「○○」なる名店あり(その2)
その後女将さんが言うには、「私が、お釣りを準備してカウンターに行くと、この人ったら、
お客さんと喧嘩しているのよ」なんて事さえあったそうだ。本当に正直一本気の職人気質なのでした。
そんな素晴らしい包丁人の内緒話。奥さんが病気で入院されて最も困ったのはご自身の食事だったとか。
なんと、食事作りに嫁いだ娘さんさえ来ていたとか。本当の懐石料理の包丁人は総菜作りなど、不得手らしい。
奥さんが退院すると、ご主人が野菜切り、奥さんが味付けと言う二人三脚での総菜作りになったのだとか。
そんなご夫妻とのお付き合いは今でも続いています。
なんと、勿体ないような腕利きの包丁人が我が家の畑の手伝いに来て下さるのです。
中越地震が取り持つ縁と言えば、大げさかも知れないが、あの地震さえなかったら、
本格的な懐石料理を楽しむ事も、無かったのかもしれないと、今でも時々思う。
(終わり)
(新聞の連載での店名は実名。差しさわりもあるかと思い○○としました。)