路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説】:「三・一運動」100年 未来へ日韓共に粘り強く

2019-03-07 00:30:25 | 【韓国・在韓米軍・従軍慰安婦問題・強制労働・島根県竹島(韓国名・独島)の領有権】

【社説】:「三・一運動」100年 未来へ日韓共に粘り強く

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:「三・一運動」100年 未来へ日韓共に粘り強く 

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領はきのう、「三・一独立運動」100年式典の演説で、日本への直接的な批判を避けた。

 文政権は昨年来、かつてないほど対日批判をエスカレートさせた。このままいけば両国関係だけでなく、日米韓3カ国の連携さえ揺るがしかねない状況の中での判断だろう。自制を利かせたと前向きに捉えたい。

 一方で、日本の植民地支配による被害者の救済を、さらに求めるとも取れる内容も盛り込んだ。今後、具体的にどんな対日政策を取るのか。冷静に考え、行動に移してもらいたい。

 文氏の対日姿勢は、多くの日本人には到底理解しがたいものである。日韓合意に基づく慰安婦財団の一方的解散や、「徴用工」訴訟判決を巡る対応などだ。理解するには、文氏の立脚点を押さえる必要がある。

 文氏は金大中(キムデジュン)、盧武鉉(ノムヒョン)両元大統領の流れをくむ進歩派(リベラル派)だ。日本統治時代と保守政権当時の弊害を除去するという「積弊清算」を掲げる。

 保守派が「主敵」とする北朝鮮との民族融和は優先する。昨年、南北首脳会談開催に続き、初の米朝首脳会談を橋渡しした。そうした成果と自負が、同僚の文喜相(ムンヒサン)国会議長による「天皇謝罪要求」など、極端な言動につながったようだ。

 きのうの演説で特に懸念するのは、「植民地統治に協力した親日派の清算」を掲げたことだ。朴槿恵(パククネ)前大統領など保守勢力を指すとみられるが、突き詰めれば矛先は日本に向くだろう。

 日本側は冷静に対応したい。重要なのは、文政権が今の韓国のすべてではないことだ。保守派のメディアを中心に批判が上がり、景気悪化を背景に政権の支持率も低下している。米国では連邦議会の超党派議員が、東アジアの安定に影響するとして日韓関係の改善を求めた。

 過去にも日韓関係が「最悪」とされた時期はあった。その際、両国民が互いの誤解に気付き心を通い合わせる一助となったのは、韓流や日流と呼ばれる文化の相互理解である。幸い、観光などで両国を往来する人は年間約1千万人に上る。

 むろん、植民地支配で傷ついた民族の自尊心は容易には癒やされないと、日本側は心に刻まなければならない。その上で政府は、歴史的事実に基づく日本の立場を粘り強く韓国と世界に示していくことが重要だ。

 「わが朝鮮国が独立国であることを宣言する」。1世紀前の3月1日、宗教家らが宣言書で高らかにうたった。日本にはアジアの安定に努めるよう促し、自ら「排他的感情」に流れないよう戒めた。狭量な「反日文書」ではなかった史実に学びたい。

 =2019/03/02付 西日本新聞朝刊=

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【社説】  2019年03月02日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【春秋】:「落葉帰根」…

2019-03-07 00:30:20 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【春秋】:「落葉帰根」…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【春秋】:「落葉帰根」… 

 「落葉帰根」。木の葉が地上に舞い降りて土に帰るように、人もまた最後は故郷へと戻る-。この言葉に万感の思いを重ねる47人が、38年前のきょう3月2日、成田空港に降り立った

 ▼終戦間際、旧ソ連の侵攻に伴う混乱で、幼いまま大陸に残され、中国の人々に救われた日本人。彼らの存在が広く知られ、肉親を捜す集団訪日調査が開始されたのは1981年。47人はその第1陣だった

 ▼いわゆる中国残留孤児。その数は分かっただけで2818人。81年以降の30回に及ぶ訪日調査などを通じて、ようやく実態が掘り起こされた。しかし「二つの祖国」を持つことが新たな苦悩をもたらした

 ▼「落地生根」。この言葉に運命を託した人もいる。植物の種子が与えられた土で根を張るように、異国であってもその地で生き抜いていく-

 ▼日本への永住帰国の断念。事情は一様ではないが、何よりも自分を育ててくれた養父母らを見捨てるわけにはいかない、という人が少なくなかった。作家の故山崎豊子さんが大作「大地の子」で描いた主人公もそうだった

 ▼厚生労働省はホームページで今も1500人余の「孤児名鑑」を掲載している。実は孤児のうち日本での身元が判明したのは半数以下だ。肉親捜しは今も続いている。日中の国交正常化(共同声明調印)は1972年の「9月29日」。2013年に逝った山崎さんの命日がこの日と重なったことも思い出す。

 =2019/03/02付 西日本新聞朝刊= 

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【春秋】  2019年03月02日  10:37:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:米朝会談物別れ 非核化まで協議継続せよ

2019-03-07 00:30:15 | 【北朝鮮・朝鮮半島・拉致問題・独裁・朝鮮総連・朝鮮学校】

【社説】:米朝会談物別れ 非核化まで協議継続せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:米朝会談物別れ 非核化まで協議継続せよ 

 「北朝鮮の完全な非核化」への歩みは止まるのか。

 北朝鮮の核・ミサイル開発問題を巡り、米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働委員長が27、28日にベトナムのハノイで会談した。しかし、双方の主張の溝は埋まらず、当初予定されていた合意文書の発表ができなかった。

