久しぶりに訪れた山間の小さなレストランは、周りに新しい住宅も建設され雰囲気が変わっていた。
初めて訪れた頃は、本当にこの先にレストランなんて有るのだろうかと不安になるほどのところだったのです。
そして、その時は思わず宮沢賢治の童話「注文の多い料理店」が頭の隅をよぎったことを思い出す。
でも、にこやかに迎え入れられたけれど、「クリームを縫って下さい」とも「塩をすり込んで下さい」とも言われなかった。
先客には二人の女性のみで、「空いている席のどこへでもどうぞ」と言われ窓際に席を取る。
そして、スベルべママの誘いに乗った上の娘夫婦の到着を待っていた。
このレストランは経営者が店のイメージを抱いてコツコツと椅子・テーブルの類も買い集めたと言う。
いや、趣味の良い食器類もそうして長い時間を掛けて集めたものらしい。
娘達も到着し、四人分の昼食の注文を終えると間も無く料理が運ばれてくる。
「すみません、今日は最後でメニューは一つだけ。主食だけ玄米ご飯かパンか選んでください」
大食漢のスベルべが選んだのは玄米ご飯。
少食のスベルべママが選んだのは焼き立てのこの店の手作りパン。
(続く)