「採り頃を迎えたアンニンゴ」
「摘み採ったアンニンゴ」
山の畑の周りに何本かの「アンニンゴ」の木がある。五月になり畑の仕事が忙しくなる頃、
蕾が膨らみ始め採り頃となる。
「アンニンゴ」は越後の呼び名で正しくはバラ科の「うわみずザクラ」または「うわみぞザクラ」言う名である。
腰が強く、折れにくい木質は鎌や、鉈の柄としても使われそのため「ナタヅカ」と呼ぶ地域もあるようだ。
最近は雑木も切られることが無くなり、大木となった「アンニンゴ」も見受けられる。
仕事の帰りに採って帰ると、妻が簡易漬物器で塩漬けにする。酒、ビールのつまみに美味く、
又、妻は弁当の付け合せにご飯の上に何本か載せてくれる。独特の香りが特徴で、しいて例えるなら、
昔親が割って食べさせてくれた梅干の核の香りに似ている。
蕾のうちは他の緑に紛れて分り難いが白く花が開くとその木の多さに驚く。
その実を焼酎に漬けたのが「アンニンゴ酒」である。しかし、実の採取時期を誤ると酷い目に会う。
普通は身が青いうちに仕込むのだが、父がある年張り切って熟した実で作った。
ところが飲み頃と思えた頃、焼酎の表面に細かい虫が涌き、その匂いは嫌われ者のカメムシそのものであった。
カメムシがある時期卵を産み付けるらしい。秋まで残った実は最後は艶のある黒色になり甘い味となる。
(こんな形で小さな新聞、地方紙に連載を始める予定です。)