 重要な機会を生かせず、物別れに終わったのは残念だ。合意できなかった主な原因は、北朝鮮の非核化への「本気度」不足にある。

 ただ、これによって朝鮮半島が以前のような緊張状態に戻るのは防がなければならない。米国、北朝鮮とも挑発と脅しの連鎖に逆戻りするのではなく、協議を継続させて、できるだけ早く非核化への軌道に復帰すべきだ。

 ここからが正念場である。

 ▼北の本気度疑われる

 会談後のトランプ大統領の記者会見によれば、物別れに至った最大の理由は、北朝鮮が「制裁の完全な解除」を求め、米国がそれに応じなかったことにあるようだ。

 北朝鮮は「制裁完全解除」に向けて、寧辺(ニョンビョン)の核施設の査察受け入れや破棄などを提案したが、米国側は不十分と判断し、折り合わなかったとみられる。

 寧辺は確かに北朝鮮の核開発の中心的施設だが、北朝鮮には他にも核開発拠点と疑われる場所が複数存在する。核開発の全容を提示しないままの「制裁完全解除」要求は明らかに過大だ。

 昨年6月の第1回会談以降、米朝は実務レベルで非核化への具体策を協議したが、難航していた。今回、両首脳による再会談で打開が図られたものの、やはり実務抜きのトップ交渉だけで合意に達するのは無理があった。

 北朝鮮はこれまで、既存の核兵器や日本を射程内に収める短・中距離ミサイルの取り扱いには言及していない。日本政府には、トランプ大統領が「日本への脅威」を置き去りにしたまま、今後の核開発中止や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の放棄だけで満足し、北朝鮮と取引してしまうのではないかとの懸念があった。

 そうした意味で、今回トランプ大統領が交渉の席を立ったのは、長い目で見れば安易な妥協をするよりはましだった側面もある。

 ただ心配なのは、今回の会談物別れで米朝両国が再び強硬姿勢に転じ、一昨年までのような一触即発の状態に陥ることだ。

 ▼緊張に逆戻りするな

 ロシア疑惑により国内政局で窮地に立たされているトランプ大統領は、北朝鮮との非核化交渉を成功させて局面を転換し、再選に向けた支持を集めたい思惑を抱いていたとされる。それがうまくいかないとなると、逆振れして北朝鮮との対決姿勢を強め、ロシア疑惑から国民の目をそらす戦略に走ることも十分考えられる。

 幸い、トランプ大統領は今のところ、北朝鮮との対話継続の意思を示している。会談後の記者会見では金委員長を「素晴らしい人物と個性」と持ち上げ「1年前よりわれわれの考え方は近づいている」と前向きに評価してみせた。

 もとより、北朝鮮との核協議が簡単にいくはずがない。トランプ大統領自身、最近では「核実験がない限りは急がない」と、早期の非核化実現を棚上げしたような発言をしていたほどだ。

 交渉が難しいからといって「完全非核化」の最終目標を揺るがせてはならない。トランプ大統領は安易な妥協もせず、投げ出しもしないで、根気の要る協議を続けていく責任を負っている。必要ならば何度でも会えばいい。

 北朝鮮も核に固執するのではなく、国際社会に復帰して経済発展に進む方が国家の安定につながるといいかげんに気付くべきだ。

 ▼米国頼みでいいのか

 日本にとって北朝鮮を巡る重要課題の日本人拉致問題は、今回の会談でどう取り扱われたのか。

 日本政府は「会談で拉致問題が取り上げられた」と説明するが、トランプ大統領がどういう形で言及し、金委員長がどう応じたのか、現時点で詳細は分からない。

 米朝関係の改善をてこにして拉致問題解決につなげる戦略を描いていた日本政府にとって、このまま米朝交渉が停滞すれば、拉致解決の糸口もつかめない。

 拉致解決が「米国頼み」になっている現状でいいのか。安倍晋三首相は「最後は私自身が金委員長と直接向き合い、わが国が主体的に解決する決意だ」と語るが、単なる決意表明にとどまっている。トランプ大統領との関係を誇るよりも、自ら解決するための方策を全力で模索すべきである。

 =2019/03/01付 西日本新聞朝刊=

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【社説】  2019年03月01日  10:41:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【春秋】:米国の一流オーケーストラでの話…

2019-03-07 00:30:10 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【春秋】:米国の一流オーケーストラでの話…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【春秋】:米国の一流オーケーストラでの話… 

 米国の一流オーケーストラでの話。どうも演奏の評判が芳しくない。新団員の採用は、音楽総監督とコンサートマスターが面接と実技でしっかり審査しているはずだが…

 ▼調べてみると、合格者は若い白人の男性に偏っていた。そこで、演奏だけを聴いて判断するブラインドオーディションに変えてみた。その結果、有色人種や女性、高齢者の合格が増え、演奏の質も上がったという。ある講演で聴いた

 ▼最高の耳を持った人でも外見に惑わされる。人が人を見るときに、性別や人種、年齢、容姿などによる印象が、本来の能力を判断する上でいかに妨げになるか。それをよく表したエピソードだ

 ▼来春卒業する大学3年生の就職活動がきょう、解禁される。経団連のルールでは、会社説明会は3月1日から、面接などの選考は6月1日から。もっとも、インターンシップなどで学生と接触し、すでに「内々定」を出した企業も少なくないそうだ

