本の表紙に白い犬が描かれている
主人公の飼い犬ーもう老犬のこの犬が泣かせる働きを見せるのだ
もしもこの本を手に取ったら 読み始める前にしっかりこの犬を見つめてほしい
そして記憶にととめておいてほしい
この犬がどういう行動をとったかエピローグで明かされる
著者のロバートベイリーは米国アラバマ州出身 アラバマ大学のロースクールを卒業後 地元ハンツビルで弁護士として活躍し2014年に作家デビューしたと本の紹介にある
邦題の教授トーマス(トム)・マクマートリーを彷彿とさせる経歴だ
物語の主人公のトムは恩師に請われ 母校のアラバマ大学で教鞭をとることとなり それから40年誠実に学生を育ててきた
新しく学部長となったリチャード・ランバートは彼のヴィジョンに合わない人間のクビを次々と切ってきた
今度はトムに狙いをさだめ スキャンダルをでっちあげる
何処にでもこういう輩はいるものだが トムの元教え子であるジェイムソン(ジャモ)・テイラーが大学側弁護士として そのでっちあげに加担した裏切り行為がこたえた
大学を去るトム
トムは体調もよくなく尿に血が混じり 検査を受けて膀胱がんと分かる
優秀な学生のドーンに仕事を与え 雨の中 濡れて本を運ぶ彼女に傘をさしかけ車まで送った
それを学生と不適切な関係を結んだーと醜い歪んだ受け取り方をされた
しかし仕事が必要なドーンの事が気になり トムは持ち込まれた相談を仲介した やはり元教え子のリチャード(リック)・ドレイクのもとへ行くように指示する
リックはトムを恨みに思うところがあったが トムはある事でリックがつまづいたことを知り心をいためていた
みどころある教え子の今後を憂えるトム
トムの昔のガールフレンドのルースアンの娘夫婦と孫娘が交通事故で悲惨な死を遂げた
ルース・アンは真実を知りたいと言う
事故の相手のトラック運転手も死んでいたが 運転手のスピード違反が原因という疑いを持つことができる
調べていくと経営者が無茶な仕事を与えていたらしい
経営者は自分に不利な証言をしそうな人間を脅迫 もしくは汚い仕事をする人間に任せて殺したりしている
リックとドーンが会って話をして真実を知る人間も その経営者の脅しの為に姿をくらませたり いざ裁判となると逆な証言をしたりする
このあくどい経営者側の弁護士となったタイラーは 自分がでっちあげたトムとドーンの醜聞を リックに告げる
ドーンに惹かれていたリックは混乱
二人のチームは分解 タイラーの術中にはまって 行き詰まったリックは トムに協力を乞うが
まだ膀胱がんの治療からイマイチ体調がよくないトムは断ってしまう
どちらも言葉足らずな二人だ
ある意味 似ているのかもしれない
やはり教え子の原告側弁護士のボーセフィス(ボー)・ヘインズからも老け込むトシじゃない
まだやれるーなどという発破もかけられていたが
トムはうっかりと家から離れすぎてしまった
トムのいる場所は山猫が出る
連れていた老犬ムッソはトムの足元で疲れてへたりこんでいた
しかしトムの目の前に狂犬病にかかった山猫があらわれる
山猫とのにらみ合い そしてー
トムの目の前は真っ白になった・・・・・
一方リックは法廷で窮地に陥っていた
相手方の弁護士タイラーは経験豊富で狡猾
そこに現れたトム
少しずつ事態をこちら有利にと運んでいく
過去に栄光あるトムの出現
トムが大学から追い払われたことに不満を抱いていた人々
トムのスキャンダルを追求したい趣味の悪いマスコミさん
裁判は多くの人間の興味をひきつけ傍聴人が増えていく
あくどい経営者やその手下にレイプされ 情事の様子を録音した音声メールを送られた女性は自殺
悪事について証言しようとした男性は交通事故にみせかけ殺された
ばかりか さらに事態は不利と焦る彼らはドーンも殺そうとする
ボーがかけつけ事無きを得たが
事件の中で恋も芽生える
リックとドーン
経営者に脅され 自分がホモであることを暴露されるより 死を選んだ男の妻は
勇気をふりしぼり証言する
裁判はトムとリックの勝利
経営者はとらえられる
全てが終り トムは両親と妻の墓参りに そこにはもう一つ小さな墓があった
ムッソ 闘う犬
ボーに ムッソの死の様子を話すトム
狂犬病にかかった山猫に迫られ 岩のでっぱりにつまずいてしまったトム
彼は後頭部を打ち付け意識を失う
気が付くと山猫はおらず自分は無事 そしてムッソがいない
彼を救ったのは
捜して歩けば樫の木に20キロ以上ありそうな山猫の首に噛みついて動かないムッソ
山猫は死んでいた
トム「ムッソ わたしだ 聞こえるか」
血塗れになっていたムッソは不機嫌そうな唸り声をあげて やっと山猫を噛みつくのをやめる
「あいつはずっと食いついていたんだ 何時間も・・・・
あいつは山猫の傍らに倒れ もう動かなかった
だが わたしがあいつの口元に手をやるとその手を舐めたんだ
そしてー」
トムは顔をおおい 涙を流した
ボー「あいつはあなたが無事だとわかるまで待って そして息を引き取ったんですよ」
私は犬大好き人間なので 小説でもこういう場面に弱いです とても
そしてボーはトムに白と茶のイングリッシュ・ブルドッグの仔犬をプレゼントするのです
このボーは次の作品で事件に巻き込まれ そこにトムとリックの師弟コンビがかけつけるらしいです
ボー とっても人間的に頼りになるいい男なんです
英米文学翻訳家の吉野弘人氏が見つけて原書を持ち込みして出版されたのだそうです
映画になってもいいような作品だなと思いました
このシリーズ 続けて是非読みたいです
翻訳されるのを楽しみに待っております