そのうち20回、30回と続く。「辞めましょう」とはなかなか言わない。先方が言わないからこちらも言わない。少しばかりネタに困りかけたころを見透かすように、モニターの反響を聞かされて「もう少しやってみましょう」と。そのうち100回記念の感謝状を工場から頂く。もう辞められない。文字数も徐々に増えて、最終的には1200字に定着。
定年退職までの25年間、さて一体何編書いたのか・・・。クイズにもなりはしないが、その全てが今はファイリングされ書棚の重しになっている。
あれからちょうど35年。70歳という節目も迎えたことだし、あの活字になった感動を今一度味わってみたい。この衝動は抑え難い。思い切ってやってみよう!!
冬来りなば春を待ち望む寒さに弱いyattaro-。毎年巡る来る春を、この沈丁花の香りと共に迎え、来し方を振り返りながら生きている。
何故かしら特別な想いをつつむ、お白粉の匂いに似た沈丁花。今年も見頃を迎えた。