 ▼学生にとっては、筆記試験に加え、面接で好印象を与えることも深刻な課題のようだ。話し方や服装、作法などを学ぶセミナーも人気とか

 ▼面接で試されるのは、むしろ採用担当者の力量か。人手不足の一方で、長時間労働から効率重視へと働き方が変わり、急速なIT社会に対応した新しい発想が求められている。旧来の「物差し」を捨て、印象に惑わされずに人材を見極める「目」を持てない会社の将来は危うい。

 =2019/03/01付 西日本新聞朝刊=

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【春秋】  2019年03月01日  10:37:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【風向計】:「諸説あり」を楽しむ 文化部次長 古賀 英毅

2019-03-07 00:29:50 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【風向計】:「諸説あり」を楽しむ 文化部次長 古賀 英毅

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【風向計】:「諸説あり」を楽しむ 文化部次長 古賀 英毅 

 「ボーっと生きてんじゃねーよ!」のセリフで人気のNHK番組「チコちゃんに叱られる!」。チコちゃんの質問に対する回答VTRの最後に時折現れるひと言がある。「諸説あります」。この「諸説」、歴史や考古学の取材でも直面することがよくある。

 先日「国内最古級」とニュースになった弥生時代中期中ごろの硯(すずり)製造の痕跡。「中期中ごろ」は、発表した国学院大客員教授の柳田康雄氏が遺物と一緒に見つかった土器などから判断した時期だ。過去の確認例では弥生の「後期」が最古。「中期」なら時代をさかのぼる。この判定に疑問を持つ研究者もいるが、それ以前に「中期中ごろ」が西暦ではいつなのか、が、そもそも「諸説あり」となる。

 中国などと比較できる遺物などを手掛かりにする年代観を採る研究者は紀元前100年とみる。放射性物質の炭素14を測定して割り出す国立歴史民俗博物館の研究グループによれば紀元前200年だ。その中間を言う人もいる。後期だと大差はないが、中期以前では違いが徐々に広がる。

 炭素14測定は最新の科学だが、過去の太陽活動などの影響を考慮して補正が必要なことなどから必ずしも決定打にはならないとの指摘もある。今回は文字文化にまつわる研究だけに中国との比較が重要だ。同様の硯が出現する時期と比べる際、100年の差は価値判断を左右する。ニュースの意義付けに困った。弥生時代の記事を書く場合、この年代の諸説がやっかいだ。

 一方、大宰府史跡(福岡県太宰府市)の発掘調査が始まって50年の節目をとらえ、文化面で「大宰府の宿題」を書いた際は、諸説があることで記事が成り立った。こちらは年代ではなく、方形に区画した街を都と同等に「条坊」と呼べるのか、関連施設の目的や建設手法…。研究者の意見が一致しない点や誰も分からないままでいる事柄が多いことを逆手に取り、「遠(とお)の朝廷(みかど)」とも称された古代大宰府の実相解明が、今なお途上であることを示そうと考えた。

 最新の論文集を読み、専門家たちに取材した。10人に聞くと10通り、とまでは言わないが、それぞれ違った見解が出てくる。若手でも大家でも学究者としての自負があり、簡単に一致するはずもない。

 記事に登場した方から「いろんな方がいろんな意見を言っておられたのが分かった」との感想もいただいた。これを機に、百家争鳴の中から新たな答えの種が見つかるかもしれないと期待する。

 諸説あり-。やっかいである。だが、それを楽しむのも一興ではないか。

 =2019/03/05付 西日本新聞朝刊=

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【風向計】 2019年03月05日  10:43:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【提論】:【提言委員座談会】漂流30年 変われぬ日本

2019-03-07 00:29:40 | 【LGBTQ+=ジェンダー・アイデンティティ、レズ、ゲイ、バイセクシャル、

【提論】:【提言委員座談会】漂流30年 変われぬ日本

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【提論】:【提言委員座談会】漂流30年 変われぬ日本 

 本紙の大型コラム「提論」を執筆する提言委員は、「平成時代」の総括と新時代への視座をテーマに東京都内で座談会を行った。平成は世紀をまたぐ30年余の歩みとなるが、初頭には、冷戦構造が終焉(しゅうえん)し、世界史的な転換点となった。国内でも、人口減少と少子化、高齢化が同時進行。バブルが崩壊し、グローバル化と連動して経済大国が減速。自民党が38年ぶりに政権から転落し、連立時代に突入。多様な分野で構造変化に直面し、不確実性を高めた漂流を刻んだ。こうした経験や教訓を糧に、激動必至で視界不良が続く新時代とどう向き合ったらいいのか。次世代にどんな九州をつないだらいいのか。展望への座標軸を探った。

 (敬称略、司会は西日本新聞社編集局長・傍示文昭。座談会は2月19日に開催)

【平成時代とは】相対化の潮流を読めず 経済は安定 周りが成長

 -平成時代とは何だったのか。それぞれの立場でどんな感慨を持つか。

 宮本 ソ連が崩壊し、中国では天安門事件が起きた。米国は再び自分が唯一の超大国になったと錯覚し、多くの間違いを犯した。私はそのど真ん中にいたが、今しみじみ感じるのは、そうした大きな世界の流れに対する視野がいかに狭かったかということ。慚愧(ざんき)の念に堪えない。

 国内的には55年体制が崩壊し、政府の中で仕事をしていた私たちは百八十度の転換を経験した。だが経験した割に、次の新しいものを作り出せたのか。この30年間、ほとんど前に進めていないのではないか。これまた強い反省の念が生じる。

