夕食のテーブルに蕪や大根の酢の物が出てくると、ついテーブルに置いてある日本酒の瓶に手が伸びる。
毎晩晩酌というほど呑める口でもないしその習慣もない。ただ、蕪や大根の真っ白い酢の物で飲む酒は旨い。
たった猪口一杯のわずかな酒でも心地いいものがある。下戸には下戸の呑み方で美味しさを味わっている。
そんな時ふとおふくろを思い出す。テーブルに酢の物があると、ほんに嬉しそうな顔をして、自分で買った四角い猪口にお酒を注いで持って来て「アンタもお呑みんかー」と誘う。そのころは盆か正月以外は家で酒飲むことはなかったし晩酌の習慣もなかったので「オレはいいから、おふくろが好きなだけ呑みんさいや」みたいなことを言って、さっさと食事に取りかかったものだった。今にして思う、も少し温かい付き合いが出来なかったものか、と。
85才まで現役を通し「これ以上仕事を続けて怪我でもしたら、あんたらー若い者が世間に嗤われるようなことがあったらいけん」と言って小さなお店を辞めた。そんなおふくろのささやかな楽しみが、酢の物があるときの一杯の晩酌。よし俺にもちょだいって相伴してあげたら、おふくの喉を通るお酒の味が数倍になっていたのだろうなどとつくづく思う。未熟者でごめんな、自分のことで精一杯っだったね~。
今さら何を言っても始まらない。石に布団は着せられないからね~。
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