戦後の日本
金は無いが女はほしいーと勉強よりもバイトに忙しい大学生・吉岡
雑誌の文通相手を求む欄からひっかけた女・森田ミツを言いくるめ その処女を奪う
だがーあまり美しくなくスタイルも良くないミツと一度寝ると 吉岡はもう顧みない
馬鹿な女が口先のうまい素行の良くない男に騙された
そしてこの女は仕事も落ちていき身を売るまでになる
情に脆く騙されやすい女
どうしても欲しい服があって その為に懸命に働いて貯めたお金も 遊び好きの男が給料をマトモに家に入れずその妻が困っているのを見れば
自分のお金使うように差し出す
一方 吉岡は大学出の肩書でそこそこの会社に就職
社長の親戚の娘と結婚する
当時の業病と言われる病気になったと言われたミツは そうした患者を隔離している場所へ行く
そこで誤診であったことがわかるが
彼女はそこにとどまり患者をお世話する道を選ぶ
気の迷いでか吉岡はミツに年賀状を出しており ミツについて見覚えない人間からの手紙が届いた
患者のことを心から思い暮らしていたミツは 交通事故で死んでしまった
その最後の言葉が「さいなら、吉岡さん」
薄情で身勝手な男をずうっとミツは好きだった
そのミツが死んだと知り 女を「やりたい欲望のままに」抱いて捨てるなんて男なら誰もがしていることだーそう強がりながら
吉岡の心には寂しさがある
ミツにとって吉岡はただ一人の好きになった男
一途なミツの想い
他を思うこと他の痛みを己のこととして引き受けるミツという人間
遠藤氏の信仰にも触れた武田友寿氏の内容が深い解説と作家・遠藤周作の年譜付き
読みながら 吉岡という人間がいつか酷い目に遭うか(遭えばいい)と楽しみにしていたのですが・笑
ミツの死による鮮やかな幕切れ
人としてミツと吉岡とどちらが幸福であろうか
ミツになりたいとも 吉岡のように生きたいとも思いませんが