  付け加えると、平成は相対化の時代だった。世界的に相対化の時代は平成になる10年前、イラン革命が起きた1979年から始まっていたが、日本はそれを読み取れなかった。

 89年にベルリンの壁が崩壊しても、国内的にはバブリーなものが残っていて、次の時代への準備が遅れた。日本の国内総生産(GDP)は30年前に世界の15%あったが、今や6%に比重が下がっている。こうした相対化が至る所で起きている。

 藻谷 おっしゃる通り、まさに相対化が進んで、日本の国際的な地位は落ちた。だけど経済的には「リーマン・ショックはどこにあったんですか?」というくらい超安定していた。個人消費もGDPも、基本的にずっと横ばいで、輸出は倍増し、経常収支の黒字は、ほぼ史上最高水準を達成している。マラソンで言うと、周りが追いついてきただけ。それなのに「衰退した」「日本はだめだ」と。これは妄想だ。

 一方で、深刻になったのは少子化だ。この40年間で、毎年生まれる子どもは半分に減った。出生率が非常に低いのは、産みたいけど産めない人が多いということ。社会の中で「個」が重視されていないからだ。

 松田 男女共同参画法が制定されてもう20年。いわゆる先進国では、男性も女性も同じように働いて同じように子育てに関わる仕組みを入れて社会を変えたが、日本では進まなかった。昭和のおじさんが成功モデルから抜け出せないとよく言うが、男性もつらいはず。自分が子育てに関わらなかったことを多くの方が悔やんでいるのに、表に出せない。

 関根 そういう意味で平成は、人々の多様性を認めようという力と、それに反発する力がぶつかりあった時代だった。男女格差を示す日本のジェンダー・ギャップ指数は149カ国で110位。女性以外でも社会の仕組みは古く、性的少数者(LGBT)批判や障害者雇用率の水増し問題のように、意識が変わらない人や組織がある。

 徳増 昭和最後の日、89年1月7日は私にとって特別な日だ。茨城・茗渓学園の監督として全国高校ラグビー大会の決勝に進出したが、昭和天皇崩御で中止になり、ずっとそれを引きずってきた。そして平成最後の年になる今年、ラグビーワールドカップが日本で開催されるという巡り合わせだ。

 この間、2002年に日韓共催でサッカーのワールドカップがあり、スポーツ庁が15年にできた。昨年は日本体育協会がやっと日本スポーツ協会に名称を変えた。これからスポーツは明るくやっていかなきゃならない。それなのにスポーツの暗部、パワハラの問題が出てしまった。

姜尚中さん 熊本県立劇場館長 1950年、熊本市生まれ。早稲田大大学院博士課程修了後、ドイツ留学。国際基督教大准教授、東大大学院情報学環教授、聖学院大学長など歴任。2018年4月から鎮西学院院長。専攻は政治学、政治思想史。最新刊は「母の教え」。

 姜尚中さん 熊本県立劇場館長 1950年、熊本市生まれ。早稲田大大学院博士課程修了後、ドイツ留学。国際基督教大准教授、東大大学院情報学環教授、聖学院大学長など歴任。2018年4月から鎮西学院院長。専攻は政治学、政治思想史。最新刊は「母の教え」。

関根千佳さん ユーディット会長 同志社大客員教授 1957年、長崎県佐世保市生まれ。九州大法学部卒。81年、日本IBMに入社。ユニバーサルデザインの重要性を感じ、98年に(株)ユーディット設立。同社社長、同志社大教授など歴任。著書に「ユニバーサルデザインのちから」など。

 関根千佳さん ユーディット会長 同志社大客員教授 1957年、長崎県佐世保市生まれ。九州大法学部卒。81年、日本IBMに入社。ユニバーサルデザインの重要性を感じ、98年に(株)ユーディット設立。同社社長、同志社大教授など歴任。著書に「ユニバーサルデザインのちから」など。

徳増浩司さん ラグビーW杯2019組織委事務総長特別補佐 1952年、和歌山県生まれ。国際基督教大(ICU)卒、新聞記者を経てカーディフ教育大留学。帰国後、茗渓学園高ラグビー部を率い全国優勝。95年から日本ラグビーフットボール協会勤務。アジアラグビー会長を経て現在は同名誉会長。

 徳増浩司さん ラグビーW杯2019組織委事務総長特別補佐 1952年、和歌山県生まれ。国際基督教大(ICU)卒、新聞記者を経てカーディフ教育大留学。帰国後、茗渓学園高ラグビー部を率い全国優勝。95年から日本ラグビーフットボール協会勤務。アジアラグビー会長を経て現在は同名誉会長。

松田美幸さん 福岡県福津市副市長 1958年、津市生まれ。三重大教育学部卒、米イリノイ大経営学修士(MBA)。2017年12月から現職。福岡県男女共同参画センター「あすばる」の前センター長。内閣府男女共同参画会議議員、内閣府少子化克服戦略会議委員。

 松田美幸さん 福岡県福津市副市長 1958年、津市生まれ。三重大教育学部卒、米イリノイ大経営学修士(MBA)。2017年12月から現職。福岡県男女共同参画センター「あすばる」の前センター長。内閣府男女共同参画会議議員、内閣府少子化克服戦略会議委員。

宮本雄二さん 宮本アジア研究所代表 元中国大使 1946年、福岡県太宰府市生まれ。修猷館高-京都大法学部卒。69年に外務省入省。中国課長、アトランタ総領事、ミャンマー大使、沖縄担当大使などを歴任。2006年から10年まで中国大使。著書に「強硬外交を反省する中国」など。

 宮本雄二さん 宮本アジア研究所代表 元中国大使 1946年、福岡県太宰府市生まれ。修猷館高-京都大法学部卒。69年に外務省入省。中国課長、アトランタ総領事、ミャンマー大使、沖縄担当大使などを歴任。2006年から10年まで中国大使。著書に「強硬外交を反省する中国」など。

