夢鬼が人に心惹かれたのは「みゆり」が初めてではない
随分と遠い昔の事 愛した娘がいた
夢鬼にできるのは その頃 その娘の夢に現れ夢の中で逢う
共に過ごすという他愛無いこと
夢鬼にとってその娘は憩であり救いのようなものであったかもしれない
鬼と呼ばれる存在ながら 何故自分が夢鬼と呼ばれる存在なのかにすら疑問を持っていた夢鬼
その娘ー
女ながらに部族を率いる
あちこちに部族は分かれて住み それぞれ争い合っている
戦い疲れて眠る娘は平和を夢見ていた
ー皆が笑い合って暮らせる生活がしたい
毎日毎日武器を手に誰かを傷つけ殺す生活
より強くなければ仲間を護れない
弱いと奪われ殺される
それでも娘は利き腕と左肩に女らしい花びらの形の入れ墨をしていた
娘の何処が夢鬼の気を惹いたのか 興味を持たせたのか
せめて夢の中ででもと夢鬼は娘に美しい光景を見せていた
幸か不幸か娘は強く 娘が率いる部族も強く
しかし強くなればなるほど その強い部族に勝利して自分達の強さを示さんと襲ってくる者達も絶えなかった
疲れて疲れ切って娘は眠る
そして幸せな夢を見る
誰かに守られている美しく平和な世界
勝ち続けていれば いつかは敗北する日もやって来る
突然に 残酷に
美しい娘が率いる部族は評判となり 東から大軍が押し寄せる
大軍を率いる男は娘には自分の女となり その率いる部族は奴隷として差し出せと要求してきた
敵うはずもない数の兵士達
持つ武器も段違い
ーこれまでかー
それでも率いる者達を奴隷として差し出すことは嫌だった
我慢ならなかった
「明け方までにお返事を」と答えた娘は 部族の者達に西の海から逃げるように指示し自分だけ返事を待つ大軍率いる男がいる橋の向こうへ渡る
橋を渡り終えた娘は持つ武器をふるい橋を切って落とした
「我が身はどうなろうとも これが返事でございます」
その橋が無ければ娘が率いる部族の居る場所へは行けぬ
後は険しい峡谷
「たばかったか!」
多くの奴隷を手に入れそこね 大軍を率いる男は逆上した
「ぎりぎり体が千切れる手前までその身を引かせ首を斬り落としてやる」
「いかようにも」嫣然と娘は微笑む
ーそれでこの命を終わりにできるのであれば
今迄多くの命を奪ってきた
血に塗れたこの身ー
娘の身体は馬に四方に引かれ・・・
その首も刎ねられ飛んで川へ落ちた
まだ夢鬼が自分の力のふるいようも知らなかった頃
娘が無慚に殺されて 首は飛び四肢は千切れてばらばら
そうして娘の死で夢鬼の怒りが爆発する
彼は恐ろしい夢を娘を殺した男達に見せた
取り分け大軍を率いる男には凄まじい夢を
ゆえにその男は眠ったまま死んだ
狂う者 死ぬ者
夢鬼は夢を使い人を操ることも覚えた
それでもバラバラになった娘の身体は戻らない
命は還らない
娘の死は夢鬼に人を憎むこと悪く思うことを教えた
夢の中で魂を喰らい人という器をからっぽにすることも
いつか夢鬼に人の夢は餌となる
魂を奪う撒き餌
それでも夢鬼はいつか死んだ娘に出会うことを その心の奥底で希(ねが)っている
護れなかった 護りきれなかった娘
その娘が求めていたものを与えてやれなかった
夢鬼と呼ばれるモノでありながら
夢鬼の夢にその娘が現れることもあるのだろうか
夢鬼はその娘を珠姫と夢の中で呼んでいた
随分と遠い昔の事 愛した娘がいた
夢鬼にできるのは その頃 その娘の夢に現れ夢の中で逢う
共に過ごすという他愛無いこと
夢鬼にとってその娘は憩であり救いのようなものであったかもしれない
鬼と呼ばれる存在ながら 何故自分が夢鬼と呼ばれる存在なのかにすら疑問を持っていた夢鬼
その娘ー
女ながらに部族を率いる
あちこちに部族は分かれて住み それぞれ争い合っている
戦い疲れて眠る娘は平和を夢見ていた
ー皆が笑い合って暮らせる生活がしたい
毎日毎日武器を手に誰かを傷つけ殺す生活
より強くなければ仲間を護れない
弱いと奪われ殺される
それでも娘は利き腕と左肩に女らしい花びらの形の入れ墨をしていた
娘の何処が夢鬼の気を惹いたのか 興味を持たせたのか
せめて夢の中ででもと夢鬼は娘に美しい光景を見せていた
幸か不幸か娘は強く 娘が率いる部族も強く
しかし強くなればなるほど その強い部族に勝利して自分達の強さを示さんと襲ってくる者達も絶えなかった
疲れて疲れ切って娘は眠る
そして幸せな夢を見る
誰かに守られている美しく平和な世界
勝ち続けていれば いつかは敗北する日もやって来る
突然に 残酷に
美しい娘が率いる部族は評判となり 東から大軍が押し寄せる
大軍を率いる男は娘には自分の女となり その率いる部族は奴隷として差し出せと要求してきた
敵うはずもない数の兵士達
持つ武器も段違い
ーこれまでかー
それでも率いる者達を奴隷として差し出すことは嫌だった
我慢ならなかった
「明け方までにお返事を」と答えた娘は 部族の者達に西の海から逃げるように指示し自分だけ返事を待つ大軍率いる男がいる橋の向こうへ渡る
橋を渡り終えた娘は持つ武器をふるい橋を切って落とした
「我が身はどうなろうとも これが返事でございます」
その橋が無ければ娘が率いる部族の居る場所へは行けぬ
後は険しい峡谷
「たばかったか!」
多くの奴隷を手に入れそこね 大軍を率いる男は逆上した
「ぎりぎり体が千切れる手前までその身を引かせ首を斬り落としてやる」
「いかようにも」嫣然と娘は微笑む
ーそれでこの命を終わりにできるのであれば
今迄多くの命を奪ってきた
血に塗れたこの身ー
娘の身体は馬に四方に引かれ・・・
その首も刎ねられ飛んで川へ落ちた
まだ夢鬼が自分の力のふるいようも知らなかった頃
娘が無慚に殺されて 首は飛び四肢は千切れてばらばら
そうして娘の死で夢鬼の怒りが爆発する
彼は恐ろしい夢を娘を殺した男達に見せた
取り分け大軍を率いる男には凄まじい夢を
ゆえにその男は眠ったまま死んだ
狂う者 死ぬ者
夢鬼は夢を使い人を操ることも覚えた
それでもバラバラになった娘の身体は戻らない
命は還らない
娘の死は夢鬼に人を憎むこと悪く思うことを教えた
夢の中で魂を喰らい人という器をからっぽにすることも
いつか夢鬼に人の夢は餌となる
魂を奪う撒き餌
それでも夢鬼はいつか死んだ娘に出会うことを その心の奥底で希(ねが)っている
護れなかった 護りきれなかった娘
その娘が求めていたものを与えてやれなかった
夢鬼と呼ばれるモノでありながら
夢鬼の夢にその娘が現れることもあるのだろうか
夢鬼はその娘を珠姫と夢の中で呼んでいた