夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「報復ゾンビ」-14-

2016-03-29 09:11:28 | 自作の小説
碧(あおい)グループの総帥・緑矢克雅が溺愛していると噂のある孫娘のあきひを連れて 新垣豊造の見舞いで病室を訪れたことは 新垣忠明を激怒させた
忠明の息子の忠秀の見合相手には頼み込んで漸く親戚の娘に過ぎず しかもそれも見合する前に破談となった
ー新垣蓮(しんがき れん) あんな甘ちゃんのガキの為に! 足元を掬われようとは!

不幸になる者は大抵更なる不幸を自分で呼び寄せる
馬鹿なりにその素行の悪さを利用した息子の忠秀
悪い事をしていいのだと開き直った忠秀は 悪い方へとばかり流れー
素行の悪さが父親の忠明の首を絞める

忠明は 一郎が静子と駆け落ちした時は チャンスだと思った
豊造には一郎は一人息子だ
他には子供がいない

兄の豊造の会社は自分が貰ったも同じーと 忠明は勝手に思った 決め込んだ


それがー一郎の子供を豊造は「自分の子供」として育てた

しかもこの連が 忠明には小癪なことに絵に描いたような孝行息子
出来がいいのにでしゃばらず

その苦労知らずのぼんぼんが 忠明の一番の邪魔になった

おかげでー忠明は会社を追い出されてしまった

懸命に作ったつもりの碧グループとの縁すら 何もしていない連に持っていかれようとしている

優雅かつ品のある振る舞い それでいて隙の無い動き

連が大学時代 一度だけ忠秀の連れが階段から突き落とし 怪我をさせることには成功したがー
たいした怪我にはならず 豊造の警戒が強くなっただけだった

蓮の前に連を殺しておくべきだったのだ
もっと小さいうちに

そうすれば豊造だって諦めただろうにー忠明はギリギリと歯噛みする

蓮を迎えに行こうとする義姉の輝子は すりかえておいた薬で倒れ 点滴に細工させて殺せた

何に気付いたか 豊造はかかる病院を変えた


忠明は焦っていた
忠秀とは連絡が取れないままだ


また遊び呆けているのか

病院にいるうちにどうにかして豊造を片付け 連にも死んでもらって 会社を自分の手に取り戻すのだ

どんな手を使っても それしかないーと


兄の豊造の一人息子 一郎が死んで 社長になるのは自分しかないと 忠明は待ち続けた
豊造の引退を


その為に 一郎が千希良静子に惚れていると気付いた時にけしかけた
ただでさえ悪い新垣の一族と千希良の一族が揉めるように絶えず仕掛けた 火種をまいた

一郎に駆け落ちしかないと思いつめさせた

逃げて子供でも作って既成事実を作ってしまえと
いかにも為を思ってのことだと 言いくるめていった


そして一郎は死んだ
一郎の子供が残る

豊造は経営の手綱を離さない


忠明の息子の忠秀は・・・・・期待外れな不出来ぶり
小さな頃は昆虫などを捕まえてきては 足をもいで喜んでいた

まだ・・・無邪気だった


少し大きくなると異性のパンツの中ばかりに興味を持つようになる

似たような悪ガキとつるみー金さえやればどんなことも喜々としてやる

忠明は馬鹿と鋏は使いようだと割り切るようにした

息子だと思うから 腹が立つ


ひきかえ連の優秀さも癪に障った


豊造が気にしている店員が・・・連の双子の姉の蓮だとわかると 忠明は忠秀をけしかけた

連の姉と知ると 忠秀は喜んで蓮を攫い 女にやりたいことをやりつくした

忠秀の仲間は 連の通う大学へもぐりこみ階段から突き落とす
死ねば良かったのに連は ただ用心深くなった


邪魔な連のせいで -あの連さえいなければ!


繰り返し 忠明は連を呪う 兄の豊造を


自分以外の全ての人間が悪いのだと

酒浸りで悶々とした日々を送る忠明の心は恨みばかりで満たされる

脳まで酒で溢れているような忠明に しつこく鳴る電話の音が突き刺さる


電話の内容は

忠明の別荘で 忠秀と思われる死体が発見されたーというものだった




それからー

警官が迎えに来て・・・・・・忠明は忠秀であったモノを見た

別荘で発見されたDVD パソコンの画像 写真


忠秀が書き残していた 忠明の頼んだ仕事のメモ

警官の目は 悲惨な死に方をした息子の親を見る目では無かった


焦げた忠秀

忠秀が攫っては女性をなぶり殺しにするまでの映像


忠秀の仲間も行方不明になったり 死体で発見されたりしていると言う


別荘の近くで交通事故で死んだ男もいるのだと

仲間割れではないか
挙句に泥酔した忠秀は 飲酒運転をしようとして 車に乗り 煙草の火をつけるつもりが 自分に火をつけてしまったのではないかー


忠秀に好意的な見方をする人間はいなかった

かわいそうに 
どうして誰も忠秀だって殺されたのかもしれないーと思ってくれないのか


連続強姦殺人犯 女性への非道な拉致監禁


忠明への扱いは容疑者に対するもののようだった

「親なのにー」「一緒になってやっていたんじゃないのか」


焦げて死んだ忠秀


ー最期まで親に迷惑をかけて

ー俺に合う仕事があるなら 働いてやってもいいぜ
給料? 月三桁は必要でしょー



ー馬鹿な奴 馬鹿な奴



忠明は刑事に受け答えするうち 眠ってしまった


・・・・駄目だ これは・・・昼間っから飲んでいたんだろう すごい酒の匂いだ
息子が息子なら 親も親だな

会社は事実上のクビだって いくら身内の会社でもそうなるよな
セクハラにパワハラ  ああそりゃひどいな・・・・・




目が覚めると何故か一人で 忠明はその場所を出た

考えていたのは

豊造と連にも死んでもらおうということだった


忠秀が死んだのだ

それであいこってものだ



忠明はホームセンターでナイフを買った
出刃包丁にも心惹かれたが 持って歩くのに不自由そうだったから ナイフにした

自分は正しいーと自分で自分をほめる忠明


豊造のいる病院へ 向かう


まず一人 殺そう

そうしたら連も病院に来る


来たら殺せる


忠明にはもうマトモな思考力も判断力も残っていなかった



豊造のいる病室がある病棟への渡り廊下近くまで来ると 美少女が出てきた
忠秀の好みそうなコーと それでも見とれた忠明は気付いた
それが誰かに思い当たる
写真でしか見たことはないが 碧グループの緑矢あきひ

連の縁談の相手


ーいい獲物だ 殺そう
緑矢克雅め ざまあみろ!

殺してやる 殺してやる 殺してやる!


畜生!畜生!畜生!

また邪魔された 
また連!


どっから湧いて出た

畜生!



どうにかして どうにかして

どうしてくれようか・・・・・・




ぷつり
忠明の頭の中の何かが切れた


忠明はそのまま救急治療室に運ばれた