藻谷浩介さん 日本総合研究所調査部主席研究員 1964年、山口県徳山市(現周南市)生まれ。88年東京大法学部卒、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。米コロンビア大経営大学院で経営学修士(MBA)取得。2012年1月から現職。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」など。

 藻谷浩介さん 日本総合研究所調査部主席研究員 1964年、山口県徳山市(現周南市)生まれ。88年東京大法学部卒、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。米コロンビア大経営大学院で経営学修士(MBA)取得。2012年1月から現職。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」など。

提論座談会に出席した(前列左から)関根千佳さん、 宮本雄二さん、松田美幸さん(後列左から)徳増浩司さん、藻谷浩介さん、姜尚中さん

 提論座談会に出席した(前列左から)関根千佳さん、 宮本雄二さん、松田美幸さん(後列左から)徳増浩司さん、藻谷浩介さん、姜尚中さん 

【新時代の課題と展望】「個」確立し生き方磨け 幸せ もっと求めていい

 -平成時代を踏まえ、次の時代に引き継がれた課題と展望を。

 徳増 ふっと入っていけるような敷居の低さを、スポーツにつくれるか。これは武道から来ているが、人格形成を強調しすぎて、あれやっちゃいかんと制約を良しとする文化がスポーツにはある。そうじゃなくて、楽しいことがスポーツなんだと。

 昨年、外国人の子どもたちと一緒にやるラグビースクールをつくった。そこにトランペットを持っている子がいた。吹奏楽部に入っていると。運動部か文化部かではなく、何でもやる。この道を突き進むという意識を変えるのがスポーツ界の課題だと思う。

  世界はグローバル化の暴走で格差が広がっているが、それを規制するものが現実的にはない。だからリーマン・ショックが起きたし、また起きる。起きる度に貧者はますます貧者になる。そこにトランプ米大統領が出てきた。フランスではイエローベスト運動が起き、フランス革命でジャコバンに流れたような貧しい人々、過激な人々が出てきた。これをどう規制するか。リベラルは回答を出していない。

 藻谷 日本では既に約2割の市町村で75歳以上が減り始めていて、高齢化問題は団塊世代が亡くなっていけば7~8割の地域で解決する。そして団塊ジュニアをたくさん集めた福岡市や東京の一部のようなところは高齢者が激増し、高齢者問題が続く。今の暮らしやすさは一瞬の利益にすぎない。

 もう一つの問題は借金体質。防衛力増強も被災地復興も、新しくやっていることは全部、孫に請求書が回っている。このことにほぼ何の反省もないまま平成が暮れようとしている。行き着くところが日銀に国債を買わせる金融緩和。残された課題というか、実は話が大きすぎて、怖くて触れない状態だと思う。

 宮本 われわれが向き合わなければならない本質的な問題は空気社会。一つの空気が出来上がると違う声を押さえつけようとする。藻谷さんの言う「個」の確立ともかかわる。この空気社会がある限り、日本は同じ間違いを犯し続ける。このことを明確に意識しないと、あまりいい時代は来ないんじゃないか。

 それと長寿社会はいいが、いかに価値ある生き方をするか。幸せな社会とは、人生とは何か。そういうことを考える哲学や宗教が日本の社会では軽視されてきた。平成が終わった後に、そういうことを取り戻しましょうよ。

 松田 私も幸せってことをもっと一人一人が求めていいと思う。社会的にも精神的にも身体的にも、いい状態をつくっていく。それを突き詰めれば財源の使い方も変わると思うし、一人一人が自分が社会にどう関わるかを考えるきっかけになる。

 政治も一番の問題はダイバーシティー(多様性)がないところ。昨年できた政治分野の男女共同参画推進法は全く機能していない。法律は通したが、ここで女性たちが本気で変えていかないと。今すごく危機感を持っている。

 関根 いろいろな町で「哲学カフェ」が増えている。若い人たちが哲学を語ろうと大阪大がやっていたり、お寺でも始まっていたり。人は死ぬ時に初めて人生って何だろうと考える。自分の終末医療をどこまでやるかとか、死に対する哲学はこれから日本人を幸せにするのかなと。高齢学、死生学。多死社会を迎え、こうした学問が大学で議論される時代になると思う。

活発な議論が交わされた提論座談会

  活発な議論が交わされた提論座談会

 ■多様性と共生 九州から

【新時代の九州の役割】アジアと交流し発見を 人口循環 福岡モデルに

 -九州はアジアに近い。ラグビーワールドカップは福岡、大分、熊本で計10試合行われ、欧米から富裕層の訪問も期待される。新時代の九州の役割は。

 徳増 最もお金を落とすと期待されるオーストラリアの方々を含め、ラグビーワールドカップではアジア以外の多くのお客さんが長期滞在する。同時にアジアの中の日本でもある。ワールドカップが大きな役割を果たしてほしいし、翌2020年の東京五輪に向けてもいろんな人たちが九州に足を運んでくれるだろう。

 彼らが「九州にこんな面白いところがあったよ」とSNSで発信し、九州のプレゼンスが高まる。私たちが気付いていない発見も結構あるだろう。楽しみにしている。

  アジアのゲートウエイに位置する九州は、アジア的な多様性と接触している。その多様性を活力へと転換しながら、自らもその多様性を受容するキャパシティーを広げていける、地勢文化的な位置にある。九州には、それ以外の地域に先駆けて、異種混交的な多様性を、共存共栄へとつなげていく役割が期待される。

