人間とはよくも悪くも「欲」という厄介なものを持つ生き物である。
欲があるから努力する。我慢もする、涙を呑んで捲土重来を期す。裏返すと、欲があるからありとあらゆる犯罪を犯す。
まっこと厄介で困った生き物でもあるが、人知れず努力をし我慢もできる可愛さも持つ生き物でもある。
欲を持つことの最悪の例は、目下報道を賑わせている、大阪高槻市の1億数千万円という保険金殺人事件である。
自分は働かずにいて、ただ悪知恵だけを働かせ、世の中の仕組み悪用して濡れ手に泡の大金を手に入れる。そのためなら人の命の尊さなど屁とも思わない蛮行に突っ走る。いわゆる保険金受け取りという相続にからむ話である。
そんな悪事は置いといて、昨日、今日と銀行や郵便局を回って、突然亡くなった姉の預貯金口座の解約手続き、つまり姉の遺産相続の手続きを終えた。現在の金融機関では、こういった口座解約や相続手続きに手慣れていると見えて、意外と簡単であったのには驚いた。
全国ネットで親族の印鑑証明付き承諾印や戸籍謄本など要求されたら面倒だなーと考えながら銀行窓口に出かけた心配は杞憂に終わった。これは助かった。
ただ一つ、郵便局はそうは行かない。1000円に満たない残高口座を解約するにも、身寄りや血縁親族がない姉の死去の場合、先ず生存の姉弟の承諾が必要。続いて姉弟死亡の場合は、それこそ全国に散らばる姪・甥の印鑑証明付き印と、戸籍謄本が必要という。「そんな面倒・煩雑な手続きが要るのなら口座解約をせず、そのまま放棄します」という相続放棄がいとも簡単に暗黙の了解を得た。こちらも助かった。
もっとも、姉の銀行口座には遺産と言うほどの金額も残っておらず、相続人だけが裕福を味わうということでもないことから、書面上の手続きで相続を認め、口座の解約が終えられた。かくして、姉の急逝という一大事発生からおよそ4ヶ月。一通りの事後処理を終えた。
みしも、遺産を分配するほどの大きな金額が残されていたら、思わぬ臨時収入を宛てにされ、姪・甥対叔父・叔母の欲の張り合いが勃発しかねない遺産相続手続きであるが、分配するに足らない小額で、何のもめ事も、いさかいもなく最終決着がついたことを喜んでいる。これも、上手に使い切って旅立った姉の、弟へのはなむけだったのかも知れない。
ヘタに多くの遺産を残して、欲の皮の突っ張った親族同士の争いを引き起こすより、自分の代で貯めたものは自分の代で使ってあの世へ行くのが遺族に対する思いやりですよ・・・という教訓の相続活動であった。