畑に吹く風

 春の雪消えから、初雪が降るまで夫婦二人で自然豊かな山の畑へと通います。

命がけで働いた日々の記憶(コロリさん有り難う)。

2014-10-22 04:13:29 | 暮らし

 群馬県の横河に「DD53」が動態保存されていると、何年か前に「コロリ」さんにうかがった。
そこを訪れられた「コロリ」さんがその幻の「DD53」を写真に納め、CDで送って下さった。


 れこれは北海道に配属された「1号機」です。
スベルべが乗務し、慣れ親しんだ「3号機」は解体され、スクラップへと無残な運命をたどる事に。

 最初の1号機から最後の3号機が生産されるまでの期間は不明にして分かりません。
でも、見た目が全体像はともかくとして、油圧の配管などが3号機よりも剥き出しでよりワイルドな姿です。

 翼の横に二本のかんぬきの様な鉄の棒が付けられているのが見えます。
これは、普段ウイングと呼ぶ全開で幅6メートルになる羽根を、更に1.5メートル伸ばし7メートルにする仕掛け。

 「段切り翼」と呼ばれていましたが、止め金を外しあのかんぬきのような鉄の棒で再び固定して使いました。
全幅で7メートル、片幅で3.5メートル。通常よりも50センチ伸ばすだけで大変な除雪量となります。

 でも、滅多にやらない作業で50センチ伸びただけで電柱にぶつかるように見え肝を冷やしたものです。
この「段切り」作業を実際に出来る人は何人もいませんでしたね。


 この説明書きに拠ると総出力は2,200馬力になっている。
しかし、スベルべが乗務した3号機はたしか、1,500×2の3,000馬力と聞いていたけれどもなー。

 製造年月が昭和40年1月と有りますから、スベルべが入社する一年前の製造。
ふーん、昭和41年に入社したスベルべよりも先輩だったのですねー。
と、すると3号機まで連続して生産されたのかも知れない。

 入社したばかりの冬の事、大先輩がスベルべの職場の直前で橋梁の手すりを齧ってしまった。
先輩が頭から汗の湯気を立てながら、雪の線路をゴム長姿で走って報告に来た姿が目に浮かびます。


 ほら、石打駅の構内でこれから除雪作業に向かう若き日のスベルべですよ。
お仕着せの制服を嫌い、茶色のウインドブレーカーを着た、ちょっと嫌味な青年ですねー。

 両側の巨大な翼で大量の雪を掻き込み、そしてスベルべの身の丈以上の大きさのローターで砕きます。
そして、その次に位置するこれまた巨大な回転翼で、1mもの幅が有る排雪口から雪を吹き出していました。


 これは、「DD53」よりも一回り小さい「DD14」型ロータリー除雪車です。
左の今は亡き先輩とコンビを組み、就任したばかりの「高木総裁」をお乗せした際の記念写真。

 血気盛んなスベルべは、大先輩とも衝突することしばし。
でも、自他共に許す、名コンビ雪の線路の守り神と自負していた二人でも有りました。


 これは、「DD14」の作業風景。
これでも、十分に迫力が有りますから、「DD53」の作業風景はこの世のものとは思えないほどの迫力。


 昭和40年代の終わりころの豪雪時の写真ですね。
反対側線路の列車を止めて、その線路を越えて投雪する「逆投げ」と呼ぶ荒技、花形作業です。

 雪害対応のため自衛隊の応援を要請した年でも有り、右側の斜面に制服姿の自衛隊員の姿も見えます。
上越新幹線が開通するまでは文字通り、新潟と関東圏を結ぶ大動脈としての役割を担った線路でした。

 先日の日曜日、先の横河での写真を下さった「コロリ」さんが思いがけず農天市場を来訪されました。
「なんだか、お姉さんの話しではDD53で神社を壊したそうじゃないですか」なんて言われました。

 スベルべ名誉のために釈明解説しますが、それは神社の戸を倒した、いわば軽度の事故でした。
5駅間を除雪する作業ダイヤも大雪のために大幅に遅れて、一駅間をようやく終えたところで真っ暗闇になってしまった。

 生意気なスベルべは上司に電話を入れた「日没後のロータリー除雪は禁止されていますがどうしましょう、
万一何かが有ったら、責任を問わないと言うことであればやります」と。

 万感を込めた「やってくれ」との返答を貰って左右前後、吹きあげる雪にライトが反射し何も見えない中を進んだ。
先の説明に有るように、一つ扱いを間違えたら大事故になってしまう、怪獣、モンスターマシンのDD53。

 それを感を頼りに「あ、あのカンカンの音はあの踏切だな、あ、この音はあの鉄橋だな」と盲目状態の作業。
そうそう、僅かに傾く車体の角度でどのカーブかさえも分かりましたね。
 
 ねー、「コロリ」さん、そんな状況下で神社の戸を一枚倒しただけだなんて大したもんでしょ。
今では自分でも信じられないような、綱渡りの神業的な仕事を終え、運転席から降りる時は足が震えていましたよ(笑)。

 遠い遠い昔の話になってしまいました。
昔話で自慢話をするのは年老いた証拠のようなものでしょうが、でも記録していないと忘れ去られてしまいますからね。
コメント (3)
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