「オーイ!野菜ができたぞ~、食べるか~」 くだんの有難い同級生からの電話。
「家まで持っていこうか・・・」「畏れ多いこと、オレがもらいに行くよ」「それじゃ、中間のあの場所で会おう」
話は決まり、すっ飛んでクルマを走らせる。
大きく、しっかり巻いたハクサイ、長い普通のダイコンに聖護院という丸いダイコン。丸々肥ったカブ、そしてもぎたてユズを軽トラに積んで。
おまけに、「今もらったシシ肉もやるよ」と。血液検査済み安全保障付きのイノシシの肉塊までもらった。
待ち合わせ場所にある自販機で、熱い缶コーヒー飲みながらしばし立ち話。
「また家にゆっくり遊びに行くよ」というと「山や畑で遊びよるからいつでもおいで」と。
わが家でも一応、丸ダイコンもカブも植えてはいるのだが・・・土が悪いのか手入れが間に合わないのか、葉っぱばかり伸びて根っこは小さい。
「いつになったら食べられるんじゃろうか」心配していた。なんのことはない、大量生産者から軽トラでどっさり。
「娘やらお姉さんたちにもあげりゃいいよ」と、親せきの分まで心配してくれる。足を向けては寝られない友。有難きかな。
そんなダイコンの中に1本。作ろうにも作れはしない芸術的?な逸品が混じっていた。
おそらく、孫に見せて喜ばせようという、友の気配りだったに違いない。被写体としても申し分ない「モデルさん」である。
ポーズをとらせたり、化粧を施したり・・・。孫に見せる前にジジがしっかり遊んでしまった。
さかさまにしたら、白く燃え上がる炎(ほのお)に見える。花瓶に挿せば、どんなきれいな花にも見劣りしない存在感がある。
お化粧してやったら、これから始まる忘年会シーズンのタコ踊り余興にも見える。
裏側に淑女の顔を描くと、ちょっとはにかんだ女性が、大きく脚を組んだ姿にも見える。
畑の土に埋もれた世界で何が起こったのか知らないが、こんな珍しいダイコンも出来ることがあるということ。
それも全く意図しない偶然の世界というのが何とも面白い。
ハクサイやダイコンの美味しさ、シシ肉の珍しさと歯応えあるうまさに、感謝しながら囲む夕餉ではあるが、楽しく遊ばせてくれた傑作ダイコンにも感謝である。
それよりも何よりも、自前の新鮮野菜をさりげなく届けてくれる友の優しさ。どんな感謝の仕方があるのか、考えてみたい。
秋の終わりから冬にかけて降る雨を「しぐれ(時雨)」といって、気持ちも身体も冷やす雨と言われるが、そんな時雨の時季にこれほど温かい気持ちにさせられる倖せ。やはり、足を向けて寝たらバチガ当たりそう。
どうやって記念に残そうか考えたんよ。
楽しい表情だったでしょ。
あれこれイタズラするには楽しい瞬間でした。
孫たちも大笑いしていました。
面白い姿形を見せてくれるものです。
こうして散々遊ばしてもらった後、形はどうであれダイコンはダイコンです。
また何かに形を変えて、お腹を満たしてくれるのでしょう。
それにしても、足を向けられない方向が多くて・・・。
傑作傑作!
いろいろなことを考えながらしばし興じられたご様子に、思わず笑みがこぼれます。
ときたま、珍しい成長をした野菜が新聞に載っていたりしますが、手書きでモデルさんに仕立てたのもお見せしたいくらいです。
我が家も最近新鮮な野菜を沢山いただくことがありますが、他の何をいただくよりありがたく重宝しています。
本当に、足を向けて眠たら罰があたりますね。