 松田 いまJR博多駅前を歩くと、感覚的には半分くらいが外国人。韓国や中国の方がいらして、人の往来は本当に増えている。そこを都市間でどう生かしていくか。どこと組むと魅力的な人の交流が生まれるか、もっと真剣に取り組む。そうすると何かとんがるものができてくるのではないかと思う。

 福岡市は、日本人だけではなく、グローバルなスタートアップも受け入れている。だから、福岡市内でスタートアップのイベントをすると、大学生や高校生が参加して、熱気がある。ただ、残念なのはやっぱり男性がほとんど。むしろ、女性たちの方が自由なスタイルで仕事ができる。そこはサポートが必要かもしれない。

 関根 女性の農業系ベンチャーは結構、全国に出てきているので、そういうこともできるといい。伊都(福岡県糸島市)もそうだが、若い人たちが小さなカフェをたくさん興していて、薫製を作っているグループなどもある。福岡、九州は割と若者が地元に戻って、小さな店で頑張っているケースが増えているような気がする。

 藻谷 九州は出生率が高いけれど、福岡市への集中を続けていると札幌と同じ道をたどる。北海道の出生率は都道府県で下から2番目か。札幌市の出生率は相変わらず1くらい。出生率1のところに人を集めれば、全体的に人がいなくなる。札幌は北海道全体を食いつぶし、新しく入ってくる人がいなくなってきている。

 福岡市は九州をつぶして自分たちが栄えようとは思っていないと思う。周りと共生して、自由に人が出入りするモデルをつくってほしい。福岡市に来たら田舎にちゃんと帰って循環していく。札幌や東京がつくれなかったモデルをつくってほしい。福岡には期待している。

 宮本 要は大改革、大手術をしないと、日本社会は持たない。多数が「やるべし」と考えることから一つずつ実行に移すこと。そういう大改革の先頭に九州は立ってほしい。自治体レベルで実施可能な規制改革や制度改革を積極的に進め、特区制度も活用すればいい。その最大の障害は既得権益と政治の癒着にある。ここを厳しく突き、風穴をあけるのは西日本新聞の役割でもある。

【西日本新聞への注文】ニュース発信 英語でも 社会の自己修正の力に

 -その西日本新聞への注文を聞かせてください。

 徳増 2月10日付朝刊の永田健特別論説委員のコラム「時代ななめ読み」に、東京支社報道部の永松記者が書いた毎月勤労統計問題の記事のことが書かれていた。これスクープ報道なんですね。西日本新聞の神髄を見せたと思う。九州の新聞社だけど、東京で取材する記者がすっぱ抜いて、国会の議論につながっていく。

  僕も西日本新聞がこの統計問題を全国紙に先駆けて1面トップでやった時、びっくりした。すごいなと思った。このようなファクトをチェックする取り組みは、個人ではできないし、ネット上で誰かがやるとしても、その主体がよく分からないという問題がある。その意味で、新聞への信頼は高まっているのではないか。

 松田 そういう統計とかデータとか、行政の人は数字が苦手で、リテラシー(読み解く力)が低い。メディアも今後、データサイエンティスト的な人材を抱えていくことはすごく重要で、記事の質が上がっていくんじゃないかと思う。

 藻谷 さきほどラグビーワールドカップのパンフレットが配られて見たが、九州では3カ所で計10試合やる。それに対して、例えば関西は8試合しかない。人口は九州1300万人、関西2千万人。人口比に直すと…というのがデータの感性。

 これこそ九州の国際的感覚が高いことの証明だと飛びつくわけだ。だから、記事には、ただワールドカップやりますだけじゃなく、そういうことを書いてほしい。

 関根 「あなたの特命取材班」の展開が、すばらしいと思っている。いつも、あそこからという感じで西日本新聞を読んでいる。年明けから報じている警察官の副業疑惑も、日本の警察を揺るがす大きな問題で、大スクープだと思っている。あまり中央のメディアが取り上げておらず、残念だ。

 西日本新聞への注文としては、九州のことを伝える英語サイトの開設を期待している。これがないのは惜しい。インバウンドが増え、九州情報へのニーズが高まっている。最低限、英語サイトをつくってもらえば、中国人も韓国人も読めるはずだ。

 松田 昨年、高齢化した団地の課題を取り上げたふくおか都市圏版のシリーズ「団地新時代」。団地再生は本当に今、どこも悩んでいる。ああいうことをもっと掘り下げて、実際に何らかのムーブメントとか政策に落とし込めたらいいのかなと、いつも歯がゆさを感じている。

 宮本 新聞は世の中の積極的な側面をもっと取り上げてほしい。日本はいいんだと。当たり前のこと、常識的なことを言い続ける。普通の常識は、そんなに間違っていないからだ。日本社会の自己修正能力を先導していただきたい。

 それと、もう少しオール九州の姿勢を強めてほしい。(九州の他の新聞社と一緒に)ホールディングスにするなどして、道州制的なものを先に実現できないか。九州全体の視点から、記事を出していけるような。

 藻谷 九州が地方分権の旗をもう一度、掲げる機は熟している。西日本新聞は九州にフルコミットして、九州人意識を盛り上げるべきだ。同時に、九州内の「悪」や、地方自治の腐ったところを断罪し、正義の勢力を糾合して、九州内での自浄能力を発揮してほしい。

