皐月は鯉の吹き流し。いよいよ今日から風薫る五月、いい季節である。好きな季節である。
ただゴールデンウイークを挟むこの時期は、薫る爽やかさとは裏腹なモーレツな風が吹き荒れることがある。まさに今日がそんな突風の日であった。
昭和50年、1975年に長男が生まれた。ちょっと厳しい事情を乗り越えて無事に生まれてくれた長男であっただけに、若い父親は張り切ったのを覚えている。以前住んでいた家は今より少し小ぶりで、前庭も狭かった。どう考えても「少し無理だろうね」と思案している目の前に「長男初節句おめでとう」のメッセージとともに届けられたのは、高さ5mの勇壮な「祝い幟旗」であった。
前庭の狭さも何のその、ヒノキの旗竿を調達し、自分でしっかり穴を掘り立てた。
勇壮にはためく風を喜んだ。それもつかの間、風は強くなる一方。あの丈夫なヒノキの旗竿が柳の如くしなるほどの皐月の風。どうか折れないで!大切な長男君のお祝いなのだ!!と天に向かって叫んだ。幸い天は若い父親の切なる願いを聞いてくれた。穏やかな風に戻って、勇壮な武者絵をゆったり見せてくれた。そんな遠い昔を思い出す、すさまじい風の一日であった。
そんな心配もした長男君も、二人の姫孫をプレゼントしてくれて、先ず先ずの日々である。
玄関わきの小さな植え込みにある鉢植えのピラカンサが、小粒の白い花に包まれている。今日の厳しい突風にも散らされることなく、やがて実を付け赤く黄色く熟れていく。願わくば残された日々をそんな風に生きられるといいね。
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