【社説①】:最賃引き上げ 中小企業支援と両輪で
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:最賃引き上げ 中小企業支援と両輪で
2019年度の地域別最低賃金の改定に関し、厚生労働省の中央最低賃金審議会は、全国平均の時給の目安を27円引き上げ、901円とすることを決めた。
最高の東京都は1013円、神奈川県は1011円で初めて千円を超え、北海道も835円から861円となる。
全国平均が「より早期に千円になることを目指す」とする政府目標に一歩近づいた格好だ。
とはいえ、道内は、週40時間働いたとして年収180万円程度と、ワーキングプアの分かれ目とされる200万円に及ばない。
非正規雇用は労働者全体の4割に増え、給与も正社員の65%にすぎない。結婚や出産を控える原因となり、少子化も進んでしまう。
一方で、4年連続3%相当の引き上げは、中小零細企業の経営を圧迫している。
最低賃金の底上げによる格差解消と、中小企業支援策の拡充を両輪で進めねばならない。
目安額のランク分けでは、東京都などAは28円、京都府などBは27円、北海道などCと福島県などDは26円の引き上げとなった。
17県は、引き上げられても700円台のままだ。最高の東京都と最低の鹿児島県の差は、08年度の139円から226円へと広がっている。
このままでは都市部への若者流出を促しかねない。地域間格差の解消は喫緊の課題だ。
日本の最低賃金は、オーストラリアやドイツの6~7割にとどまっている。全国一律の最低賃金をとる先進国も少なくなく、抜本的な見直しも検討すべきだろう。
国内総生産(GDP)の5割超を占める個人消費を活性化させるためにも、賃上げが必要だ。
ただ、中小企業の多くは、賃金の増加分を価格に転嫁できず、深刻な台所事情に苦しんでいる。
参院選では、与野党の大半が1000~1500円への引き上げと、中小企業への支援を掲げて戦った。目指す方向が同じならば、賃上げできるよう環境を整えるのが、政治の役割であろう。
税や社会保険料の減免など施策の一層の充実が不可欠だ。
大企業による中小企業への「下請けいじめ」も看過できない。政府は、不当な取引を厳しく監視する必要がある。
北海道地方最低賃金審議会で本格的な審議が始まる。働く人たちが安心して暮らせるよう、労使双方で議論を尽くし、最善の着地点を見いだしてほしい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2019年08月01日 05:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。