 ▼「提論 明日へ」 視界不良、不確実性が増す時代に、私たちが直面する課題の実像や深層を読み解き、「この先」について、九州ゆかりの有識者に執筆してもらう大型コラム。月曜日朝刊に掲載。提言委員は7人。座談会に出席した6人のほか、作家の平野啓一郎さん。コラムは2011年3月にスタートし、座談会は今回で8回目。

 =2019/03/03付 西日本新聞朝刊=

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【提論】 2019年03月04日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【時代ななめ読み】:「くるま座」覚えていますか 

2019-03-07 00:29:30 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【時代ななめ読み】:「くるま座」覚えていますか 

  『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【時代ななめ読み】:「くるま座」覚えていますか  

 長年の読者であれば、本紙に「くるま座」というコラムが連載されていたのを覚えておられるだろうか。

 執筆者の益田憲吉氏(1922~90)の名を冠し「マスケンのくるま座」とも呼ばれた名物コラムである。1970年4月に連載を開始し、夕刊、朝刊と掲載場所を変えながら89年12月まで約20年続いた。

 歯に衣(きぬ)を着せず政治や世相を斬る辛口の筆法と、庶民目線の温かい語り口が入り交じる文章は、大きな人気を博した。

 執筆者のマスケンさんと私の社歴は少し重なっているが、若手記者にとっては雲の上の存在であったのでほとんど面識はない。今回改めて「くるま座とその時代」を調べてみた。

   ◇    ◇

 「くるま座」が始まったのは日本が高度成長を謳歌(おうか)していた時代だ。米ソ冷戦の真っ最中で、日米安保や自衛隊を巡る論争が繰り広げられていた。その後公害が社会問題化し、オイルショックが経済と市民生活を揺るがした。連載終了年にはついに冷戦が終結する。

 こうした時代に書き続けられた「くるま座」は、保守色の強い論調が売り物だった。リベラルな言論が支配的なマスコミでは異色だったが、建前を排した物言いが読者に支持された。

 最後期の「くるま座」は「世界がこうなったのは○○のせい」という「陰謀論」に傾き過ぎたきらいがある。一方、消費社会の行き過ぎを戒め、日本外交の米国追従ぶりを批判する筆致は今も古さを感じない。

 天下国家を憂える傍ら「近所のカレー店が『特製カレー』の新メニューを導入したのは、巧妙な値上げ戦術ではないか」なんてことも書いている。

   ◇    ◇

 マスケンさんはどんな記者だったのか。当時の同僚で本紙ワシントン特派員などを務めた先川祐次さん(98)=福岡市=に聞いた。「どこにいても一匹おおかみ。管理職として記者たちの指揮を執るとかは全くできないタイプだった」と苦笑する。

 「佐世保に米空母エンタープライズが入港した時、彼が大規模な取材陣を陣頭指揮する役目だったのだが、取材本部を離れてデモと警官隊が衝突する現場を見に行ってしまう。実際の指揮役は私がやったが、それで特に問題はなかった」

 「そういう人だから一人でできる仕事がいいとコラムニストに推薦された。解説委員長という肩書だったが、他に解説委員がいるわけではなく、彼だけのためにつくったポストだった」

 「彼のコラムは、いわゆるインテリには好まれない。ただ、みんなが口ごもるようなことを明快に言うところが受けた。コラムは新聞の味付けだが、わさびとか唐辛子の人気があった」

 文章からは「しかめ面の頑固おやじ」の印象を持つが、意外なほど物腰の柔らかな人だったらしい。

   ◇    ◇

 時代に寄り添いつつ、時流におもねらない。インテリの理論ではなく庶民の常識で判断する。それが「くるま座」の魅力だった。一見保守的なようだが、社会の急速な変化に付いていけない人々への共感が根っこにあったのだと思う。

 実は昨年4月このコラムを始めるに当たり、タイトルを「新くるま座」にしようかとも考えたが、結局やめた。さすがに恐れ多かった。

 (特別論説委員)

 =2019/03/03付 西日本新聞朝刊=

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【時代ななめ読み】 2019年03月03日  10:57:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【風向計】:新銀行名 予想してみた 経済部 井崎 圭

2019-03-07 00:29:20 | 【金融・金融庁・日銀・株式・為替・投資・投機・FRB・「ドル円」・マーケット】

【風向計】:新銀行名 予想してみた 経済部 井崎 圭

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【風向計】:新銀行名 予想してみた 経済部 井崎 圭 

 4月1日に発表予定の平成に代わる新元号が何かは、国民的関心事だ。ただ、長崎県民には、もう一つの名前の変更も気になるところだろう。

 ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)傘下の親和銀行(長崎県佐世保市)と十八銀行(長崎市)の合併でできる新銀行の名称だ。十八銀は4月にFFG入りする。新銀行発足は来年10月。周知期間も含めれば新名称発表の日は遠くないはず。そこで過去の事例や長崎現地の声も踏まえ、勝手に予想してみた。

 九州の先例だと、西日本銀行と福岡シティ銀行が合併して誕生した西日本シティ銀行(福岡市)。旧行名の合体型だ。これにならえば「十八親和銀」か「親和十八銀」となる。どちらの名が先に来るか議論があろうが、どちらも残すパターンで拒否感や戸惑いは少ないはずだ。この命名は泉州銀行と池田銀行が合併してできた池田泉州銀行(大阪市)などにも当てはまる。

 どちらかの名だけ残すパターンもある。親和銀は過去に九州銀行と合併したが、親和だけが残った。これは顧客数の多さなど力関係が明白だったため。今回のように資金力などが拮抗(きっこう)するライバル関係のケースでは難しかろう。

