餅は餅屋というけれど。「素人が下手な手出しをするより、その道の手練れに任せた方が仕上がりがきれいだよ」「いろんな経験を積んだ人のやることは無駄がない、そつがない」ということなのだろう。
でもこのことわざ通り、この時期家庭用の餅まで餅屋に任せたら、いくら餅屋さんでも忙しさに揉まれて粘りきれず伸びてしまうんじゃないかな。
だからというわけでもないが、我が家の正月餅はもう長年自家製を守り続けている。かつては二人の嫁いだ姉が、それぞれ一家で里帰りして来て、朝早くから昼過ぎまで、蒸し、石臼で搗き、揉んで丸める。12月27か28日の一大イベントであった。
一度は、かまどの火を焚きすぎて屋根に伸びる煙突の周りが燃え始めているの気づき、大慌てで消し止めて事なきを得た厳しい経験もある。
そのくらいに、年に一度の正月用の餅つきは一族のきずなを結ぶ大切な日でもあった。
ああそれなのに、特に今年の場合は誰一人お手伝いという名のお邪魔虫もいない、高齢者二人の静かな餅つきとなった。
里帰りしてジジババとの餅つきを楽しみにしていた姫孫も、コロナに怯えて県マタギの里帰りを見合わされて、電話の向こうでベソかいている。
台所の片隅でウィーンとうねりを立てる餅つき機が、湯気を上げてピー。搗き上がったよと教えてくれる。
問題はここからである。アッチッチアッチッチ、それでなくても面の皮と同じく薄い皮が、餅の熱さただれそうになるのをがまんして、ひたすら揉む。なんとか二臼分4升のお米を餅にした。
だれが喜ぶのか。二人の子供家族9人と近くに住む私の姉。お鏡餅だけでも6重ね分をつくる。遠くは野菜などたっぷり添えて宅急便で発送。
「手がかかるねー」と言いながら、やっぱりいそいそと忙しい年末の一日を過ごす。ここにもコロナの奴メの影が迫ってくる。
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