夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「ルルドスの海から」-12-

2017-09-07 19:23:42 | 自作の小説
室内に入ってきたオランプを見てそれぞれが口々に言うことをまとめればー
最初ダイレントはオランプに話がある 城で大変なことがあったのだーそう言って館を訪ねたのだった

館の中に入るとずかずかと押し入りディアネージュが姿を見せるまで名前を叫び続けたと

相手がダイレントということもあり警備の者達が対応に迷っているうちに ディアネージュの喉元へダイレントは剣を突きつけたのだった


「ダイレント殿はかなりの使い手だ 怪我をした者がいなくて良かった」
それからオランプは地揺れについての懸念を話し それぞれに家族でまとまり必要な荷物をまとめるように告げた

ディアネージュには自分と城に来るように誘う

「マリアッドとアマーネには家族がおりません あたくしの姉妹も同じ存在です」

「ならば共に城に行こう これから我々は一つの家族として離れずにいよう 」
オランプはマリアッドとアマーネをいたわる言葉をかけ当座必要な荷物だけまとめてくるように言った

「でも姫様も荷物をまとめなくてはー」
「いいんだマリアッド それはわたしが手伝うから 」


「あの・・・」
おずおずとアマーネが口を開く「あの方を傷つけないで有難うございます きっと殺すべきことをしてしまいましたのに」

「ダイレント殿については できるなら死なせたくない」

一礼するとアマーネはマリアッドに促されてさがる

二人が部屋を出て行くと オランプとディアネージュもディアネージュの居室へ向かった
「貴方があんなに強いとは知りませんでした 兄からダイレント殿はかなりの使い手だと聞いております」

「あなたに怪我がなくて良かった 少し前に着いて様子を窺っていたんだ 盆で剣を受けたのには焦ったよ」

「じゃ もしかしてー」言いかけてディアネージュは口を押える

では貴方は聞いてしまった?「心から望んであの人の妻でありたいんです」とダイレントに言ったのを まさか

「ディアネージュ姫?」

「いいえ なんでもありません」

「わたしはあなたに言わなければならないことがある」

「な・・・に・・なのでしょう」
オランプの声の中にあるものがディアネージュを緊張させる
彼女の細い肩をぐいっと自分の身体へオランプが引き寄せ抱きしめる
「あの・・・」
オランプの様子はいつもと違っていた

「どれほど灼け付くような思いにかられてもー自分が何者か分からぬ身ではその気持ちを押し殺し続けるしかなかった
もしも何処かに自分の妻子がいる身であれば 悪事をして逃げている身かもしれぬ
思い出せない自分 過去の自分が何者か知れぬ身ではー」


「それは それは思い出したと 記憶が戻ってきたとー」

「このところ頭痛が続いていて ここにない景色が見えることがあった
二重写しにものを見ているような 不思議な感覚

ドルランクの工房で激しい地揺れの時に・・・一気にいろんなものが蘇ってきた」


「貴方の真実の名前はー」

「ブロディルのヴァンドルフ」


「付け加えるならばブロディルの行方不明の世継ぎ 我が従兄殿だ」
二人の背後から声をかけたのはオルディス
「なんと用心の悪い館だな ここまで勝手に入って来れたぞ」


オランプーヴァンドルフはディアネージュから腕を放しオルディスに向き直る「色々あってな あれで気付いたのか強気のオルディス」

「この忘れん坊め 記憶喪失と聞いた時にはまさかと思ったぞ どれだけ捜したと思う エリアントはお前は船から落ちたと言ったんだ
カトリオナもお前が死んだとは信じなかった
お前は死ぬにはうっかり者すぎる 
ルルドスの美しい姫が記憶の無いオランプという男を夫にしたというのが船乗りに噂になっていてな
もしやと思い・・・様子を探る者を出したんだ
からかうように強気のオルディスとこの身を呼ぶのはお前だけ

あの時 記憶が戻ったのか
地揺れのあと 柄にもない青い顔色をしていた」

「一気にー頭が割れるかと思った」

「あのオランプというのはー」
ディアネージュが口をはさむ

「エリアントとわたしはオランプという場所を目指していた 正しくはオランプという島があった場所をだが」
ディアネージュにはまだオランプとしか思えないヴァンドルフが説明する

「エリアントというのは わたしの母親違いの弟だ レイダンドから嫁いできた我が母シュレーヌの死んだあと 父ケンドルフはローメインを妃とした
 それで産まれたのがエリアント」

「お前が死んだことになりエリアントは自分が次の王だと得意そうにしている お前の弟だが悪いがそうなったらブロディルを出ていくつもりで
カトリオナも一緒に来るーと言う だからまずは納得いくまでお前を捜そうと思った
王も国民もお前の死を嘆いている
ここに至って まだ王になどなりたくないーなんて言うなよ
これでお前を捜すのは 見つけるのは結構大変だったんだからな
わたしの労力を無駄にしないように」

そこまで一気に言ってオルディスはヴァンドルフに真顔で尋ねる「あの嵐の夜 船で何があった」

「うっかり者らしく海に落ちて流され ルルドスのディアネージュ姫に救われた」
しれっとヴァンドルフが答えるのでオルディスは短く一言
「すっとぼけやがって」

ヴァンドルフはそんなオルディスに笑顔を向ける「来てくれて丁度良かった 人をやって呼びにいこうかと思っていたんだ
今後のことで
これから城へ行き王に会う
一緒に来てくれ」

ディアネージュがもっと動きやすい服に着替える間も ヴァンドルフはオルディスと何やら色々話し合っていた