 旧行名と全く無関係なパターンもある。東京都民銀行と八千代銀行、新銀行東京が合併した「きらぼし銀行」(東京)が最たる例だ。ホームページによると「東京圏でお客さまの夢を一段と明るくきらめかせたい」からだそうだ。こうなると予想は困難だ。

 数字にこだわったのが、三重銀行と第三銀行の合併で2021年に設立される三十三(さんじゅうさん)銀行。双方に「三」とあるので三+(プラス)三で、三十三と読み替えた。十八銀は明治時代の国立銀行法に基づき開設された第十八国立銀行の名が残った。親和銀はその源流の一つに第九十九国立銀行がある。18と99を足して「百十七銀行」とする手もある。実際、長野県で十九銀行と六十三銀行が合併して八十二銀行になった例がある(とはいえ、かつて長野に百十七銀行が存在してはいたが…)。

 地元経営者を取材していると、こんな声を耳にした。西日本フィナンシャルホールディングス傘下の長崎銀行の名称買い取りだ。「地域ナンバーワンにこだわるなら、お金を出して長崎の名称を譲ってもらっていいのでは」。現実的ではなかろうが、意見としては興味深かった。

 いずれにせよ「十八」「親和」とも歴史ある銀行名。両行の行員だけでなく地元住民にも愛着や親しみは根強い。みんなが納得する知恵を絞った新名称を期待したい。

 =2019/03/02付 西日本新聞朝刊=

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【風向計】 2019年03月02日  10:39:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【参院予算委員会】:声荒げ発言の野党言動を批判、内閣法制局長官が謝罪

2019-03-07 00:25:50 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【参院予算委員会】:声荒げ発言の野党言動を批判、内閣法制局長官が謝罪

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【参院予算委員会】:声荒げ発言の野党言動を批判、内閣法制局長官が謝罪 

 「憲法の番人」と呼ばれる内閣法制局の横畠裕介長官が6日の参院予算委員会で、野党議員の質問に対する答弁で、相手の言動を批判するような発言をした。「越権だ」と猛反発を受けた横畠氏は、謝罪に追い込まれた。

声荒げ発言の野党言動を批判、内閣法制局長官が謝罪

      小西洋之氏(2016年6月22日撮影)

 特に政治的な中立性が求められる法制担当のトップ官僚が、政治的な発言をするのは極めて異例。野党は、安倍内閣のもとで起きた官僚の「国会軽視発言」と問題視。今後、深刻な問題に発展する可能性もある。

 質問したのは、立憲民主党会派の小西洋之氏。安倍晋三首相の答弁姿勢について「時間稼ぎ」だとして「国会と国民への冒涜(ぼうとく)だ。聞かれたことにだけ、堂々と答えなさい」などと、声を荒らげた。与党側が質問内容を問題視したため、小西氏は横畠氏に対し、憲法に基づき、行政府を監視する立法府の国会議員の役割を質問。すると横畠氏は「立法機関としての作用はあるが、このような場で声を荒らげて発言することまで含むとは考えていません」と、小西氏の言動を批判した。

 これに、小西氏や野党が「越権(の発言)だ」と猛反発し、審議はストップ。横畠氏は「委員会で判断すべき事柄を評価したことは、越権だった」「おわびして撤回します」と発言を撤回した。

 横畠氏は、14年5月に長官に就任。首相が進めた集団的自衛権行使を可能とする同年7月の閣議決定を容認し、歴代の内閣法制局長官とは異なる対応として、批判されたこともある。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・国会・参院予算委員会】  2019年03月06日  21:07:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【03月06日 今日は?】:日本初のスポーツ紙「日刊スポーツ」創刊

2019-03-07 00:00:20 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【03月06日 今日は?】:日本初のスポーツ紙「日刊スポーツ」創刊

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【03月06日 今日は?】:日本初のスポーツ紙「日刊スポーツ」創刊

 ■3月6日=今日はどんな日

  日本初のスポーツ新聞「日刊スポーツ」創刊(1946)

 ◆出来事

  ▼東京・大田区で新日本プロレスが旗揚げ試合(1972)▼フィンランドで行われたノルディックスキーのW杯複合個人で荻原健司が日本人初の総合優勝(1993)

 ◆誕生日

  ▼安藤和津(48年=エッセイスト)▼高橋真梨子(49年=歌手)▼春風亭小朝(55年=落語家)▼柳沢慎吾(62年=タレント)▼ベッキー(84年=タレント)▼岩田剛典(89年=三代目J SOUL BROTHERS)▼筧美和子(94年=タレント)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・今日は?】  2019年03月06日  00:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【03月05日 今日は?】:東京に初めての空襲警報が発令される

2019-03-07 00:00:10 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【03月05日 今日は?】:東京に初めての空襲警報が発令される

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【03月05日 今日は?】:東京に初めての空襲警報が発令される

 ■3月5日=今日はどんな日

  東京に初の空襲警報発令(1942)

 ◆出来事

  ▼羽田発香港行き旅客機が富士山上空で空中分解、乗客乗員124人全員死亡(1966)▼カナダの陸上選手ベン・ジョンソンがドーピング違反再犯で競技会から永久追放(1993)

 ◆誕生日

  ▼湯原昌幸(47年=歌手)▼原西孝幸(71年=FUJIWARA)▼熊川哲也(72年=バレエ)▼忍成修吾(81年=俳優)▼松山ケンイチ(85年=俳優)▼今田美奈(97年=HKT48)▼鈴木絢音(99年=乃木坂46)▼杉山愛佳(02年=SKE48)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・今日は?】  2019年03月05日  00:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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